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問題の核心や本質を表現する最適な手法がこれだ!『ニッポニアニッポン フクシマ狂詩曲(ラプソディ)』才谷遼監督に聞く!

2019年10月4日

出向で赴任してきた真面目な男が目にする原発最前線の町の様子や、そこで行われる異様な大宴会の模様を通して、フクシマの現実を描いた人間ドラマ『ニッポニアニッポン フクシマ狂詩曲(ラプソディ)』が10月5日(土)より関西の劇場でも公開される。今回、才谷遼監督にインタビューを行った。

 

映画『ニッポニアニッポン フクシマ狂詩曲(ラプソディ)』は、原発事故から8年を経ても続く福島県の被災地の深刻な状況を、オペレッタや多彩なアニメーションなどを交え、陽気な騒ぎにくるんで描いた異色の作品。原発最前線の町・フクシマ県楢穂町の役場に出向を命じられた楠穀平は、上司となる役場の助役・村井に連れられ、津波で押し流された地区や、いまだ復旧しない鉄道、終わらない除染、セシウムが降り積もった帰宅困難地域など、各所を視察。フクシマの現状を目の当たりにする。後日、村井から、近々催される「原子力研究所副所長就任を祝う会」を円滑に楽しく進められるようにと言い渡される穀平だったが…
原発最前線の町で戸惑う主人公・楠穀平を『影武者』『乱』など黒澤映画で知られる隆大介さんが演じ、町役場の助役・村井を映画や舞台、アニメ声優などで幅広く活躍する寺田農さんが怪演。「セシウムと少女』の才谷遼監督がメガホンをとり、劇中を彩るアニメーションは、眞賀里文子さん、伊藤有壱さん、ユーリー・ノルシュテインさんら多彩な才能が映像を提供した。

 

岡本喜八監督の弟子だった頃、才谷さんは、日本映画の状況を鑑み、アニメーション関係の出版社に所属していた。アニメーションの作成方法が分かり「映画を作る時、低予算で制限がある中で、映画で表現できないことや巨額の予算を必要とする場合は、アニメーションを使えば実現できる」と実感。前作の『セシウムと少女』を監督した時、恐る恐るアニメーションを導入し「アニメーションでも実写よりお金がかかる。実写との相性も分かった」と成果があり、今作では、本格的に予算も使って導入していった。知り合いのアニメーション作家等にも依頼しており「3本の映画を撮ったら、組が出来上がっていく。やはり、人間関係が全てであり、お互いに探りながら仕事をしている」と述べる。1分間の映像でも3ヶ月かけて作って頂いており「失敗が許されない。作家を追い込む必要があり、気心知れており力量が分かっている作家を選び依頼している」と明かした。

 

これまでに、日本映画の現場を知り、本作ではスポンサーを入れず、才谷監督が大好きな俳優を集めている。才谷さんが支配人を務める「ラピュタ阿佐ヶ谷」の関係者や岡本喜八組の関係者等、知り合いにオファーし出演して頂いた。なお、今年、約60年ぶりの主演作を果たした柳澤愼一さんも出演しているが、「ラピュタ阿佐ヶ谷」の館内アナウンスを担当し、2ヶ月に1度は録音しているので、快く出演して頂いている。

 

不思議な世界観がある本作だが、才谷監督は映画『シャイニング』が好きで「天邪鬼な人間の考え方が大好きです」と話す。反原発映画である本作に関して「原発の問題はおかしいに決まっているじゃない?これを今真面目にやろうとしたら暗い話しか出来ない」と打ち明け「一番の核心や本質を表現するには、この手法が最適だ」だと語る。「本当に悪いのは誰だ?皆が知りたい!今のジャーナリズムでは突っ込んでいけない。むしろ、映画では原発を容認する思想に組み込まれていってしまっている」と危惧しており「映画は自由だと思っていたのに、今は不自由になっている。皆が映画を殺し、自由を押し潰す映画が沢山出来ているだけ」と捉えざるを得ない。「映画を作っている人間がそんなことをやったら御終い」と嘆いているが「ドキュメンタリー映画の監督だけは、カメラを担いで取り組んでいる」と状況を鑑み「フィクションとドキュメンタリーでは違う世界に分断されている。フィクション側が訴える必要がある」と考え、あえて真面目なことを如何にして不真面目に表現するか取り組んでいる。

 

なお、才谷監督は、「セシウム3部作」と題して、前作から作っており「これまでの2作品で、皆に変化球な作品しか作らないと思われている。次は堂々たる普通の社会派サスペンス『東京ブラックアウト』を『悪い奴ほどよく眠る』タッチでやりたいなと思っている」と次回作を見据えていた。

 

映画『ニッポニアニッポン フクシマ狂詩曲(ラプソディ)』は、10月5日(土)より、大阪・九条のシネ・ヌーヴォで公開。また、10月26日(土)より、京都・出町柳の出町座、神戸・元町の元町映画館で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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