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盗んだ軍服で偽物将校が暴走…!『ちいさな独裁者』がいよいよ公開!シネ・リーブル梅田ではトークショーも開催!

2019年2月6日

(C)2017 – Filmgalerie 451, Alfama Films, Opus Film

 

第2次世界大戦末期に起きた実話を基に、ドイツ大尉になりすました若き兵士が、ヒトラーのような独裁者と化し、暴走していく様を描く『ちいさな独裁者』が2月8日(金)より全国の劇場で公開される。また、2月10日(日)には、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で、映画エッセイストの武部好伸さんを迎え、トークイベントが開催される。

 

映画『ちいさな独裁者』は、第2次世界大戦末期に起きた実話をもとに描いたサスペンスドラマ。1945年4月、敗色濃厚なドイツでは、兵士の軍規違反が続発していた。命からがら部隊を脱走したヘロルトは、偶然拾った軍服を身にまとって大尉に成りすまし、道中出会った兵士たちを言葉巧みに騙して服従させていく。権力の味を知ったヘロルトは傲慢な振る舞いをエスカレートさせ、ついには大量殺戮へと暴走しはじめるが……
『RED レッド』や『ダイバージェント』シリーズなどハリウッドで活躍するロベルト・シュベンケ監督が母国ドイツでメガホンをとり、『まともな男』のマックス・フーバッヒャー、『ヴィクトリア』のフレデリック・ラウ、『顔のないヒトラーたち』のアレクサンダー・フェーリングが出演。

2月10日(日)には、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で、映画エッセイストの武部好伸さんを迎え、トークイベントを開催。武部好伸さんは、映画、ケルト文化、洋酒、大阪をテーマに執筆活動を展開している。『大阪「映画」事始め』や『ウイスキー アンド シネマ 2 心も酔わせる名優たち』等の著書を出版してきた。今回のトークイベントでは、他人の軍服をまとった脱走兵が巧妙な嘘で特殊部隊のリーダーに成りあがっていくという、実在の人物に基づいた驚愕の物語を歴史的背景や映画的視点から、より深くお話しして頂く予定。

 

映画『ちいさな独裁者』は、2月8日(金)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸、2月9日(土)より、京都・烏丸の京都シネマをはじめ、全国の劇場で公開。なお、2月10日(日)のシネ・リーブル梅田でのトークイベントは、14:00~の回が上映終了後に開催、2月7日(木)より劇場窓口(AM9:20~)・オンライン(AM0:00~)にてチケットが販売される。

へロルトは生き抜くために将校に成りすます。運を試すようにひとつ、嘘をつく。そしてひとつ、またひとつと重ねていく。

今年も良質な、戦争にまつわる映画を観てしまった。3日間寝込んでしまう程の衝撃。 へロルトが冷酷な人間になっていく描写が残虐な行為の間に閑静に挟まれていく。騒ぎ立て、逃げる囚人兵たちと対比するように佇むへロルト。そんな彼は「エムスラントの処刑人」に変貌していく道中にいた。彼はもう戻ることは出来ない。だが、さらに残虐さを増していく彼を、私は最後まで戦争を生き抜いて欲しいとも期待してしまった。それは冷酷になる前の彼を知ってしまったからだろう。「あれ以外に彼が戦争を生き残る方法はあったのか?」と観た後に問う。だからこそ自ら死を選んだ元俳優の囚人兵が印象に残った。彼は生き残るより仲間を選んだのだから。

ヘロルトのいる収容所が爆撃されたのに、傷一つつかなかった制服が「権力」を象徴する。史実に目を逸らさずに真摯に向き合う現代のドイツの姿勢はとても大切だ。大半の人が複雑な気持ちでエンドロールを迎えることになるのだが、エンドロールにしてはダークジョークにも程がある。最後の風刺が本作品をより引き立てていて素晴らしい。

なお、本作品は製作国ドイツでは白黒映画として公開されている。日本ではカラー上映だが、画の作りが素晴らしいので作品としてはカラー上映でも見応えがあった。

from君山

 

ドイツが舞台の戦争ものといえば嫌でもヒトラーが出てくるが、ヒトラーの姿を一切登場させずにこれ程の存在感を残せる映画はなかなかない。絶えず挟まれる「ハイル・ヒトラー!」の掛け声、「総統」という単語を出したとたん態度の変わる人々、色々なところでヒトラーの存在をひしひしと感じじられる。しかし、姿は登場しない。この演出が、この時代にヒトラーがいかに「象徴」であったかと感じさせる。

主人公のヘロルトは元々は脱走兵だったが軍服を手に入れたことにより大尉に成りすます。搾取されていた側が権力を(表面上ではあるが)手に入れ、脱走兵や略奪者への対応が変わるか…と思いきやヘロルトはただ搾取する側へと変貌しただけ。権力者はただの人間だと映画を観ながら何度も感じた。自分の目的、自分を守るためにそれ以外を排除していく。その行為を何度も何度も繰り返してヘロルトは偽物から本物の独裁者へとなった。

「私は軍服を盗みました」とヘロルトが「演技」をするシーンでヘロルトは何を考えていたか。大尉として生きることを決めたか、思わず告白してしまったか。私にはわからない。ただ、この映画を「昔起こった出来事」として終わらせないエンドロールは必見。

fromマツコ

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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