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半年間頑張った掛け替えのない経験…!「ndcj2018」各作品を手掛けた監督達に聞く!

2019年3月2日

次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指す文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」の2018年度作品が完成し、3月16日(土)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で上映される。今回、各作品を手掛けた、板橋基之監督、岡本未樹子監督、川上信也監督、眞田康平監督、山元環監督にインタビューを行った。

 

文化庁委託事業「ndjc(new direction in Japanese cinema):若手映画作家育成プロジェクト」は、次代を担う優れた長編映画監督の発掘と育成を目指し、平成18年度より始まり、今年度で13年目になる人材育成事業。優れた若手映画監督を公募し、本格的な映像製作技術と作家性を磨くために必要な知識や技術を継承するためのワークショップや製作実地研修を実施すると同時に、作品発表の場を提供することで、次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指している。
8月に行われたワークショップから選出され、製作実地研修に進んだ5人の若手監督が、講師による脚本指導を経て、各制作プロダクションの協力のもと、プロのスタッフ・キャストと共に35mmフィルム撮影による短編映画を制作。フレッシュな感性と第一級の確かな技術が作り上げた個性豊かな短編映画5作品が上映される。

『サヨナラ家族』…

1年前、目の前で突然父を亡くした洋平。その事実をいまだ受け止めきれない彼は、妊娠中の妻を残して一周忌のため実家に帰省する。母は父がふっと帰ってくるような気がすると仏壇に話しかけ、妹も自分なりの方法で父の死を受け止めようとしていた。それがどうしても納得できず困惑する洋平に、不思議な現象が起こり始める。主演は『カナリア』の石田法嗣さん。

『うちうちの面達(つらたち)は。』…

鎌田家にある奇妙な出来事が起きる。2週間前に夫婦ゲンカして以来、ママが姿を消してしまったのだ。しかし13歳の浩次朗だけは、ママの居所を知っていた。実はママはずっと家の中にいて、家族にバレないように浩次朗が手助けしているのだ。家族が家にいない日中だけがママのくつろげる時間だったが、ある日、パパが突然帰ってきてしまい……。浩次朗を『クロユリ団地』の田中奏生さん、両親を田口浩正さんと濱田マリさんがそれぞれ演じる。

『くもり ときどき 晴れ』…

母と暮らす晴子のもとに1通の手紙が届く。それは25年前に母と離婚して生き別れた父の生活保護扶養照会だった。家族の中で自分にだけは優しかった父に会いに行くことにした晴子は、25年ぶりの父の姿に、扶養すべきか否か揺れ動く。出演はMEGUMIさん、浅田美代子さん、水橋研二さん。

『はずれ家族のサーヤ』…

祖母と2人きりで暮らす小学3年生の沙綾。恋人との生活を選んで家を出た母親は、時折、父親の違う弟・光希を連れて会いに来る。沙綾は弟のことが大好きだが、両親と一緒に暮らせる彼をうらやましくも思っていた。そんなある日、沙綾は学校帰りの公園でおもちゃ売りの男から古い木箱を買う。何の変哲もないその箱には、不思議な力が宿っており……。『義母と娘のブルース』の子役・横溝菜帆さんが主演を務め、『美人が婚活してみたら』の黒川芽以さんが共演。

『最後の審判』…

東京美術大学の受験に挑む稲葉は浪人5年目で、今年を最後の挑戦にしようと決めていた。2日間で完成させる人物着彩の試験に臨む受験生たちの前に、開始時間直前になって独特な風貌の初音が現れる。初音はとてつもない画力で他者を圧倒し、稲葉も彼女を意識するあまり自分のペースを見失ってしまう。怒りに震える稲葉は、初音に声をかけ彼女の圧倒的画力の秘密を聞き出す。初音の画力は、路上で似顔絵を描いてきた中で培われたものだった。

 

今回、各作品の監督が勢揃いし、インタビューを行った。

☆自身の性格や経験が作品に投影されているか

眞田監督:『サヨナラ家族』

僕の実体験をベースに映画を考えました。3年前に父親を亡くし、家族それぞれが年を経て、父親が突然亡くなったことをどのように受け止めているのかを見てきました。同時に、どういう風に受け止めていかないといけないのかと考えた時、そのプロセスを映画にしました。

山元監督:『うちうちの面達(つらたち)は。』

ベタな僕の性格が出ている。基本的に分かりやすい部分が好きなので、演出的に分かりやすい部分を強調しました。そこまで意識していなかったが、完成品を観て、分かりやすく出来上がっていました。

板橋監督:『くもり ときどき 晴れ』

美味いものを食べると元気が出ます。料理が好きなので、食卓シーンに表れています。

岡本監督:『はずれ家族のサーヤ』

弟がおり、髪の長い私が髪をくくっていると「ちょんまげにしたい」と言われ可愛くしていました。

川上監督:『最後の審判』

主人公は23歳に設定しました。当時の私は、自意識過剰で自信家。でも、気にしがちな性格。才能ある人が多くいる美術系の大学や広告業界にいるので、凄いクリエイターがごまんといる。そういう人や作品と比べて、気にしている自分がいる。怒りも含め表現することで正当化し、エンターテインメントにできた作品です。

 

☆俳優から刺激を受けたこと

眞田監督:

キャスティングは、演技が上手い人にお願いしました。根岸季衣さんや斎藤洋介さんはオファーしてOK頂いた。オーディションで選んだ方も多く、ひたすら上手い人を選んでいった。撮影も順調に進み、想像以上のレスポンスがある経験が新鮮でした。

山元監督:

田口浩正さんや濱田マリさんと仕事させてもらいました。自分が持っていたイメージと目の前で観た芝居から映画に落とし込んでいく作業は初めての経験で難しかった。でも、沢山助けられました。特に、濱田マリさんの特徴的な演技力が発揮されて助けられました。田口浩正さんはお笑い芸人の経験があり、場の空気を和ませ、主人公演じる田中奏生さんにリラックスさせながら助かった。逆にどうすればおもしろくなるかと考え過ぎてしまい、難しかった。

板橋監督:

大ベテランさんが多く、演出はシナリオから気持ちを説明した程度です。そこからご本人が気持ちを作っていきました。間の取り方や表情、目線の動かし方など絶妙で、勉強になりました。

岡本監督:

これまで助監督経験があり、プロの方と演技でお話する経験がありましたが、自分で演出しプロの方と話すのは初めてでした。本読みや現場で相談しながら進行できる、と勉強になりました。

川上監督:

主役の2人は色のついていないキャラクターでないと成立しません。僕のイメージにビシッと合う人をオーディションで選びました。その2人をよく見せるために、周りの人達は達人である必要があります。黒沢あすかさんと荒谷清水さんは演技経験が多くあり、演技をコントロールが出来る方々です。主役の2人には演技力を求めておらず、そのまま喋ってもらうようにしか伝えておらず、総合的に極端だがリアルに見えました。まさに、達人の職人芸に支えられました。

 

☆他の監督作品から刺激を受けたこと

眞田監督:

初見が東京の合評上映会でした。全く毛色が違う作品が並んでおり、観ていて新鮮です。

山元監督:

皆さん、演出が上手い。違和感なく観れる。フィルムっていいな、と感じました。デジタルと違う温かい奥行きを感じます。映画館で観てこそフィルムが活きる。自分の作品を大事に作ってきたので、新鮮であり、各々がそれぞれの時間をこんな風に頑張ってきたんだと実感しました。楽しかったです。

板橋監督:

やべぇな、という感情しかないです。最初が眞田さんで、音楽もなく暗さの攻めが圧倒的でした。恐怖しかなかった。皆こんな風にやっているんだなと思え、自作の反省点しかなかった。

岡本監督:

どれも自分には撮れないと改めて思いました。沢山の撮っておらず様々な意見を受け取るが、私はやりたいことがやることを大事にして、勉強していきたいです。

川上監督:

5本を並べた上映は多くあるものではありません。さらにゼロから脚本を生み出しています。予算や時間の制約があるなかで、、与えられた設定は共通しており、それを自分達が最大限に活かして取り組んでいます。そこからどういう作品が出来上がっていくか、ワクワク感で観させてもらいました。お互いが大変な思いをしてきたと伝わってきました。一緒にいる時間が長くなり、人と作品がリンクして人格が重なって見えています。半年間の頑張りと作品を以て分かり合えたかけがえのない経験です。

 

☆長編にするなら…

眞田監督:

長編にはしたくないです。この作品は父親が亡くなったことについての話であり、会えない人に会いにいくストーリーです。もし長編作品を手掛ける機会があれば、同じテーマでさらに膨らませて脚本を作ります。

山元監督:

キャラクターを家から出します。可能なら、家族4人のエリアを作りたい。子ども達のエリアも作り込んで濃くしていけたら、おもしろくなる。ママがいないことで起きる人間ドラマを派生させ細かいギミックを表現したいです。

板橋監督:

終始暗い雰囲気も長編だったら、笑いも含まれる内容になればいいかなと思っています。

岡本監督:

黒川芽以さんを主役にして、子どもがいなくなります。子どもが主役だと家族に対する時間が多くなります。大人が主役だとやりたいことが増え、世界がひろがっていきます。

川上監督:

長編にする前提で、応募の前から決めていました。今回は大きくストーリーが展開しておらず、2人の人物紹介を壮大に展開しています。2人がどういう風に成長していくかはいくらでも膨らませることが出来るキャラクターをつくりました。

 

☆今後の展開、次回作について

眞田監督:

なるべく自分が撮りたい企画をやりたい。自分の父親に関する話が生まれた場所に関する話です。自分が好きな原作ものや自分が映画にしたい作品を次は撮りたい。

山元監督:

次は長編が撮りたい。文化的な視点をもった企画があります。妖怪が住み着く町に済んでいる人達のストーリーで、エンターテインメントな導入からテイストを二転三転する構成を作っています。

板橋監督:

長編のシナリオがあります。食べ物が沢山出てくるストーリーです。女性の一人暮らしにヘンテコなマリオネットが登場し、別の男に恋をするストーリーをやってみたい。

岡本監督:

(本作はフィルムですが)DCPにチャレンジしたい。この機会で知り合った方々に企画を持ち込みたい。

川上監督:

日本発のSF映画を作っていくことも目標の一つ。漫画原作ものの提案を受けたり食事をしたりしながら繋がりをつくって、前に進んでいきたい。自ずと自分の道が開けていくと考えています。

 

若手映画作家育成プロジェクト ndjc2018」は、3月16日(土)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で公開。また、3月11日(月)には、第14回大阪アジアン映画祭内での先行上映が予定されている。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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