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本当に2021年に上映できる!もっとディストピアなテイストがあってもよかったかな…『チョコリエッタ』リバイバル上映の風間志織監督に聞く!

2021年10月7日

居場所が見つけられず“犬になりたい”と願う女子高生が映画部の先輩に誘われてあてもない撮影旅行に出る『チョコリエッタ』が関西の劇場でも10月8日(金)よりリバイバル上映、「風間志織監督特集」と題して、『火星のカノン』と『せかいのおわり』も上映される。今回、風間志織監督にインタビューを行った。

 

映画『チョコリエッタ』は、森川葵さんと菅田将暉さんが共演した青春ドラマ。大島真寿美さんの小説を原作に、孤独な少女が映画好きな青年との旅を通して再生していく姿を、フェリーニの名作『道』へのオマージュを散りばめながら描いた。幼い頃に母を亡くして心を閉ざしてしまった知世子。心を許せる唯一の存在だった愛犬ジュリエッタも死んでしまい孤独を募らせた彼女は、母が好きだった映画『道』を見せてもらったことをきっかけに、映画研究部の先輩である正宗と仲良くなる。正宗の映画に出演することになった知世子は、彼と一緒にバイクで撮影旅行に出る。監督は『せかいのおわり』の風間志織さん。2014年に製作され2015年に劇場公開。劇中で舞台となっている設定の2021年に、6年ぶりにリバイバル公開される。

 

大島真寿美さんの原作は、舞台を1980~90年代に設定した物語。映画化にあたり、風間監督は、最初の脚本を書いた当時の2007~8年頃に設定して執筆した。だが、2011年3月11日の東日本大震災をきっかけにして「我々は無茶苦茶な国に住んでいるな」と痛感。「どんな時代であっても若者は世の中に疑問を持ったり反抗したりする気持ちが表れる」と理解しており、震災を経験し、改めて『チョコリエッタ』について熟考。「彼等は思春期を謳歌する以上の大変なものを背負ってしまった。世の中に対して抵抗したり諦めたりする可能性がある。内在していたものが露呈してしまった時代を生きる子ども達が大変だ」と気づき、2021年3月11日を幼い頃に経験した子達が高校生を迎える10年後の設定に変更。東日本大震災が起こる前、知世子が5歳の頃に母親を亡くし彼女の世界が止まってしまう、という設定にしてリライトしていった。作中では、主人公の知世子が「もう夏休みも終わりだね」と告げる。本作のプロデューサーである伊藤直克さんは「2021年の夏休みに上映したい」と検討し、風間監督は「この発想はおもしろい。本当に2021年に上映できるんだぁ。どういう風に皆観てくれるのかな」と興味津々。現在の状況を鑑みれば「10年後の設定は、もっとディストピアなテイストがあってもよかったかな」と思いに耽ってしまった。

 

©️寿々福堂/アン・エンタテインメント

 

フェデリコ・フェリーニ監督の『道』へのオマージュを散りばめながら描かれた本作。風間監督自身がフェリーニ監督の大ファンであり「映画に好きになったきっかけの1本は『サテリコン』。フェリーニの作品には思い入れがある」と述べ。プロデューサーの意向はすんなりと受け入れた。「元々の原作の意向としては、フェリーニである必要はない。1940・50年代の映画で、時代を超えて観られる作品であれば良い」と言及し「大島真寿美さんは『フェリーニとジュリエッタ・マシーナからチョコリエッタという発想は良いな』と感じたのではないか」と直感。作品への思い入れに共感でき、素直に脚本へ反映出来た。

 

©️寿々福堂/アン・エンタテインメント

 

キャスティングにあたり、知世子役には、髪の毛を坊主頭に近い状態まで切れる女優さんが必須だとオーディションを実施。風間監督は、事前に森川葵さんの文章がおもしろいことをチェックしており、実際にお会いしてピッタリだと直感。最初に知世子役が決定する。森川さんの共演相手を選ぶにあたり「横に立っている男の子はどういう子が相応しいか」と検討すると同時に「森川さんの演技がどのように映るか未知数。役者としての技量が必要」だと鑑み、息子さんと見ていた『仮面ライダーW』で印象深く残っていた菅田将暉さんが良いのでは、と思いつき「おもしろい2人が並ぶな」とワクワクした。撮影は、原作と同じく名古屋を中心とした東海エリアで敢行。本作を撮ると同時に、劇中劇の映画を撮る必要があり「各々の撮影が同時進行で実施された。しかも、映画制作で『道』の映像や音楽を使う権利がなかった」と明かし、大変な状況下で苦労を重ねていった。

©️寿々福堂/アン・エンタテインメント

 

女子高校生時代から映画を撮り始めた風間監督。制作経験を重ねていく中で「作品に対する距離感がバランス良くなりましたね」と振り返る。『チョコリエッタ』については「ラフに取り組んでいましたね」と打ち明け「絵画に例えるならクロッキー調みたいな映画を作りたいな。しっかり書いた絵よりクロッキーを重ねた絵が動いていく方が、『チョコリエッタ』における表現方法ではないか」と話す。とはいえ「『チョコリエッタ』をちゃんと観ていない」と告白し「完成すると、しばらく作品を観ない。忘れた頃に観ると、こんな風に撮っていたんだ、と再発見する。今回、1回ぐらい観たいな」と願っている。現時点では次作の予定は決まっていないが、今後の展望として「物凄く悲惨でリアルなものとファンタジーを融合したい。悲惨な状況下においてファンタジーはリアルを乗り越えられるもの。翻ってファンタジーにならなくなるかな」と飄々と語った。

©️寿々福堂/アン・エンタテインメント

 

「風間志織監督特集」は、関西では、10月8日(金)より京都・烏丸御池のアップリンク京都、10月9日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォで上映。アップリンク京都では、10月8日(金)から10月14日(木)まで『チョコリエッタ』、10月15日(金)から10月21日(木)まで『火星のカノン』『せかいのおわり』を上映、シネ・ヌーヴォでは10月9日(土)から10月22日(金)まで『チョコリエッタ』『火星のカノン』『せかいのおわり』を日替わりで上映する。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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