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映画を無くさず、伝えたい想いがここにある!『サラバ静寂』大阪上映初日トークショー開催!

2018年3月3日

あらゆる娯楽が禁止された世界で、音楽に出会った若者たちの姿を描く“静かなるノイズミュージック映画”『サラバ静寂』が3月3日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場で公開。公開初日には、宇賀那健一監督を迎えトークショーが開催された。

 

映画『サラバ静寂』は、音楽や映画などが禁じられた世界で音楽に出会ってしまった若者たちを描いた作品。音楽、映画、小説などあらゆる娯楽を禁止する法律「遊楽法」が施工された日本。ネジ工場に勤務し、そこで働くだけのつまらない日々を送っていたミズトとトキオ。ある日、2人は根絶されたはずの音楽が大量に保存されている廃墟を偶然見つけてしまう。音楽に衝撃を受けた2人は廃墟に通いつめ、音楽の世界に魅了されていく。さらに2人は「サノバノイズ」という闇ライブが今でも開催されていることを知り、そのライブに行くことを夢見て、2人で音楽を作り出す。しかし、音楽を心から憎む杉村率いる警察、音楽を所持した罪で父親を殺されたヒカリが廃墟へ向けて歩みを進めていた…ミズト役に吉村界人さん、トキオ役には若葉竜也さん、浅野忠信とCharaさんの娘でモデルのSUMIREさんがヒカリ役、斎藤工さんが警察官の杉村役をそれぞれ演じる。

 

本作の上映後、宇賀那健一監督が登壇。監督にとって第七藝術劇場は、前作『黒い暴動❤』以来の上映作品となり、初めての来阪となった。

 

今作は、今注目の若手俳優が揃った作品。監督含めキャストらは仲が良く、特に吉村界人さんとは「『黒い暴動❤』に出演した村上虹郎君との食事の際に、友達の吉村界人君を呼んでくれて『今度は一緒にやろう』」と盛り上がった。宇賀那監督にとって、本作は吉村界人さんありきの映画であり「1回だからこそ出せる力が溢れている役者。同じことを何度も出来ない」と捉えている。その力を活かすために「事前にカットを割ることを考えず、界人の芝居に寄り添ったような撮り方を出来たら」という思いで制作した。実際に撮ってみて「言いたいことが言えるし、癖も分かっている。逆に、界人が言いたいことも言える。その関係が出来たから、とてもやりやすかった」と満足している。

 

浅野忠信さんの娘であるSUMIREさんについて、宇賀那監督は「僕が映画業界に入ったきっかけは、以前付き合った彼女から。当時の彼女は浅野忠信さんの大ファンで、嫉妬しながらもDVD借りて観てみたらカッコ良く、この業界に入った」と告白。元々は『装苑』のモデルであるが「雰囲気が素敵で、SFテイストのこの映画に説得力を持たせられるミューズとしてSUMIREちゃんが最適」だと直感する。当時のSUMIREさんは芝居の経験はなく無理だと思っていたが「オファーしてみると、脚本を読んで出演を決めてくれた。結果的に『リバーズ・エッジ』より先にデビューしてもらった。部活の後輩みたいな雰囲気があり『何でもやります。頑張ります!』と言ってくれる子」と肝が据わっている印象を受けた。

 

若葉竜也さんに関して、役者から業界をスタートした宇賀那監督は「若葉君が監督した自主映画に役者で出演し、ダメ出しを沢山受け、復讐をしてやろうと思い…」と笑いながら心中を明かす。とはいえ「もちろん役にハマってオファーした。若葉君は演技が上手く、他のキャストと芝居の雰囲気が違い、安定感がある」と感じており「これまでの関係があったので、引っ張ってもらった」と信頼し現場を任せられた。

 

多くの作品に出演し映画監督でもある斎藤工さんとは、宇賀那監督は企画段階から背中を押してもらってきた。斎藤さんに狂気の警察官役をオファーし「気に入って頂き、事前に打ち合わせした時は多岐に渡って提案をして頂いた。撮影現場でも小道具を自ら用意したり、スタッフで衣裳を用意しているにも関わらずスーツケースを持参し衣装を提案して下さったりした。お互いにディスカッションし、様々なことが出来た」と満足し、斉藤さんの映画に対するスタンスを尊敬している。

 

本作では、映像のみ含め多くのミュージシャンが出演している。宇賀那監督自身が厳選しており「幅広いジャンルにしたかった。ロックもあればヒップホップもある。ノーウェーブがあればアンビエントも。ジャズやレゲエ等も含めている。出来る限りメインの3人を際立たせる為に、年齢層が高めの方や、音楽がカウンターカルチャーに成り得た時代の人達の空気を入れたかった」と目論んだ。そこで、INUの町田町蔵さんやアナーキーの仲野茂さん、遠藤ミチロウさんら音楽がメッセージ性を強く持っていた時代の方々を意識的に選んだ。特にノイズの大御所である灰野敬二さんとは、緊張しながら慎重にお願いしたエピソードを振り返った。

 

宇賀那監督は、前作『黒い暴動❤』を撮った時に「映画は大変だと思ったが、それ以上にお客さんに観てもらうことも大事だと感じた。大変でも映画を撮り続けたい」と想いを駆け巡らす。映画に対し「衣食住とは関係なく、不必要なものかもしれないが、僕はどうしてもやりたい」と思い、何とかその想いを作品にしたかった。同時に、現代は表現に対し厳しくなってきている時代でもあると受けとめ「音楽を取り巻く政治的な環境では風営法が改正されたり、最近の中国ではヒップホップアーティストのTV・ラジオ出演が禁止されたりしてる。突飛な発想だと思えるが、ボタンが掛け違えば起こり得る話だ」と論じる。監督にとって音楽は映画と同じように好きなことであり「無くなるということに対して警鐘を鳴らしたい。音楽で起こることは映画でも絶対起こる」と思っており「僕自身がそうなってほしくないという強い想いからこの映画を今のタイミングで作った」と制作の意図を明かした。最後に、第七藝術劇場での上映初日にお客さんが来て頂いた奇跡に感謝し、トークショーを締め括った。

 

映画『サラバ静寂』は、大阪・十三の第七藝術劇場で3月3日(土)から3月16日(金)まで公開。また、神戸・元町の元町映画館でも順次公開予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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