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内館牧子さんが想像した弘徽殿女御の生き様に共感…!『十二単衣を着た悪魔』黒木瞳監督に聞く!

2020年11月4日

ひょんなことから『源氏物語』の世界にトリップした青年の成長を描く『十二単衣を着た悪魔』が11月6日(金)より全国の劇場で公開される。今回、黒木瞳監督にインタビューを行った。

 

映画『十二単衣を着た悪魔』は、女優の黒木瞳さんによる監督第2作で、内館牧子さんの長編小説「十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞」を映画化。源氏物語の世界に紛れ込んだ現代の青年が、奔放で強い女性に翻弄されながらも成長していく姿を描く。就職試験に落ちてばかりのフリーター・雷は、京大に合格した弟に対し劣等感を抱いていた。ある日、アルバイトで「源氏物語」の世界を模したイベントの設営をした彼は、帰宅途中に激しい雷雨に襲われて意識を失ってしまう。目を覚ますと、そこは「源氏物語」の世界だった。アルバイト先で配られたあらすじ本のおかげで陰陽師として弘徽殿女御に見いだされた雷は、息子を異母弟・光源氏との帝位争いに勝たせるべく闘う彼女に振り回されながらも次第に触発されていく。自身の境遇と重ねつつ、悪名高い弘徽殿女御に仕えていくことを決意する雷だったが…
『今日から俺は!!』『弱虫ペダル』など話題作が続く伊藤健太郎さんが主演を務め、『ダンスウィズミー』の三吉彩花さんが弘徽殿女御を演じる。

 

内館牧子さんの原作小説を読んだ黒木瞳さんは「おもしろい。素晴らしい小説」と気に入り「私も40年ぐらい若かったら、弘徽殿女御を演じたいな」という思いがずっと心の片隅にあった。2年前、内館さんの小説が原作である映画『終わった人』出演時に改めて「十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞」を読み「雷ちゃんの成長物語であり、弘徽殿女御の捉え方が元々の源氏物語と違っており、やっぱりおもしろい」と気づく。女性の在り方や数々の台詞によるおもしろさに惹かれ「映画になったら多くの人が元気をもらえる作品になるのではないか」と提案し、実現に向けて動いていった。

 

弘徽殿女御は、源氏物語では多く書かれていない。桐壺帝の第一夫人でありながら、悪者として書かれている。しかも、他の人の口を通して語られており、本人の心情が描かれていない。高校時代の内館さんは「弘徽殿女御はそうじゃない。実は桐壺更衣がしたたかなんじゃないか」と想像し、独自の視点を以て世界観を拡張していき「源氏物語異聞」として書き、現代の男子がトリップして成長していく構成になった。黒木さんは類を見ない着眼点に一目置き「内館先生が想像した弘徽殿女御の生き様は、人間として物凄く共感しました」と述べ「人は必ず老い時代は動く。いつまでも同じ場所に立っていられない。だから若い人には負ければいい。だからは私はやれることもやれないこともやってこれからも毎日を生きていく」という弘徽殿女御の言葉が伝わることを願っている。

 

キャスティングは、スタッフやプロデューサーら皆で提案し合い、最終ジャッジを黒木さんが担った。最初に、宮中の滝口の武士 良喬を演じた笹野高史さんが決定。「撮影現場をしっかりと引き締めて下さる」と絶大な信頼を寄せている。また「三吉彩花さんは堂々たる弘徽殿女御を演じてくださるだろうな」と確信。一番悩んだのは、「源氏物語」の世界で雷の妻となる倫子。「原作では可愛くない容姿で描かれているんですね。でも、女優は皆さん可愛いじゃないですか。表情含め様々な面で印象的な方がいらっしゃらないかな」と検討していた中で、伊藤紗莉さんが連続ドラマに出演している時に偶然観て「あ、この人が倫子」と気づき、プロデューサーとも意見が一致した。雷の弟を演じた細田佳央太さんは『町田くんの世界』が知られていない中でオーディションに参加しており、見た瞬間に「弟だ!」と直感。光源氏を演じた沖門和玖さんはオーディションで「初めまして」と挨拶した時点で皆が「この子だな」と意見が一致。桐壺女御と桐壺更衣は役柄により双子である必要があり、MIOさんとYAEさんという初々しい方々を選んでいる。六条御息所を演じた手塚真生さんや春宮を演じた田中偉登さんは実際にお会いし「役にハマっている」と感じた。右大臣役のラサール石井さんは前作の『嫌な女』の時から出演しており信頼している。印象的な役を演じたLiLiCoさんは、ショートムービーの審査員をした時にお会いしたり、『終わった人』でインタビューを受けたりしている時に「次に監督する時には出演させてください」と云われたことを覚えており、台本が出来た時に「存在感があり華がある役にはLiLiCoさんしかいない」とオファーした。昨年2月に撮影が行われたが、コミュニケーションによって役者と監督の信頼関係を形成している黒木さんは「指示を出したりアドバイスしたりしながらテイクを重ねたシーンでは、特に皆さんとのコミュニケーションを心がけました」と振り返る。

 

十二単など多くの衣装は、職人の竹林正人さんと共にきめ細かく厳選した。大変な労力を要したが「とても楽しい苦労でした。弘徽殿女御の色鮮やかな十二単は圧巻」だと自信がある。平安時代の家屋における美術については、名古屋の徳川美術館を訪れ、展示されている源氏物語の絵巻を拝見し「絵巻では全て屋根がなく、緑色の畳らしきものが敷かれている」と拘った。なお、当時の高貴な方は歩かない、と知ったが、映画としては成立しないので、国文学者の仁平道明先生と一つ一つ考証していく。「美しければ、普通の暮らしでもいいのではないか」と意見を頂き「誰も観たことがない平安時代において、源氏物語はフィクション。監督のお好きなように」と背中を押してもらい「女性が美しく見えれば」と世界観を構築していった。また、本作のエンディングでは、OKAMOTO’Sによる主題歌「History」が鑑賞後の満足感を盛り上げていく。黒木さんは既成の有名なロック楽曲を荒編集段階でつけてみながら様々な実験をしてみると、フィットしていることに気づき「ロックじゃなきゃダメだ」と確信する。劇中の音楽は山下康介さんと打ち合わせをしながら作っていき、主題歌を選ぶにあたり、沢山の楽曲を聞いた中で「OKAMOTO’Sさんの『BROTHER』にときめいてしまったんですね」と告白。OKAMOTO’Sにオファーし交渉していくなかで、弘徽殿女御の登場シーンに「BROTHER」を合わせ、ロックにしたい旨を伝え、作品からインスパイアされたイメージを基に「History」が制作された。

 

監督作品2作目となり、黒木瞳さんは同じ役者として「俳優を失敗させたくない。個人それぞれが輝いて美しく時には切なく、様々な顔を撮りたい」と願っている。本作のカメラマン月永雄太さんは、以前に制作したショートムービーを監督した際のカメラマンであるため「私の性格を理解しており、コミュニケーションを十分に出来たので仕事がしやすかった」と信頼すると共に「プロとしての志向があり、お互いに尊重し合いながら依頼している」と満足の出来。「身の丈だけのものをやるのは小者のすることだ、身の丈に合わないものを求めるからこそ人は輝けるんじゃないのかしら」弘徽殿女御が六条御息所に伝えた言葉を引用し「身の丈以上のものを自分の中で求めていく」と監督としての責任を自負する。現在の状況下で「人生とは何ぞや、これから世の中がどうなるのか」と様々なことを考え「何があっても受けて立つことができ、感謝できる」と改めて気持ちを一新し、今後も果敢に取り組んでいく。

 

映画『十二単衣を着た悪魔』は、11月6日(金)より大阪ステーションシティシネマ含め全国の劇場で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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