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女性と云えども必ずしも母性を良きこととして受け入れるわけではない…『牛乳王子』『先生を流産させる会』内藤瑛亮監督が公開当時の出来事や思いを振り返る!

2020年6月20日

いじめによる殺人の加害者と家族に焦点を絞り、罪を問われない“不処分“扱いになった少年のその後から、罪と罰のあり方を問いかける『許された子どもたち』の公開を記念し、京都・出町柳の出町座で内藤瑛亮監督の代表的短編と長編である『牛乳王子』と『先生を流産させる会』を上映中。6月20日(土)には、出町座に内藤瑛亮監督を迎え舞台挨拶が開催された。

 

映画『牛乳王子』は、ダンス、ラップ、エログロに彩られた冥界中学生日記。中学生加藤真が自殺する。恋心を寄せる同級生、安藤舞の前で痴態をさらし、クラスの女子たちに笑い者にされたからだ。加藤の怨念は殺人鬼「牛乳王子」となって蘇り女の子たちに復讐する…

映画『先生を流産させる会』は、2009年に愛知県半田市の中学校で起こった実際の事件をもとに映画化。郊外の女子中学校に勤める教員のサワコが妊娠し、退屈な毎日に刺激を求めていた生徒たちが色めき立つ。しかし、複雑な家庭環境に育ったミヅキらのグループは、サワコが性交渉をもったことを汚らわしく思い、眉をひそめる。ミヅキらは「先生を流産させる会」を結成し、理科室で盗んだ薬品をサワコの給食に混入するなど嫌がらせを始めるが…

 

上映後、内藤瑛亮監督が登壇。まずは「『牛乳王子』映画美学校のフィクションコース初等科の卒業制作で短編を撮りました。『先生を流産させる会』は高等科で長編を企画した」と撮影の経緯を紹介。当時の映画美学校では、選ばれた人しか撮れず内藤監督は落選してしまったが「特別枠として自分で撮るなら映画美学校の機材を使ってOKだった」と明かし、初長編となった『先生を流産させる会』を制作し「非常に思い入れが強く、未だにスマホの壁紙は公開初日の写真です」と嬉しそうに話す。

 

だが、一方で後ろめたい思いもあったことを告白。実は、公開当時に「ミソジニストではないか」と批判を受けていた。作品の元となった事件では犯人が男の子であり、映画では女の子に変更しており「男の罪を女に擦り付けているんじゃないか。男の暴力性について無自覚なのはどうなのか?」という批判である。制作当時は「男の罪を女に擦り付けている、と受け取られるとは想像もしていなかった」と顧み「自分の考えが及ばなかったことは本当に恥ずかしいことだと今も思っています」と真摯に話し「批判を受けた時にミソジニー(女性嫌悪という意味)という言葉を知らなかった。それ以来、よく調べるようになり、ミソジニーやフェミニズムに関する本を読むようになりました。男性優位主義の社会では、男性による暴力的な問題を大きく抱えており、その時に男性である僕が男の暴力性に無自覚だったり描かなかったりしたことが問題だ」と反省の言葉を表す。そして「今も解決するものではなくずっと思い悩んでいるところも正直あります」と打ち明ける。その後に撮った作品には、男性が抱えるミソジニー問題や女性嫌悪問題を反映しており「『パズル』や『ライチ光クラブ』『ミスミソウ』の相場晄君。いかにしてミソジニーを男性が抱えてしまっているのか。ポイントは男性が無自覚であること。男性優位主義の中で生まれ育っていると、無自覚に抱えて気が付かないうちに女性を気づけ、女性に対する歪んだ認知がある」と認識して描いてきた。今回の『許された子どもたち』においても「主人公の男の子にもそういった視点を意識的にいれています」と解説する。

 

改めて、制作当時を振り返り「Facebookのマーク・ザッカーバーグは、映画『ソーシャル・ネットワーク」と現実では違うというレベルで性別変更を捉えていた。『悪い種子』『小さな悪の華』或いは『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』のような悪として活躍する少女に対する思い入れが好きだな」と感じ、本作の原型を説く。中学生時代を思い出し「隣の席にいた女の子が『自分達がSEXで生まれたって本当に嫌だよね。気持ち悪いよね』と話していて、僕はギョッとした」と当時感じた驚きを引き摺っていた内藤監督。また、映画に興味を持った時、母親から『ザ・ブルード/怒りのメタファー』を薦められ「女性が奇形の怪物な子供を次々と産んでいく…なんでこんなの薦めたんだ」とギョッとした。「お母さんは子供がずっと嫌いで、俺を妊娠した時も『この子を好きになれるか不安だった』と俺に云っていた。女性と云えども必ずしも母性を良きこととして受け入れるわけではない」と気づきがあり「そういう視点でこの作品を作れたらな」と当時を思いかえす。「『許された子どもたち』も繋がっているところもあるので、比較しつつ観てもらえれば」と願いながら、舞台挨拶は締め括られた。

 

『牛乳王子』と『先生を流産させる会』は、6月25日(木)まで京都・出町柳の出町座で上映中。『許された子どもたち』は、大阪・梅田のテアトル梅田、京都・出町柳の出町座、神戸・元町の元町映画館で公開中、また、7月4日(土)より大阪・十三のシアターセブンでも公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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