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日本の何処にも司法にも”村”が存在する…『眠る村』齊藤潤一監督と鎌田麗香監督を迎えトークショー開催!

2019年3月2日

事件発生から半世紀以上経った今なお幾多の謎が残されているが、司法が頑ななまでに再審を拒んでいる“名張毒ぶどう酒事件“について、粘り強い取材を重ね、この昭和のミステリーの真実と闇に切り込んでいく『眠る村』が、3月2日(土)より関西の劇場で公開。初日には、齊藤潤一監督と鎌田麗香監督を迎え、トークショーが開催された。

 

映画『眠る村』は、『ヤクザと憲法』『人生フルーツ』など数々の社会派作品を送り出してきた東海テレビ製作によるドキュメンタリー劇場版の第11弾。戦後唯一、司法が無罪から逆転死刑判決を下した事件として知られる「名張毒ぶどう事件」の謎を追った。三重と奈良にまたがる葛尾で昭和36年、村の懇親会でぶどう酒に混入されていた毒物による中毒で5人が死亡し、当時35歳の奥西勝が逮捕される。一審で無罪となった奥西だったが、二審で死刑判決、そして最高裁は上告を棄却。昭和47年、奥西は確定死刑囚となり、独房から再審を求め続けたが平成27年10月、獄中で帰らぬ人となる…
奥西の自白の信憑性や、二転三転した関係者の供述、そして再審を拒む司法など、事件から57年を経たいまも残る多くの謎に迫っていく。獄中の奥西の半生を描いた劇映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』で奥西を演じた経験のある仲代達矢さんがナレーションを担当している。

 

上映後、齊藤潤一監督と鎌田麗香監督が登壇。名張毒ぶどう酒事件に対する意見がはっきりと伝わってくる舞台挨拶となった。

 

東海テレビは名張毒ぶどう酒事件を発生直後から追っている。初代門脇ディレクターの後、齊藤監督が引き継ぎ、さらに鎌田監督へと引き継がれ、三代に渡って事件のドキュメンタリーを作り続け、本作が7作目。一番最初は昭和62年に門脇ディレクターが「証言」を制作。2005年に再審開始決定が発令された時に齊藤監督、2014年から鎌田が引き継いでいる。3人共に奥西さんは冤罪の可能性が高いという思いを以って作品を作り続けてきた。齊藤監督は「奥西さんが生きている間に再審開始決定が出て、名古屋拘置所から出てくる奥西さんをインタビューしたい」という思いで活動してきたが、結局、病気で亡くなってしまい、3人の思いが果たせていない。鎌田監督と相談しながら「本作が最後の作品かもしれないね」と思いながら「最後はもう一度原点に戻り村に入り取材をしてみよう。もしかしたら、証言が変わっているかもしれない」と思いつつ、取材に入った。視点を変えながら長年放送してきたが、鎌田監督は「村人達はどんな気持ちなんだろう。村人達は供述を変遷して奥西さんを犯人にさせた悪い方達じゃないか」と思いが渦巻き、真実をへの欲求がきっかけとなる。「村人も警察の操作ミスや裁判所の判断で長年モヤモヤしていた」と受けとめ「そんな気持ちを抱えたまま暮らしている村人はどんな人達なんだろう。皆の偏見を解決出来たら…」と思い、村へと取材に入った。「事件さえなければ、温かい方達で、食べ物が美味しく空気も良い村です。どうしても事件というフィルターを通すと悪い人達になってしまうのか」と鑑みながらも「偏見のない目で村に入ってみたら何が撮れるだろう」とジャーナリストとしての感覚が高まっていく。村の印象について「奥西さんがやった、と一様に言うが、”やった”にはカッコ書きが入る」と注釈が入る。「本当はやっていないかもしれないけど、奥西さんが自白したから。やったという場合、絶対アイツが怪しいから、やった。人それぞれのニュアンスがある」と感じ、村人の考えも多様だと気付いていく。

 

鎌田さんが東海テレビに入社する前、齊藤監督は「重い扉」を制作しており、東海テレビ報道部は「奥西さんはやっていない、冤罪だ」と確信している。その思いを引き継ぎ、最初は盲目的に「奥西さんはやっていない」という目線で取材していた。だが視点を変え「奥西さんがやったという視点に向き合ってみよう」と冷静になって考えていく。元々は、齊藤監督が継続して取材をしていた。とあるタイミングでニュースの編集長への異動を命じられ、取材が不可能に。3代目を考えた時に「当時の鎌田は愛知県警の警察記者クラブで警察記者をやっていました。警察記者は24時間365日ずっと事件事故と向き合うので、記者の中で最もハードな仕事。精神的にタフでないといけない。男性記者より優秀に仕事をこなしていた鎌田なら、名張毒ぶどう酒事件での村の取材に対応できる」と気づいた。「村人からは歓迎されない取材をやってくれるのは、男性記者より鎌田の方が出来る」と確信し、3代目に指名する。とはいえ、鎌田監督も「事件が起きた葛尾へ行く道中でいつも緊張します」と告白。「慣れてくると気にならないが、緊張しましたね。でも、村人の本音と建前は裏腹なところがある」と率直に語る。齊藤監督が頻繁に行っていた時は「出てけ!警察呼ぶぞ!」と言われていたが「僕より鎌田の取材力がある」と断言。鎌田監督は、取材帰りに毎回野菜を持って帰ってくる。でも、取材は出来ず、畑仕事を手伝っていたり、お茶を共にしていたりしていた。「TVカメラの前ではなかなか喋ってくれない。鎌田が行くと、可愛い孫娘が来たような感覚じゃないかな。鎌田も一生懸命に村人達と仲良くなろうと入り込んだ」捉えており、作中のようなインタビューが出来たと齊藤監督は信頼を寄せている。これを受け、鎌田監督は「畑仕事している時に気さくに声をかけるのが一番いい。日没までが勝負。外にいる時に声をかけて一緒に畑仕事をして話をした中で名張事件について訊く」と解説。「カメラマンも相当に努力していた。カメラを持参しながら、カメラがないように見せかけ、自分も話しかけながら撮っている」とカメラマンの努力も労った。

 

事件に対する反応の変化について、鎌田監督は「村人の中では少しだけ変化があった。心が楽になった状況はある。奥西さんが生きていると言えなかったことが言えるようになった」という雰囲気を感じていた。だが、まだ審議は続いており「奥西さんがやったと言い続けないといけない状況がある。再審請求人の岡さんが亡くなったら、事件がストップしてしまうので、その時に何を言うか知りたい」と関心は絶やしていない。世論の変化について、齊藤監督は「変わったかどうかはわからないが、名古屋地区では新聞も含め名張事件を頻繁に取り上げている。だが、奥西さんが亡くなってしまってからは、ほぼ取り上げるメディアが無くなってしまった」と伝える。東海テレビとして「我々は妹の岡美代子さんがお兄さんの名誉を回復させようと再審請求を引き継いでいます。まだ終わっていないことをしっかり伝え続けなければいけない」と強い意志を以て取り組んでいく。2005年、再審開始決定が出た時、奥西さんが犯人として疑わしいとされたが、翌年に取り消された。当時の裁判官は「死刑が予想される重大事件で自白以上の証拠はない」と判決文で書き、その決定はその後の裁判官も同じく書き続けている。齊藤監督は「裁判官にとって自白は絶対的な証拠になっている。自白を覆すことは今の裁判官達は難しい」と述べざるを得ない。鎌田監督も「裁判官にとっては無難な判断になるのかな」と思いながらも「弁護団が一生懸命に様々な証拠を提出しているが、それでも自白に勝るものはないと云われると、隠した証拠を出してもらうしか出来ることがない」とモヤモヤしている。『』というタイトルについて、齊藤監督は「直接的には葛尾に対して付けた。だが、実は司法の世界も””じゃないか」と解説。「臭い物に蓋をし生きやすいようにして、本当は正しくないことに声を出して言えないことは沢山ある。それは裁判所も同じ」だと述べる。「最高裁で死刑と決めた裁判について、後輩の裁判官が先輩の判断を覆すことは相当な勇気が要る。裁判官も独立した身分だが、人間なので縦社会があり、最高裁を頂点としたピラミッド型社会があり、先輩の判断を覆す判決を書いてしまうと、その後は出世が出来ない。司法の世界にも正しい判断が出来ないシステムがあるんじゃないか」と現実的な視点を以て、村社会が司法の世界にもある、と訴えた。また、現状は非公開の再審制度について、鎌田監督は「どのように審議され、判断が下ったのか、決定文は書いてあるが、不透明。市民参加したり、経緯を公開したりしてほしい。裁判員裁判に再審制度が導入されたら、少しは変わるんじゃないか」と提案する。

 

名張毒ぶどう酒事件の今後について、鎌田監督は「映画にならずとも、日々のニュースの中で報道していますので、折を見て、節目に合わせて取材は続けていきたい」と意気込でいる。齊藤監督も「今後も鎌田が村に入り、きっと8作目の映画として2年後に改めて作ってくれる」と期待しており「その時に皆さんぜひ観てください。妹の岡美代子さんが万が一亡くなってしまったら事件は終わってしまう。現在89歳になり、奥西勝さんが亡くなった歳と同い年になりました。時間がない」としきりに訴え、次作の映画に向けて積極的な姿勢を見せていく。最後に、齊藤監督は「熱心に見て頂いている方が沢山いるんだなと感じ、励みになりました。次の作品に向けて頑張りますので、引き続きよろしくお願いします」と伝え、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『眠る村』は、大阪・十三の第七藝術劇場と、京都・烏丸の京都シネマで公開中。また、神戸・元町の元町映画館でも5月公開予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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