ストーリーを転がしながら突拍子もない物語を成立させる…!『キュクロプス』大庭功睦監督に聞く!
妻を殺された上に、その犯人に仕立て上げられた男が真犯人への復讐に取り憑かれていく姿を描く『キュクロプス』が、6月28日(金)より関西の劇場でも公開。今回、大庭功睦監督にインタビューを行った。
映画『キュクロプス』は、妻を殺された上、濡れ衣を着せられて投獄された男の復讐を描くノワール劇。妻とその愛人を殺した罪により投獄され、14年の服役を終えて出所した篠原は、妻を殺し自分を陥れた真犯人に復讐するため、事件が起きた町に帰ってくる。事件の捜査を担当した刑事・松尾と、松尾の情報屋である西の協力を得て、真犯人がヤクザの若頭・財前であることを突き止めた篠原は、財前を殺害するため準備を始めるが、同時に事件の記憶がよみがえり、悪夢に苛まれるようになる。そんなある日、ふらりと立ち寄ったバーで、亡き妻と瓜二つの女性ハルと出会ったことから、事態は思わぬ方向に転がり始める…
本作を制作するにあたり、大庭監督は、最初に、主人公の男性が亡霊と会い号泣しているシーンがふと頭に思い浮かんだ。この人物を題材に書いてみたい、とふと思い「彼に何があったのか、なぜ泣いているのか、過去に何があったのか」と作り込んでいくうちに段々と仕上げていった。考えていく過程では、大好きなルドンの絵を取り上げており「物語をはらんでいる絵なので、映画に取り込み、話を膨らませていった」と打ち明ける。
これまでは、多くの助監督を経験しており「良い意味で反面教師として活かしている」と正直に話す。具体的には「現場をまとめることが苦手が方が多かったので、今回は限られた条件の中で最大の答えを出すために段取りをしっかりと行った」と説く。キャスティングにあたり、10年以上の助監督経験の中で現場で知り合った方々にオファー。「名前が広く知られていなくとも上手な方。少ない演技時間で最大限にアピールする意欲があるので、凄いエネルギーを持った方達がいる」と評する。特に、主役については「お客さんが2時間も観続けられる方にお願いしたい」と訴え、池内さんにオファー。シナリオを読んでもらった上で快諾頂いた。今回、起用した俳優達に向けて演技指導は一切なく「彼等は完成された俳優。キャスティングの段階で仕事は終わっている。あとは現場で微調整するだけ」と自信があり「信頼できる達者でおもしろい俳優さんをキャスティングできた。そこでお客さんにも評価してもらえたら嬉しい限り」と期待している。
撮影現場での苦労を聞くと「犬が言うことを聞かない」と漏らしながらも「予算と日数が限られているので、物理的な制約がのしかかってくる」とプレッシャーを感じていた。しかし、撮影に入る前にはカメラマンに参考となる作品として『ゾディアック』を見せたり、俳優さん達とリハーサルして役に対する論議をして理解を深めたりしており、ストレスを感じずに自信を以て挑み、本作を作り上げていく。
現在、大庭監督は、オリジナルで書いているシナリオがあり「分かりやすく言えば『スタンド・バイ・ミー』と『レヴェナンド 蘇りし者』を足して2で割ったような作品」と説明する。「話を書くのが好きなので、ストーリーを転がしながら突拍子もない物語が成立するように現在書いています」と次回作について目を輝かせていた。
映画『キュクロプス』は、各地の劇場で公開中。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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