Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

  • facebook

親子の物語を描くには、自分と向き合わないと人生が前進していかない…『ココロのバショ』モテギワコ監督に聞く!

2023年4月6日

宗教に帰依する母からの束縛を感じていた女性が、ポスターにひかれて訪れた牧場で馬に触れ、記憶を回顧していく『ココロのバショ』が4月8日(土)より大阪・十三のシアターセブンで公開。今回、モテギワコ監督にインタビューを行った。

 

映画『ココロのバショ』は、宗教に執心した母親に苦しめられてきた女性が再生への一歩を踏み出す姿を描いたドラマ。母のキヌコと2人で暮らすユメは、宗教に執心する母につらく当たられ、幼い頃より母からの強い束縛を感じていた。そんな彼女は、大人になってからも自分に自信を持てず、 失敗を繰り返していた。ユメは言葉にならない思いを「母へ宛てた手紙」に書き始めるが、うまくまとめることができずにいた。ある日、目にした馬のポスターに惹かれた彼女は牧場へと足を向ける。牧場で馬たちと触れ合う中で、ユメは母とのさまざまな記憶を思い出していく。ピンク映画の助監督として映画界に入ったモテギワコさんが様々な作品を経て本作で初メガホンをとった。

 

助監督として映画制作に携わってきたモテギ監督。「自分が監督として作品を手掛けたい」という思いは強く、5年前から「なんか違うな」と感じながらも、試行錯誤しながら脚本を書いていた。或る日、HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン/Highly Sensitive Person=繊細な人)という言葉を知り、自身の過去を振り返っていく中で、親子関係に行きつく。「ちゃんと自分に向き合わないといけないテーマなのかもしれない」と察し、精神的に辛くなりながらも「向き合わないと人生が前進していかない」と腹を括り、書き切ることを決意した。

 

親との関係をテーマにして書いているが「当たり前のように付いてくるのが宗教だった。当たり前過ぎて気づいていなかった」と改めて認識し、自身の気持ちを整理しながら、監督自身の実体験を基にして、インスピレーションを得ながらイメージを膨らませながら書いているが「特に幼少期の記憶が途切れているところもある。自分にとって刺激が強すぎたのか、抜けてしまっている。少しずつ思い出してきた」と告白する。

 

自身の過去と向き合っていく中で、脚本化していくのは心身共に疲れる日々だった。まさに「足りないものが何なのか分からない」と滞っていた時、頻りに馬の絵や、馬が含まれている漢字が目に飛び込んでくるようになってしまう。それまで乗馬の経験はなかったが、乗馬クラブへ試しに訪れてみると「馬も繊細な動物である」と分かった。繊細過ぎる自身を嫌い「繊細が故に親の目線や言動に敏感になり、ちょっとしたことで『私は愛されていない』『価値がない人間なんだ』と思ってしまう」と辟易していたが馬に出会ったことで自分の体質を受け入れられた」とようやく歯車が回り始め「物語が動き出していく」と前向きに執筆し書き上げていった。

 

キャスティングにあたり、主演の葛堂里奈さんは「この方と一緒にお仕事させてもらえたら嬉しいなぁ」と一目惚れ。モテギ監督は能楽を好んでおり、お仕舞いやお謡の経験のある俳優を探していく中で葛堂さんを発見し、映像を拝見して「この方しかいない」と直感的にオファーした。主人公の祖母を演じた大方斐紗子さんとは、TVドラマの助監督をしていた時に出会っており「おばあちゃんを演じてもらうなら、絶対に大方さんだ」と確信。お願いし引き受けて頂いた。また、芸能事務所の浅井企画にキャスティングについて相談しており、様々な俳優の方々を提案頂き「ピッタリな俳優の方々ばかりだった」と感謝している。なお、主人公の子供時代を演じた心月なつるさんは、役柄と違って、学校が大好きな明るい性格であり「オーディションの中で、素直で、演技することが好きなんだなぁ、と伝わってきた。主演の葛堂さんの面影もあった」と明かし、大変な役柄であるにも関わらず「周囲のキャストの皆さんとも仲良く過ごしていたので、トラウマにはなっていないんじゃないかなと願っています」と受けとめていた。

 

撮影は東京と長野で行っており、メインロケ地である長野県にある開田高原では全面的に協力して頂いている。特に、馬が登場するシーンでは木曽馬の里乗馬センター場長さんに御協力して頂き、馬の機嫌をとってくれることまで対応してもらった。撮影前には葛堂さんと馬の関係性を構築し「長年、人間の家族と一緒に住んできたことによるDNAが木曽馬には流れているので、基本的には温厚で優しい性格です」と場長さんに見守っていただきながら危険を伴わずに撮影できている。とはいえ、天候に左右されており、予期せぬ雨には困惑したが「おばあちゃんが登場する古民家は、最初に大掃除することから始めた上で準備している。地元からのエキストラの皆さんも雨の中の撮影にも関わらず嫌な顔を見せず、最後まで対応して頂いた」と助けられた。

 

編集段階となり、映像をつないだ時には不要なシーンに気づき、かなり映像を切っており「60分の作品にするつもりで撮影していたが、15分程度は切ることになりました」と明かす。なお、本作のラストシーンは、どうしても挿入したく「シーンにつなげるためにはどうすれば良いか」と熟考。試行錯誤しながら、つないでみると「子供の頃のユメちゃんの苦しみが浄化されたのかな。大人のユメちゃんが気づいてくれただけでも嬉しいかなぁ」と感じられた。主人公の行く末について「一歩踏み出せたのか、踏み出せなかったのか、様々に考えてもらえたら」と、お客さんに対しても願っている。今回、初めてゼロからの映画作りを経験し「本作を作ったことで、子供の心に興味を持ち始めました。2作目も子供の心をテーマにした作品の脚本を書いています」と今後を楽しみにしていた。

 

映画『ココロのバショ』は、4月8日(土)より大阪・十三のシアターセブンで公開。なお、連日、モテギワコ監督による舞台挨拶を開催予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

Popular Posts