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コロナ禍真只中で、ミュージシャンと共に頑張っている姿を美しく描きたい…!『ディスコーズハイ』岡本崇監督に聞く!

2022年8月5日

とある音楽事務所で、なかなか芽の出ないバンドを抱える担当者が、売れっ子バンドを担当する同僚に対抗して、崖っぷちながらも奮闘する姿を描く『ディスコーズハイ』が8月6日(土)より関西の劇場でも公開される。今回、岡本崇監督にインタビューを行った。

 

映画『ディスコーズハイ』は、音楽事務所で働く冴えない女性が、売れないバンドのミュージックビデオ制作に奔走する姿を描いた音楽ドラマ。音楽事務所ヤードバーズにコネで入社した瓶子撫子。同僚の別久は人気バンドを次々と手がけているが、撫子の担当するバンド「カサノシタ」は鳴かず飛ばず。次回作の予算が下りない中、撫子は自らの手でカサノシタのミュージックビデオを制作し、その反応次第でリリースが検討されることに。危機感もやる気もゼロのバンドメンバーたちと、別久への対抗心を燃やして奮闘する撫子だったが…
ドラマ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』の田中珠里さんが主演を務め、プロデューサーやドローンパイロットとしても活躍する下京慶子さん、元ロックバンド「ミドリ」の後藤まりこさんが共演。自身もバンド活動を行う岡本崇さんが監督・脚本・撮影・編集・楽曲制作を務めた。

 

自身でMVの制作を手掛けてきた岡本監督。映画を撮り始めたのは「音楽仲間を集めて楽しく作ろうか」というきっかけがあり、その延長線上として、現在も楽しむために続けている。短編・中編作品を手掛けてきたが「MVでは演技が出来ていたと思っていたが、映画では声がある演技を収録していくので誤魔化せない部分が大きい」と、MVと映画の違いを実感した。

 

初めての長編作品となった今作では、基本的に自身の半生を描いている。実体験を盛り込んでおり「MVはお金が出せなくて自分で撮ってきた経験がある」と告白。元々は40分程度の中編に収めようとしていたが「田中珠里さん、下京慶子さん、後藤まりこさんら沢山のキャストが出演していく中で、長編作品として上映を目標にして制作していこう」と決め、ストーリーを肉付けしていった。コロナ禍真只中で撮影が行われており「ミュージシャンが次々に不貞腐れていて、解散したり生きた心地がしていなかったり。再起に向けて、起爆剤となるものを作りたい」と決意し「ミュージシャンと共に頑張っている姿を美しく描きたい。ストーリーを肉付けし、最終的に音楽を以て完結させよう」と目指し取り組んだ。

 

音楽映画を制作するために音楽仲間を集めたが「主役は演技が出来る俳優にしよう」と決めていた。とはいえ、音楽業界と映画業界は違うので、キャスティングにあたりオーディションを実施。コロナ禍真っ只中の2020年3月に募っており「舞台公演がなくなったり、映画の撮影予定がなくなったり、行き場をなくしてしまった方々に集まって頂いた。僕のような実績のないところにも経験のある方々に集まって頂いた」と驚きながらも「運よく多くの方に集まって頂いた」と喜んだ。なお、主人公の母親役は、後藤まりこさんに直接オファーしており、快く応じて頂いた。ミドリの頃からファンとしてLIVEを観ており「後藤まりこさんが演じる母親役を見たかった。子供に言い聞かせる姿を想像して脚本を書いている」と明かす。当初は、標準語を話す優しいお母さんを設定し、ギャップのある言葉を言い放つようにしたかったが「関西弁以外喋れない」と云われてしまう、直ぐに脚本を書き直し「後藤さんの振る舞いそのままに、僕が思った後藤さんを書こう」と母親のキャラクターを変更している。

 

撮影に入ると、俳優によるシーンはスムーズに進行したが、ミュージシャンの場合は容易にはいかず。「ミュージシャンは、ステージで格好つけてパフォーマンスしているが、カメラを回される中で演技することには慣れていない。スイッチが入ると慣れてくるが、当初はギャップを埋めていくことに苦労した」と苦笑いしながらも「数少ない制作経験を基にしてアドバイスしながら演じて頂いた。とはいえ、勘の良い方が多い」と助けられた。また、着ているTシャツ等には拘りがあり「細かいところで沢山気づいて頂ける要素を入れている。関西のバンドのファンも観に来てほしい」と期待している。なお、ロケーションには苦労しており「コロナ禍では楽器を持って歩いているだけで後ろ指を指される辛い時期だったので、ライブハウス自体を貸して頂けず」とかなりの苦労をしてしまう。最終的に大阪・十三にあるスタジオ246 JUSOに依頼し、ライブハウス風のスタジオ「L studio」での撮影を快く協力頂いた。撮影では、お互いを気遣い30人の動員を集め、壁を映さず空間を広く見せる努力をしている。

 

全てのシーンを撮り終えてから編集を始めており、後半の伏線を回収するあたりを手掛けている時には「出来たかも」と実感。初長編作品であり「完成するだろうか」「お客さんが退屈するかもしれない」と不安に苛まれる時もあったが「映画を好きになってもらえる方がいる」と確信できた。「好きの押し売り状態なので、最終的にラストシーンで締まるように始めた作品の中に僕の好きなものが詰め込まれている。初長編作品を観てもらうために僕のワガママを詰め込んだ」と打ち明けながらも「最終的に爽快感を以て観終えて頂けたら」と願っている。

 

なお、主題歌と劇中歌を元FREENOTEの秦千香子さん、劇中歌とエンディングテーマをスムルースの徳田憲治さんが提供しており、岡本監督は「同じ時期を活動していたバンド。彼等はメジャーシーンへと飛び込み活躍していた。僕自身、彼等や彼女の楽曲が好きで、もっと知れ渡ってほしい。人柄やパフォーマンスも含めて、大好きなボーカリスト」とお気に入り。「自分自身がスクリーンを前にして聴きたい」という夢を叶えるためにオファーし、快く応じて頂いた。現在も、短編や中編の作品をコンスタントに制作しており「新たな長編を撮りたい」と展望している。「バンドマンに対してリアリティを以て描ける。一つのバンドにフォーカスを絞ったロードムービー、バンドの成長譚を描いた作品を来年に撮りたい」と計画中で「最後のLIVEシーンは劇場で思い思いに声を出して盛り上がれる作品を作りたい」と模索中だ。

 

映画『ディスコーズハイ』は、関西では、8月6日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場、8月19日(金)より京都・九条の京都みなみ会館で公開。なお、第七藝術劇場では連日舞台挨拶開催予定。

関西のバンドマンの大多数は、どれだけカッコよくても、それが例えガレージバンドの様な、普段は口数少ないです…みたいなジャンルであっても、面白いことを喋ろうとしてしまう…本作には、そんな関西のバンドマンにめちゃくちゃシンパシーを感じてしまう、不思議な作品。それもそのはず、監督を初めとして、関西のライブキッズなら必ず、演者の誰かしらを観たことあるのではないか?とライブシーンで活躍するバンドマン達が、所狭しと出演している。随所に挟み込む、小ネタでジェットコースターの様に、時にシュールに駆け抜けたかと、思えば、一転。ライブシーンや楽曲では、思わず、ガチやん…と頷いてしまうカッコよさ。ライブハウスの醍醐味の、あのインディーの初期衝動感がたっぷりと詰まった、音楽作品!たまには、映画館を飛び出して、ライブハウスでの彼らにも会いに行ってみては。

from関西キネマ倶楽部

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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