人間存在の不条理をテーマに描く『孤独な楽園』!大坪あきほさんと三戸なつめさんと片嶋一貴監督を迎え舞台挨拶開催!
スランプに陥った人気作家と、心に傷を負いながら島の工場で働く女性が、外国人の同僚にラブレターの代筆を頼まれたことで人生が交錯する『孤独な楽園』が9月13日(金)より関西の劇場でも公開。9月14日(土)には、大阪・梅田のテアトル梅田に大坪あきほさんと三戸なつめさんと片嶋一貴監督を迎え舞台挨拶付き上映が開催された。
映画『孤独な楽園』は、『アジアの純真』『たとえば檸檬』の片嶋一貴さんがメガホンをとり、文才に恵まれた孤独な女性とスランプ中の小説家の人生が偶然交わったことから、登場人物それぞれが抱える孤独があぶり出されていく様を描いたヒューマンドラマ。人気小説家の津島耀は、新連載のスタートが決まっているにもかかわらず、スランプに陥り、まったく筆が進まずにいた。母に捨てられ、父が自死したことで心に傷を負っている須佐あやめは、過干渉な叔母のもとで、海の見える町の工場で働きながら変化のない日々を送っている。ある日、外国人の同僚から頼まれ、あやめは一通のラブレターを代筆する。その手紙を偶然、津島が目にしたことで、出会うはずのない2人の人生が交錯する。主人公の須佐あやめを映画初主演となる大坪あきほさん、苦悩する小説家である津島耀を劇団EXILEの青柳翔さんがそれぞれ演じた。そのほか、あやめの父役で忍成修吾さん、津島を支える編集者役で三戸なつめさん、あやめの叔母役で有森也実さんらが共演している。
今回、上映後に大坪あきほさんと三戸なつめさんと片嶋一貴監督が登壇。大阪に馴染みのある方々が登壇し、和やかな雰囲気の中で舞台挨拶が繰り広げられた。
キャスティングにあたり、片嶋監督は3次まで実施するオーディションで選んでおり「最後は4人まで。じっくり演技を見て、雰囲気がぴったり合うように選ばせてもらった。すると、オーディションをやっていく中で演技プランが出来てくる。現場ではやりやすかったですね」と振り返る。なお、本作の企画は脚本家も含めて話していく中で決まったが、きっかけについて、プロデューサーの金延宏明さんとの出会いであることを明かし「僕の映画『いぬむこいり』を観た金延さんが見て”よく作るなぁ”と感心していたが、プロデューサーとして参加して監督の性根を叩き直してやる、といったニュアンスの発言を受け、一緒に取り組み始めた。だからプロデューサーの意向が入っている」と告白。なお、『天井の花』は、本作の後に撮影しており、作品の公開は前後したようで「僕にとっては、新しい関係性の中で作られた映画だな」と受けとめている。
初主演となった大坪さんは、オーディションに受かった報せを聞き、嬉しかったが「10秒後には、”どうしよう”と不安が強かった。オーディションが進むにつれて、台本が増えていった。それを読むだけで”この役は大変だ!”と思いながらオーディションを受けていたので、決まった時の嬉しさがあったのは最初だけ。そこから撮影が終わるまでは、ずっと不安でしたね」と打ち明けた。片嶋監督が「リアクションが多いからね」とフォローすると、大坪さんは「自分から発するより、誰かからが受けることが多い」と冷静に。コロナ禍によって撮影期間が延びたしたこともあり「オーディションに決まってから撮影まで時間があったので、あやめに近い境遇のキャラが登場する作品を読んでいく中で、自分の中に”あやめ”という別人格があった。”作る”というより”誕生”していた感覚があった。今までやってきた役作りとは随分違うことができた」と思い返しながら「あやめの気持ちが分からないことは全くない。自分の半分のようでもあった」と実感している。
編集者の役を演じた三戸さんは「イチ社会人に見えないといけない。また、落ち着きがあり貫禄もある青柳さんを支える編集者だったので、自分が演じて務まるのかな」と最初は不安に。喋っていても「自分には子供っぽいイメージがあるのかな」と思うことがあり「いつもの自分より落ち着いた編集者を目指して演じていった。喋り方はトーンを抑え、落ち着いて喋ろう」と心がけていった。片嶋監督に対し「クールな方なので、どうやって喋ろう」と当初は困惑していたが「海上タクシーで登場するシーンがあり、監督らと一緒に海に出た時、風が強く波も高く、私は楽しかったこともあり、監督との距離が縮まったかな。険しい顔をしながら登場していますが、心の中ではワクワクしていたので、それを隠すのが大変でした」と漏らす。
撮影現場について、大坪さんは「私と三戸さんは、一緒になるシーンが全くない。帰るタイミングで一瞬だけお会いした。舞台公演で縁を感じることがあった」と話し「私は、朝から晩まで撮ることの繰り返しで、忙しかった日々でしたね。1人のシーンを一気に撮っていくのは大変でしたね」と思い出していく。三戸さんは、青柳さんとのシーンについて「重いシーンが多かったので、”変なこと喋らんとこ”と思ってジッとしていました」と苦笑い。ここで、片嶋監督は観客の中から、あやめの父親の同僚である柴田を演じた内田竜成さんを見つけて登壇してもらい「この作品に1日だけ参加させて頂いた。皆様が作っていく作品を自分が汚さないよう必死に演じさせて頂きました」と挨拶してもらった。
最後に、片嶋監督は「皆様がどう思ったか気がかりですが、引っかかるものがありましたら伝えて頂ければ」とお願いすると共に「フィッシングメールには気をつけましょう」とストーリーに準えてメッセージ。三戸さんは「私自身、台本や映像を観ながら、芸術的で様々なことを考えさせられる映画だな、と思っています。映像も1ページ毎に大切に観られる作品だな、と思いました。私も皆さんの感想を聞かせて頂けたらな」とお願い。大坪さんは「この作品を撮ってから今日公開するまで本当に長かったので、公開して大阪の皆様に観て頂けたのが嬉しいです。映画を上映することは奇跡のようだな、といつも思っています。この作品をもっと沢山の人に観てもらえるように」と思いを込め、舞台挨拶を締め括った。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
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