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一つ一つの出来事が積み重なり、良い映画が出来上がる…『島にて』大宮浩一監督と田中圭監督に聞く!

2020年6月18日

日本海沖にある山形県唯一の有人離島、飛島で暮らす人々を記録したドキュメンタリー『島にて』が6月19日(金)より関西の劇場でも公開。今回、大宮浩一監督と田中圭監督にZoomを用いたインタビューを行った。

 

映画『島にて』は、日本海の沖合に浮かぶ、山形県の離島・飛島(とびしま)に暮らす人びとを追ったドキュメンタリー。山形県の酒田港からの定期船で75分の場所に位置する山形県唯一の有人離島である飛島。豊かな自然を誇り、島の全域は国定公園に指定されている。かつては日本海側の海の交通の要所として栄え、島民の多くは漁業や農業で生計を立ててきた。しかし、過疎と高齢化が進み、現在は140人ほどが暮らしている。この島に生まれ、漁業を営む老夫婦、高校進学のために島を出て行く中学生、かつて島から出た人や、都会から島に来た人など、飛島にやって来た若い人たちなど、平成最期の1年間に記録した飛島の人びとの暮らしを通して、社会を営み、生きていくために本当に必要なものとは何かを問いかけていく。監督は、介護福祉現場を追ったドキュメンタリー『ただいま それぞれの居場所』の大宮浩一さんと単身高齢者たちを追ったドキュメンタリー『桜の樹の下』の田中圭さん。高齢化が進む中、島内に新たな雇用を生み出そうとするUターン組の若い世代を通し、島の人々の営みを映し出す。

 

高校時代まで山形県で過ごした大宮監督。大学進学をきっかけに40年以上を東京で生活してきた。両親が亡くなり、実家や土地を処分し段々と山形との接点が無くなってきている中で60歳を迎え「締めとして山形で映画を撮りたい」と思いを馳せていく。高校の同級生で、現在は飛島中学校で先生として赴任している友人がおり「生徒が一人になり、休校になりそうだ」と耳に挟み「学校の1年という軸を用いて、島で映画を撮りたい」と構想していった。

 

大宮監督の前作『』では、田中監督にも手伝ってもらっている。そして、彼女が監督した『桜の樹の下』を気に入っており「今作のように、メッセージ性を重視せず淡々としている作品。お年寄りの方が多い島の中で、田中監督の接し方によって、映画の視点を増やすことができる」と気づき、声をかけた。田中監督は、大宮監督から「飛島に行くぞ」と云われて、起用の意図について説明されず「手伝うポジションのつもりだった」と思い返す。「島で1年かけて撮影することにチャレンジしてみたい。『桜の樹の下』では佐渡と対馬の出身の方がおり、島を出てきた話を聞いていた」と明かし、本作に対し「是非!」と参画した。

 

高校進学のために島を出て行く中学3年生の一年を軸にして本作は描かれる。授業風景も撮影しており、田中監督は「生徒1人に対して先生が5人いる状態。先生達も授業を準する時間が十分にあり、工夫された丁寧な授業が行われている」と新鮮に感じた。大宮監督は、中学生の渋谷新君について「彼は漁師の方と仲良しで、ウマが合う。『漁師になるなら船あげちゃう』とまで云われている。使われずに朽ちていくなら、新君に使ってほしかったんでしょう」と人柄を話す。授業について「音で選んでいる。授業の内容ですね。我々が一番接した教頭先生は社会科を担当されていた。日露戦争の話や憲法の話等を通して、5人の先生が1人の中学生に伝えようとしている」と捉え、飛島のとある一面を本作で表現した。

 

また、中学校での撮影について事前に了解頂いていく中で、大宮監督は若い人達によって作られた会社があると知る。そこで、撮影前に連絡し「撮影できるかどうかは別として、若い人達ならではの力を貸してもらう時があるかもしれない」と認識し挨拶していく。具体的な事業については、飛島を訪れてから知っていった。彼等と同じ世代の田中監督は「私は神奈川県川崎市出身ですが、若者による地元の町興しを聞いたことがなかった。仕事で福島県の中学生によるワークショップに行った時に『過疎になっている地元で町の人々が戻り新しい人達が増えてほしくて何かしたい』という中学生の話を聞きながらも、現実は違うだろうなと厳しさを想像していた」と最初は冷静だったが、インタビューしてみて「福島の子ども達が成長して戻ってきて実践しているような気がした。戻ってくる人がいるんだ」と感動したことを告白する。還暦を迎えた大宮監督は「僕等の同期だと帰ってきています。『自分が生まれ育った町の為に何が出来るんだろう』と考えるのが普通。僕のような東京に出たきり帰ってこないと『上手いこと逃げたな』と思われている。逃げたくても逃げられない場合もあるが、自主的に戻りたいと思う人が意外とノーマル」と本音を述べながら「都市部なのか時代なのか、周囲によっても違う。出会った人の話を淡々と紡いでいくことで、僕らも理解しようとする姿勢を示せる」と本作でのスタンスを説く。その上で「一つ一つの出来事が繋がっていなくても、映画全体の中で感じたり引っかかったりする」と本作の役割も示す。

 

毎月1週間ずつ通いながら、1年に渡って撮影が行われた。最後の2~3月は海が荒れて船が出ず1ヶ月滞在。田中監督は「スーパーがないので買い物が出来ない。十分な食料を持参して伺っていました」と振り返る。大宮監督が「最初は大変でしたが、次第に島の方々にもお世話になりますよね」と明かすと、田中監督は「テレビ局の撮影や新聞の取材は頻繁に来ているが、1年も通うのは初めてだと思う。珍しかったようで、何かと気にかけて頂き、お世話になりながら、撮影を楽しんでいました」と懐かしんでいた。特に、お盆のバーベキューでの出来事が印象深く「和島さん夫婦にお世話になる中で、孫達が来る3日前から天気予報を観ながら来れるか心配しながら待っていた。無事に来れてやっとバーベキューができ、その笑顔が撮れて良かったな」と思い出になっている。大宮監督は「僕らは、家族が集まることが大変であることが想像できる。そんな出来事が積み重なっていくことで良い映画が出来上がっていきます」と踏まえた上で「お客さんにベストショットを教えてもらえれば、僕らも励みになります。この映画を好きになってくれる理由を僕等が考えさせてもらえる。そんなキャッチボールをしながら、細くても少しずつ長く多くの人に観てもらえる作品に育てて下さい」とこれから劇場で観るお客さんに向けて思いを託した。

 

今後について、大宮監督は「山形や東北を舞台に、少しスペシャルな場所にある普通の日常を描いて、作り手やお客さんと同じだと思える作品を作りたい」と願っている。田中監督は「女子プロ野球のおばあちゃん達を以前から撮影しており、完成させたい。大阪にいる元女子プロ野球の方。1950年から2年間だけあった女子プロ野球についてのドキュメンタリーです」と現在の状況を話しながら、出身地の静岡を舞台にした作品も構想中だ。

 

映画『島にて』は、6月19日(金)より京都・烏丸の京都シネマ、6月20日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場で公開。また、神戸・元町の元町映画館でも近日公開予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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