宇宙人は人間に対して何を思うだろう…シニカルな世界観を作り上げてみた!『みーんな、宇宙人。』宇賀那健一監督に聞く!
人類の滅亡を企む6体のモジャモジャな生物たちが地球上で様々な人と出会う様子が描かれる『みーんな、宇宙人。』が6月7日(金)より全国の劇場で公開される。今回、宇賀那健一監督にインタビューを行った。
映画『みーんな、宇宙人。』は、ファッション&カルチャー誌NYLON JAPANの創刊20周年を記念して製作されたオリジナル作品。地球の害虫である人類を駆除するために宇宙からやってきた不思議な生き物と、彼らと出会った人々が織りなす物語をオムニバス形式で描く。監督・脚本は、『転がるビー玉』『Love Will Tear Us Apart』『悪魔がはらわたでいけにえで私』など様々なジャンルの映画を手がける宇賀那健一さん。ある日、誰かの役に立とうとビルの屋上で「オレオレ詐欺」ならぬ「オレオレありがとう」の電話を繰り返していたセイヤ。そんな彼のもとに、突然何かが空から落ちてくる。セイヤが電話を切ると、エメラルドブルーの毛がモジャモジャに生えた、見たことのない生き物がそこにいた。ミントという名のその生き物と他愛もない会話をして仕事へと向かうセイヤだが、その後、体型にコンプレックスを抱くミサトのもとにオレンジ、自分に自信が持てずネガティブなショウのもとにピーチ、寂しがり屋の女子レイのもとにオリーブ、人間を強く信じるヒロトのもとにクロウ、人生に悔いを抱くミステリアスなリュウのもとにグレープと、ミントの仲間たちが各所に現れる。彼らはそれぞれが出会った人間との会話を通してお互いのことを少しずつ理解し始めるが…
セイヤ役に『18歳のおとなたち』『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の兵頭功海さん、ミサト役にグラビアで人気を集める菊地姫奈さん、ショウ役に『六人の嘘つきな大学生』の西垣匠さん、レイ役にSNSで人気のインフルエンサーでもある三原羽衣さん、ヒロト役にダンス&ボーカルグループである超特急の草川拓弥さん、リュウ役に台湾と日本でミュージシャン・俳優として活躍するYUさんが出演した。
2022年公開の『宇賀那健一監督短編集:未知との交流』内の一作『モジャ』が長編化された本作。作中の各エピソードの間、そして最後に新たなエピソードを挟み込んでいった構成だ。実は、当初から長編作品としての構想はあったようで「『モジャ』では、宇宙人が地球を侵略しに来た、といった設定は謳っていなかったが、裏設定として決まっていた。大枠のストーリーがある中にで、どのように肉付けしていくか」と過去作では手掛けていなかったアプローチで取り組んでいる。なお、NYLON JAPANとは『モジャ』の製作時から共に取り組んでおり、今回は20周年のタイミングが合致したこともあり、本作を盛り上げてきた。
長編化にあたり、ストーリーの大枠は『モジャ』の頃から出来上がっており、その間に挟み込むエピソードを検討。『モジャ』では「宇宙人の視点から人間を見ることによって、人間とは何だろう、人間に対して何を思うだろう」と考え、プロデューサーの戸川貴詞さん(『NYLON JAPAN』編集長)と話していった。本作においても、ブレインストーミングをしながら、恋愛や食欲などの入れていきたい様々なテーマを挙げていき、物語になりそうなものをピックアップした上で、キャラクターを作り上げ、次々に物語を書いて作り込んでいった。
キャスティングにおいても「各エピソードにあるテーマを担ってもらう人物には誰が相応しいだろうか」と検討している。今作では、宇賀那監督が初めて一緒に仕事をする俳優が多く「戸川さんと様々な視点からブレストをしていく中でキャラクターを作り、そのイメージと合致する方にオファーさせて頂いた」と振り返り「初めてお会いする方が多かったですが、現場は凄く楽しかったので、僕自身も刺激を凄く受けました」と話す。モジャの声を担った俳優に関しても、初めて一緒に仕事をする方が多いが「僕がどういうテイストが好きでやっていることを理解してくれている人が現場にいてほしい。今までお仕事でご一緒していなくとも、今までワークショップに来てくれていた方や演技について理解している方であれば大丈夫」と信頼している。
撮影では、各エピソードがそれぞれ約1日で撮影された。昨年の猛暑真只中での撮影となり、特にモジャの声優を担った俳優らが全身ブルータイツとなってモジャのパペットを操っており「パペット本職の方に頼んだ方が多分スムーズではある。僕はその動きも含めて役だと思っていたので、俳優に演じてもらった」と思い返す。とはいえ、宇賀那監督としては、他の現場にはない雰囲気のある現場を大いに楽しんだようだ。また、撮影期間中に『Love Will Tear Us Apart』の舞台挨拶があり、登壇した麿赤兒さんから「また何でも呼んでください」という声を頂き「インパクトある役を演じてもらうなら、麿さんしかいない」と決断。オファーしてみると快く引き受けてもらい「ノリノリで演じて頂いた。クランクアップの挨拶では『役者を何十年もやっていて、初めての役を経験させて頂き、ありがとうございました」と仰ってもらった。また、是非何らかの変な役でご一緒したいな」と次の機会を楽しみにしている。
編集段階となり、映画館で鑑賞するのに最適な音へとクオリティを上げており「私が想像していた世界観より全体的におもしろいものになっている」と実感。「劇場の環境で観ると、音に包まれる感覚は違っている。ミサイルが飛んでくるシーンの臨場感やシニカルな歌詞の劇中曲の聞こえ方も違ってくる。5.1chによって音の奥行きが際立ち、物語としての奥行きも付随して広まっていった」と体感しており「僕らは劇場で見てもらうために制作している。是非、映画館で観て頂きたいな」と期待している。完成した本作についてキャストから「シニカルさが想像以上にあった」という反応があり「ポップな作品だからこそ実現したかったことでもあった」と手応えを感じていた。なお、近年の宇賀那監督はコンスタントに撮り続けており「既に長編・短編共に1本撮り終え完成予定。このペースで撮るのは今年までにします。まずは、今の私が出来ることをひたすらやっている」と真摯な姿がうかがえた。
映画『みーんな、宇宙人。』は、6月7日(金)より全国の劇場で公開。関西では、6月7日(金)より大阪・梅田のテアトル梅田や心斎橋のシネマート心斎橋、京都・烏丸御池のアップリンク京都や久御山のイオンシネマ久御山、兵庫・三田のイオンシネマ三田ウッディタウン、6月15日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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