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夢か現実か…混沌とした緊張感ある関係性をカラーとモノクロで演出した…『宇宙人の画家』保谷聖耀監督に聞く!

2022年7月22日

とある田舎の中学校を舞台に、転校生と自作の活劇漫画を描いている少年と、漫画の世界と現実が入り混じる様を描く『宇宙人の画家』が7月22日(金)より関西の劇場でも公開される。今回、保谷聖耀監督にインタビューを行った。

 

映画『宇宙人の画家』は、『クールなお兄さんはなぜ公園で泥山を作らないのか』がカナザワ映画祭2020でグランプリにあたる「期待の新人監督賞」を受賞した保谷聖耀監督が、独特の世界観で紡ぐSFサスペンス。田舎の中学校に転校してきたオサムは、ホウスケが同級生に自作漫画を汚されている場面を目撃する。その漫画は「虚無ダルマ」という題名で、フリースタイル説法で街を支配する虚無ダルマとアメリカのスパイが、謎の機械である達磨光現器を巡って繰り広げる暗黒活劇だった。漫画の世界と現実の境目が曖昧になっていく中、ホウスケは虚無ダルマの組織で働く青年・マルヤマの姿を目にし、全校生徒に向かって「宇宙人の画家の絵を見た」と叫ぶ。キャストにはラッパーの呂布カルマ、お笑い芸人のシソンヌじろう、作家の稲生平太郎、グラビアアイドルの桐山瑠衣ら個性的なメンバーがそろう。

 

最初に、画家の話を作ろうとした保谷監督。だからといって、絵画を描く画家ではなく「『2001年 宇宙の旅』のラストシーンが如く、宇宙全体を描きとる画家」というコンセプトがあり、一作の中に盛り込もうと一考。元々は「少年が書いている漫画のストーリーを描き、現実世界は後半でモノクロになる入れ子構造になっていた。パラレルワールドとして別々の世界が2つあり、なぜか混じり合ってしまうホラー映画を撮ろう」とプロットを作成していく。脚本を1人で書いていたが「撮影スケジュールに対して厳しくなった。スケールも大きくなってしまった」と諦め、再構成しながらアイデアを膨らませていった。そこで、映画の中における現実の世界はモノクロ、劇中で描かれる漫画の世界はカラーで映し出している。「普通はカラーが現実になる。モノクロは回想シーンに見られる」と認識しているが「元々は、パラレルワールドとして書いていた時も、半分は回想シーンに見えてもいいようなストーリーだった」と明かす。「モノクロパートで登場しているキャラクターの未来がカラーになる」という想定だったが「夢か現実か、混沌とした緊張感ある関係性を演出するためにカラーとモノクロを使い分けよう」と意識した。

 

複雑なストーリーであるが、カラーとモノクロの各々の世界に出演するキャストに各々の部分だけ伝えており「別の世界については伝えなくても大丈夫。その世界に生きる人々をあくまで描いている。それらを繋ぐのは、宇宙人の画家」と説く。そこで両方の世界を行き来するキャラクターも登場している。「主役になるようなキーとなる人物。彼が宇宙人の画家のイメージ。現実と虚構を行き来出来る存在。二つの世界を繋ぐ案内人。世界のネジを回し調和を保っている。どこかで存在して世界が成り立っているからこそ生きている。妖怪のようでもある」と述べ、演じた丸山由生立さんは保谷監督の知り合いであり「彼なら演じられる。彼の演技は、一言も喋らずとも、存在感がある」と確信しオファーした。また、フリースタイル説法で街を支配する虚無ダルマにはラッパーの呂布カルマさんをキャスティングしている。監督自身は、もともとヒップホップを聞いておらず、当初はカルトなロックバンドを想定して書いていたが「プロデューサーから『今はロックバンドではなくラッパーだ』と云われ、呂布カルマをオススメされた」と告白。「呂布さんの音楽は格好良く、壮大で、発せられる言葉の主体は不明だけど、様々な方向から飛び交い折り重なり一つの大きな世界が生まれている。宇宙に行っている気がして、本作で描きたいことに近い」と気づき、オファーしている。

 

撮影は、昨年のGWに10日間かけて行っており、前半でカラーパート、後半でモノクロパートと計画的に実施。「演技のテンションも違う。違う映画が始まったかのようで」と切り替えは大変であったが「撮っている時はスムーズに進行できた。子ども達が生きているテンポが伝わってくる」と実感。現場の空気感も違っており「カラーパートはプロの役者が出演しており、緊張感がある。モノクロパートは、和気藹々として皆が仲良く、現場で走り回っているので、ゆったりと撮れたかな。映像にも出ている」と達成感があった。

 

編集は、撮り終えてから考え始めており「素材を見てみると想定していたものと違った。判断しながら繋いでいくしかない」と覚悟。スペクタクルなシーンではアニメーションも必要になり「盛り上げていったテンションとストーリーを繋いでいかないといけない」と自身にプレッシャーをかけて仕上げていった。また、「今作は突飛な設定であるため、音は映画にとって重要」だと認識し、整音の近藤崇生さんと共に整音作業を実施。「音が付くと、映画の中の世界に空間的な広がりを表現できる。モノクロパートはステレオ2chで音が閉じている。カラーパートは5.1chで音が広がっている」と語り「意識しないと分からないレベルですが、音遊びをしており、音のおもしろさを知れた。整音作業している時、『宇宙人の画家』という一本の映画がようやく起ち上がった」と達成感を得て、本作が出来上がった。

 

映画『宇宙人の画家』は、関西では、7月22日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、7月29日(金)より京都・烏丸御池のアップリンク京都で公開。なお、シネ・リーブル梅田では、7月23日(土)に保谷聖耀監督と大坂健太(俳優・本作制作)さん、7月24(日)に保谷聖耀監督を迎え舞台挨拶を開催予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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