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莉奈の要素が自分の人生とリンクすることが多く、私が演じるべき役だ…『生きててごめんなさい』穂志もえかさんに聞く

2023年1月30日

小説家の夢を諦めかけていた編集者の焦りと、同棲中の恋人への心情を繊細に描く『生きててごめんなさい』が2月3日(金)より全国の劇場で公開。今回、穂志もえかさんにインタビューを行った。

 

映画『生きててごめんなさい』は、現代の日本の若者たちが抱える病みをテーマに描いたドラマ。出版社の編集部で働く園田修一は、日々の仕事に追われ、小説家になるという夢を諦めかけていた。修一と同棲生活を送る清川莉奈は何をやっても上手くいかず、アルバイトをクビになり、家で過ごすことが多かった。ある日、修一は高校の先輩の相澤今日子が勤務する大手出版社の新人賞にエントリーすることになる。一方、莉奈はふとしたきっかけから、修一が担当する売れっ子コメンテーター西川洋一の目にとまり、修一とともに編集部で働くことに。西川や社員たちが莉奈をちやほやする光景に修一は嫉妬心を募らせ、莉奈に対する態度が冷たくなっていく。『余命10年』『新聞記者』の藤井道人さんが企画・プロデュースを務め、綾野剛さん主演ドラマ「アバランチ」などを手がけた山口健人監督がメガホンをとった。修一役をミュージカル「刀剣乱舞」の黒羽麻璃央さん、莉奈役を『少女邂逅』の穂志もえかさんが演じるほか、松井玲奈さん、安井順平さん、冨手麻妙さん、八木アリサさん、飯島寛騎さんらが顔をそろえる。

 

『少女邂逅』で、2018年に映画デビューした穂志さん。この5年間について「成長していないかもしれない。でも『少女邂逅』と比べて、ちょっとは成長している…」と謙遜しながらも「本当に様々な経験をさせて頂きました。映画とドラマの現場の違いもヒシヒシと感じています」と振り返る。様々な作品に出演し「現場毎に必ず得るものがあります。出会いには感謝しております」と謙虚な姿勢だ。

 

本作にはオーディションを受けて出演している。オーディションへの応募段階で台本の全てを渡して頂いており、全て読み込んでいく。当時の台本と出来上がった作品では冒頭や結末も含め様々な箇所が違っているが「莉奈は私が演じるべき役だ」と集中していく。莉奈に対して「一生懸命に生きているけど、白い目で見られてしまったり浮いちゃったりする経験が、私の人生には沢山あった。嫌みの的にされたり、見下されてしまうようなことがけっこうあったり。少し弱い立場で変わった子、そんなつもりはないのに変なミスを狙ってやっている子になってしまい『私だってなんでこんなミスしたのか分からないよ』といったことも」と自身の半生を重ね「散らばっている要素が自分の人生とリンクすることが多く、私が演じたら貢献できる。」とオーディション段階から出演を強く願っていた。

 

作中では、修一の視点でストーリーが進んでいっており、穂志さんにとっては、スクリーンに莉奈が映っていない時間を想像した上での役作りが必要だ。そこで、山口監督と沢山話すことができ「修一と出会う前の出来事や修一と過ごしていない時間についても話し合えた。莉奈という人物像が監督と私の中で合致して出来上がりつつあり、私自身との境目もなくなってくるレベルだった」と実感。だが、莉奈になりきることで、客観的な視点を一切失っていたこともあった。「どう見えているか関係なく、縦横無尽に思いのままに動き回り泣きわめいていた…」と思い返し「黒羽さんの台詞を初めて聞いた時、一人で台本を読んでいる時には感じなかった感情の動きや込み上がって来るものがあり、莉奈が生きている感覚がありました」と振り返る。

 

感情が盛り上がっていく喧嘩のシーンは印象深く、2回目の喧嘩について「トイレに閉じこもった時、カットがかかった後も黒羽さんに抱きついたまま泣いていました。もう少し修一とのコネクションが欲しかったので」と回想。「莉奈と修一は日常的に喧嘩をしているので、莉奈が泣きつくことはこれまでもあったと思う。カットがかかり次のテイクが始まるまで、こういうアプローチが出来るのは黒羽さんが優しかったから」と打ち明け「カメラが回っていないところでも繋がりを強くしておきたかった。本当に入り込み過ぎてしまい、台詞を忘れることもあった」と印象に残っている。また「階段を上って別れについて話し、修一が”ごめんね”と伝えるシーンは凄く嬉しくなった。込み上がってき来るものを感じましたが、まさか謝ってくれるとは思っていなかった。」とハッと気づかされるシーンもあった。

 

完成した作品について3回程度鑑賞しており「序盤あたりは『修一が惜しい』と感じるシーンがけっこうあった。『先輩が目の前にいても莉奈に一報入れられるでしょ』『もう一言あれば莉奈の不安も取り除けるのに』と、もどかしい”恋愛あるある”の視点があった」と冷静だ。莉奈に対しても「悩んで悩んで、連絡するか迷った末に送ってしまうところ『莉奈は修一だけとの世界ではないところも知った方が良いよ』って言いたいですね。『窮屈だから、あんな感情の出し方しか出来なかったんだ』と思いました。莉奈の世界が拡がるように思いたいですね」と願っている。とはいえ「誰にどう響くか、全く分からない」とお客さんの反応も気がかりで「50代の男性が『凄く良かった』というケースもあれば、同じ年代の方が『よく分からなかった』というケースもある。少し怖いな」と心配だ。「莉奈みたいに環境で苦しんでいる人が救われたらいいな」と願っており「本当は、その人自身は魅力的なのに、世界が閉ざされているせいで、活かされない。自分は駄目だ、と思い込んでいる人に届いたらいいな」と期待している。

 

最近は、アメリカテレビシリーズ「SHOGUN」への出演があり、日本に帰ってきてからは「ミニシアターで観た作品に改めて心を動かされた。丁寧なつくり方をしていて、作品に対する思いを無茶苦茶感じた。これからも有名無名、国内外に関わらず、思いのある方と一緒におもしろいものを作っていきたい」と熱望。国を越えたものづくりが楽しかったこともあり「国際的なことも視野に入れてやっていきたい」と望んでおり、演じてみたい役については「意外性のある役をやっていきたい、と思っている。イメージとは違う、と思われる役にも挑戦してみたいですね。金髪にしてみたり、その人の背景やしんどさを描いているものだったら、殺人者役もやってみたいですね」と今後の活動に夢は膨らむばかりだ。

 

映画『生きててごめんなさい』は、2月3日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や難波のなんばパークスシネマ、京都・烏丸の京都シネマ、神戸・三宮のkino cinema 神戸国際等で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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