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大手メディアが扱わない候補者の中にこそ、民主主義の宝といえる方々が沢山いる…『NO 選挙,NO LIFE』畠山理仁さんと前田亜紀監督に聞く!

2023年12月21日

フリーランスライター畠山理仁を追ったドキュメンタリー『NO 選挙,NO LIFE』が関西の劇場で公開中。今回、畠山理仁さんと前田亜紀監督にインタビューを行った。

 

映画『NO 選挙,NO LIFE』は、選挙取材歴25年のフリーランスライターである畠山理仁さんの情熱と苦悩に迫ったドキュメンタリー。候補者全員を取材することを信条に、国政から地方選、海外まで様々な選挙の面白さを伝えてきた畠山さんが、2022年7月の参院選・東京選挙区で候補者34人への取材に挑む姿に密着。1人で選挙現場を駆け巡り、睡眠時間は平均2時間、本業である原稿執筆もままならず経済的に回らないという本末転倒な生き方を続けてきた畠山さんは、2022年9月の沖縄県知事選の取材を最後に引退を決意する。そんな彼が沖縄で出会ったのは、他の地域では見られない有権者の選挙への高い参加意識と、民主主義をあきらめない県民たちの思いだった。『なぜ君は総理大臣になれないのか』『香川1区』のプロデューサーである前田亜紀さんがメガホンをとり、『劇場版 センキョナンデス』の監督を務めたラッパーのダースレイダーさんが率いるバンドThe Bassonsが音楽を担当した。

 

2020年、大島新監督作品『なぜ君は総理大臣になれないのか』の試写会に参加した畠山さん。プロデューサーを担っていた前田さんは初めて畠山さんにお会いした後、畠山さんの著書「黙殺~ 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い~」を読んでみることに。「すごくおもしろいな。いつか取材してみたいな」と興味津々になりながらも、なかなか良き機会は得られず。そんな状況下で「2022年の参議院選挙が終わると、黄金の3年が来る。この機会を逃したら、国政選挙ではチャンスがないだろうな」と認識し、取材を依頼。また、畠山さんにとっても「これで最後にしよう」と考えていた時期だった。

 

自身が取材している現場を取材されることになった畠山さん。選挙取材ではいつも全員取材をやっているが「独立系候補に取材へ行くと僕しかいないんです。”こんなおもしろいことがありました”と報告をしても、誰も見ていないから信じてもらえない」と悩んでいたので、「やっと証人が登場した」と嬉しくなり「ぜひお願いします」と取材を引き受けることにした。とはいえ、参議院選挙の東京選挙区に立候補した34人を全員取材するので「前田監督が最後まで付いてこられるかな。お手洗いや食事といった休憩時間は組み込んでいないので大丈夫かな」と心配。だが「僕しか見てこなかった選挙の風景を沢山の方に見ていただきたい」という思いがあると共に「取材に応じてくれない候補者にもカメラを向けてもらえる」というチャンスに気づき、取材の依頼を引き受けることにした。なお、自分が取材される側になることについて「とても嬉しかった。嘘つきだと思われずに済みますね」と率直に喜んでいる。前田監督は、自身について「私は、カメラを持って取材現場に行く人間なので体育会系ですね」と話す。畠山さんに同行することは「ハードだな」と感じたが「それより、私は、選挙運動の場を使って差別的な発言をする人達たちのスピーチを延々と聞いてるとクラクラした。よくやってるな、よく付き合いますね」と感心。「コロナ禍では様々な思いがあるでしょう。畠山さんは基本的にフェアネスで、しっかりと聞いて記事にすることは大変だな」と改めて気づかされた。畠山さんは「自分にはない発想の演説を聞くのは、好き嫌いもありながらも、一回は聞くべきだ」と説き「聞いた上で、自分の中での優先順位が決まっていく。だからこそ、取材自体は苦痛じゃないし、ご飯が食べられないのも苦痛じゃない」とハードな取材を行う理由が明かされていく。なお、2022年の参議院選挙では、東京選挙区に立候補した34人全員への取材を行ったが、その後、18人が立候補した大阪選挙区にも取材に来ていた。15人の立候補者に取材出来たが、7月4日のauの電波障害により、残りの3人への連絡が出来ず、断念することに。想定外の状況による苦労はいくらでもあるようだ。

 

そもそも畠山さんが”無頼系独立候補”に関心を持ったのは「新聞で名前と肩書きの一行しか情報が載らない人達が何を訴えているか知らないまま選挙が終わることは危ないのではないか。注目されない候補者が社会にとって危険な主張をしていたとしても、その情報が世の中に流通していなかったら…」と気づいたことが大きい。有権者は、選挙運動期間中に候補者のポスターが貼られた掲示板や選挙公報を見て投票するが「候補者の本質を見極めないまま投票する人が出てくる可能性がある。関心を持たず情報がない状態で投票することは、現代の民主主義によって作られた選挙では、非常に危ういことなんじゃないか」と考え「全員取材をすることで、候補者のネガティブな面も提示できる。各候補者を見ていると、政党の支持や推薦を得て立候補しているけれど、実は中身が空っぽなんじゃないか、と思う人がいる。 1人で活動しているけど、社会の役に立つことを訴えている候補者も分かる」と着想。選挙運動期間中は、有権者と候補者がコミュニケーションをとれる良い機会であり「候補者が様々なことを考え抜いた結果として、政策を一気に見せてくれる。様々な政策を紹介したい」と思い、意欲的に全員取材を続けてきた。

 

だが、フリーランスのライターとして活動しており、取材現場では、粗雑な扱いを受けることも多いようだ。選挙取材の際は「公の職に就こうとしている人達は、誰に対しても開かれた人であってほしい」と願っており「私自身は無名だけれども、大事にしてほしい。私自身の存在も認めてほしい」という思いもある。「大手のメディアから無視されがちな候補者の方にシンパシーがある。状況が似ている。世の中から相手にされなくても、自分のやりたいことをやっている」と感じ「この人たちが訴えていることも、世の中に情報として知ってもらいたい」という思いも抱くようになった。
取材を通して、独立系候補達の凄まじい熱量を知り「主要政党から立候補している人達は、パワフルな人達が自分達に勝とうと思って挑戦してきてくれている、と焦ってもらいたい。そうすれば、世の中のためになることをしてくれる」と期待する一面もある。「1人1人の候補者が同じ土俵で戦えるグラウンドを作りたい」という思いもあり、大きな収入にならずとも、取材を続けてきた。各々の街頭演説を聞いていく中で「心が震える人と、暗記した文面を読んでいるだけの人では、受け取るものが違う」と感じており「新聞やテレビのメディアが取材するのが一番良い。僕はフリーで社会的影響力を持っていない。大手メディアが扱わない候補者の中にこそ、民主主義の宝みたいな方々が沢山いるんだ、と知ってもらいたい」という願いもある。

 

より良い政治家を生むことに関して、前田さんは「より多くの人に関心を持ってもらうこと」と挙げ「組織票だけで決まっていくと中身がない状態になる。”自分にとって利益があるか”という視点で選ばれていくと、良い候補者が選ばれない。誰かのために頑張っている人が良い」と提案。畠山さんは「やっぱり選挙に出よう」と掲げる。「『自分で立候補しよう』と言うと『立候補はできないから、せめて投票には行こう』とモチベーションが上がる」と理由を説明する。「『選挙に出ましょう、出ましょう』『出てください、出てください』と言っていると、出てくれる人が見つかります。実際に立候補し当選しています。 もちろん落選してる人もいます」と様々な現場に立ち会ってきた経験を話した。「現職議員は、選挙の必勝法を知っている。新人は志があるけど、 選挙を十分に知らない。公職選挙法を熟知しておらず、苦労しながら投票日を迎えても落選し、選挙供託金は没収され心身共にボロボロになり、次の機会を失ってしまう」と実情を明かした上で「選挙に出ることはもっとカジュアルにならないといけない」と考えている。

 

本作は、既に関東等の劇場で公開されており、畠山さんは観終えたお客さんから「楽しかった」「これからに向けて元気が出ました」といった声を聞くことが出来た。同世代の方からは「同い年です。私も 好きな音楽をやめようかなって思っていたんですけど、続けようと思います。やっぱり、好きなことをやるのが、 一番自分にとっていいことだと思って、勇気をもらえたんで、続けたいと思います」「小説を書いているんだけど、やめようと思ってたけど、やっぱり続けます」という声も聞いた。さらに「自分は様々な選挙を手伝ったことがあり、詳しいと思っていたけれど、私が見ていた選挙の世界はすごく狭い世界だった。こんなに豊かな選挙の世界が広がってるとは知りませんでした。目を開かされた気分です」と感想を教えてくれる人も多かったという。前田さんは「畠山さんは、ライターではあるけれど、民主主義のグラウンド整備をしている」と気づき「民主主義を応援している畠山さんを応援している人達が劇場に足を運んでくださっている。映画を観て感じることは、人それぞれだと思うんです。一方で『選挙出ようかな』『出ます』 と言って帰っていかれる方もいる」と様々な感想を興味深く感じている。なお、発声OKな応援上映も実施しており、「走れ」「頑張れ」「やめないで」「そうだ」「その通り」といった声が挙がった。畠山さんは「最初は、お客さんもツッコミをなかなか入れられない。僕は自分が映っているので、『走るのが遅い!』と厳しいツッコミを入れられる幸せがある。周りの人が喜んでくれて、だんだん声が出るようになってきた。すごく面白かったですね。あんな体験はないですね」と実感。「この映画は、編集のテンポが良いので、ヤジを入れるタイミングも難しいんですよ。短く言わないと、他のセリフを消してしまったりする。リピーターは、次にどこでヤジを入れるかを考えている。みんなグッズも作ってきてくれた」と喜んだ。前田監督も「応援している人を応援する人がいる応援上映は、すごくおもしろい。映画を他人と見るとこういうこともあるんだな、と大きな発見がありました。大阪でももしやれたらいいな。その時はご協力を」と楽しみにしている。

 

映画『NO 選挙,NO LIFE』は、関西の劇場では、大阪・十三の第七藝術劇場や京都・烏丸の京都シネマや神戸・元町の元町映画館で公開中。また、2024年1月12日(金)より兵庫・豊岡の豊岡劇場で公開。なお、第七藝術劇場では12月23日(土)11:55~の回では<発声可能!東西応援合戦上映!>が開催され、上映後には前田亜紀監督と畠山理仁さんによるリモートトークが行われる予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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