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プライベートを犠牲にしてでも取り組んでいるからこそ、子供や家庭を支援できている…『ほどけそうな、息』小澤雅人監督に聞く!

2022年10月11日

児童相談所で働く新人の児童福祉司が、仕事の段取りに疑問を持ちながらも、傷ついた子供を助けるために職務を全うしようとする姿を描く『ほどけそうな、息』が関西の劇場でも公開中。今回、小澤雅人監督にインタビューを行った。

 

映画『ほどけそうな、息』…

児童相談所で働く人々へ取材を行い、実話をベースに児童相談所の光と影を描いた社会派ドラマ。新卒で児童相談所に入職して2年目を迎えた児童福祉司のカスミは、職場の仕事の進め方に疑問を抱くこともあるものの、職務を全うすべく奮闘していた。そんなある日、彼女は、ネグレクトの疑いで一時保護された9歳の女の子ヒナを受け持つことになる。深く反省する両親の様子に、ヒナはすぐ帰宅できるかと思われたが…
NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」や映画『プリテンダーズ』『ハケンアニメ!』など話題作への出演が続く小野花梨さんが主演を務めた。監督は、性暴力被害の実態を取り上げた『月光』、虐待を受けて育った少年少女を描く『風切羽 かざきりば』など、社会問題に焦点を当てた作品を手がける小澤雅人さんが担う。

 

2013年、虐待を受けて育った少年少女の姿を描く『風切羽 かざきりば』の劇場公開時、お客さんの中に、現役で児童相談所で働いている佐藤剛さんがいた。「良い映画だけど、現場で働く者としてはリアリティに欠けていると感じる。児童養護施設などの現場を案内するので、自分の目で見て、映画を作ってみてはどうですか」と提案頂く。また、佐藤さんは、児童虐待防止に関わる人達が集まる多職種の勉強会を開催しており、関わっていく中で、児童相談所で働く方々の熱意や思いを強く感じた。一方で、報道によって、児童虐待の現実と児童相談所への非難を見せられ「世間との乖離があるので、差を埋めたい。児童相談所で働く方々に関する映画をしっかり作り、彼らの頑張りを映画として伝えられないか」と長年考える日々が続いていく。

 

児童相談所の現場で働く方々十数人を取材し、様々な声を聞いた小澤監督。A4サイズの取材ノートに書いたメモは40ページ以上にも及んだ。「仕事を四六時中引きずる」「帰宅後、就寝中も仕事のことが頭から離れない」「定時は9:00~17:45だが、定時には終わらない。大抵22:00頃まで仕事をしている」「自宅で無音になると仕事について考えてしまうので怖い。考える隙を自分で作りたくないから常にTVやYouTubeを流している」という声を多く聞いた。中には「寝たとしても夜中に目が覚めて翌日の仕事を思い出してメモして、気になり始めて眠れなくなり寝不足で朝を迎える」といった状態だったことまで聞き「プライベートを犠牲にして取り組む仕事は凄まじい。そういう方々がいるからこそ子供や家庭を支援できているのか」と気づき、頭が下がる思いしかない。なお、本作で描かれていることはほぼ実話であり、聞いたエピソードを多少なりとも脚色して描いている。例えば「心を開かないお母さんの家庭で掃除することを提案して、少しずつ気持ちが解れて会話が出来るようになる」といったケースも多く「本当は、児童相談所の職員が仕事として、そこまでする必要はない。だけど、そういったことで、お母さんから信頼されていったり、心身共に距離が近づいていったりする」と説く。

 

キャスティングにあたり、まずはオーディションを実施してみたが、ピンとくる俳優は見当たらなかった。プロデューサーの木滝和幸さんと相談していく中で、カスミ役として小野花梨さんを提案頂き「実際に会って軽くオーディションしてみたら、ダントツに良かった。その場で決断した」と明かす。シノブ役の月船さららさんも、木滝さんに「ピッタリの女優がいる」と提案してもらい、直接オファーしている。とはいえ、心身共に大変な役を演じることになりそうだが「終盤にかけて疲れはあったが、最後まで高い集中力を保ってくれた」と太鼓判を押す。

 

映画『まだ見ぬあなたに』…

同級生との一度きりの性交で妊娠してしまった17 歳の遥。幼い頃に母を亡くし、父は仕事に忙殺されている。誰にも話せないまま中絶できる妊娠週数を過ぎていた。そのことに気づいた図書館司書の潤子は……。二人の心の旅が始まる。

 

本作ではエグゼクティブプロデューサーである佐藤剛さんから企画を提案頂いた。本作が取り上げる話題に関しては以前から関心があり、医師や看護師に取材させてもらった上で脚本を書いている。元々は長編作品として考え、脚本を書いていた小澤監督。短編作品として制作することになり、今作では脚本協力となる斉藤萌さんの脚本を凝縮している。主人公の遥は図書館司書の潤子を頼りにしていくが「遥は高校で先生に悩みを打ち明けられない。高校で唯一心が落ち着く場所が図書室で出会う大人として必然的に図書館司書になった」と説明した。

 

映画『一瞬の楽園』…

重度のギャンブル依存症のケンタは、今日も競馬で負けてしまう。家に帰ると両親は“介入者”と呼ばれる専門家と待ち受けていて、回復施設に入るように説得される。「ギャンブルはやめようと思えばやめられる」とそれを拒否したケンタは、家から逃走する。ベトナム人留学生のハンは、昼も夜もアルバイトに明け暮れていた。留学ビザ取得の手伝いをしてくれた会社は、実は悪質な留学斡旋ブローカーで、多額の借金を背負っているのだ。母国では母がハンからの仕送りを心待ちにしているが、期待に応えるのは難しい。語学学校へ通う時間すらままならない本末転倒な状況に、心は晴れない。ケンタは橋の下で一夜を明かすが、空腹に耐えられなくなり、近くの飲食店に入る。そこは、ハンがアルバイトしている飲食店だった。ケンタが食い逃げをしたことで二人の運命は交錯し、思わぬ方向へと導かれていく。

 

ベトナム人や外国人留学生の問題に興味があり、調べたり取材したりしていた小澤監督。同時期に、ギャンブル依存症問題を考える会の協力も得て、ギャンブル依存に関する短編作品や啓発動画も撮っていた。ベトナム人留学生の映画を撮ろうとした時に「ギャンブル依存症の啓発動画を撮らないか」と依頼があり「ならば、一緒にして短編を作れないかな」と検討。「両方とも孤独や理解してくれる人がいないことは、状況は違えど、似た者同士。お互いの気持ちが分かる」と受けとめ「良いストーリーが出来るかな」と着想していく。劇中には、集団で同じ部屋に住む留学生達が描かれており「皆が皆ではないですが、実在します。現在、コロナ禍で留学生の多くは帰国しましたが、2018年に撮ったので、当時は集団で暮らすことは多かった」と聞いている。

 

三作品共に監督・脚本・編集を担う小澤監督。『』は共同脚本だが、三作の短編を一緒に上映するために撮ったのではなく、各作品のタイミングが合わせて撮っていた。幸運にも一緒に公開できる機会に恵まれ「監督・脚本・編集も、という意識はしていない。僕がやるからには、脚本を書きたいし、監督もしますし、編集も自分でやりたい」と話す。「編集を誰かに依頼したことはない。ゆくゆくは分業するアプローチは必要だ」と認識しており「小規模なので、現実的な問題はあります。今のところは、監督・脚本・編集を自分でやりますね」と納得している。『一瞬の楽園』と『まだ見ぬあなたに』は30分以内に収めるため、凝縮していった。当初、『ほどけそうな、息』は長編作品で考えていたが、製作費の関係により短編作品でつくることに。30分以内の短編にしたかったが、撮ってみたら、30分を超える規模となってしまったが「一度、尺を気にせず編集してみたら、ある程度の長さになった。プロデューサーとしては問題なかった」と安堵し「尺を気にせず自分の気持ち良いタイミングでつないでいき完成した」と振り返る。

 

先月、東京のポレポレ東中野で2週間上映しており、2回を除き全て満席だった。小澤監督自身は「あんなにお客さんが入るとは思わなかった。何故こんなにお客さんがいるのか正直分からなかった。自信もなく想像すらしていなかった」と打ち明けながらも「これだけ多くの人が観てくれているのは、嬉しいし自信にもなった」と感慨深い。自身で全て制作しているため「客観的な視点が分からなくなってくる。第三者の視点で観てもらって、関心を持って観に来てもらえることが映画として完成していくのかな」と改めて認識した。お客さんの中には児童相談所で働いている方もおり「自分の児童相談所での日常を観ているようだった」と聞き、職員の方による真摯な反応を嬉しく感じている。また、児童相談所と関わる仕事をしている人達からは「仕事についてなんとなく聞いていたけど、実際に見たことなかったので、こんな苦労や大変なことをしているんだ、と初めて知った」という声も聞き「そういう映像の力もあるんだ、と知りました」と感心させられた。

 

映画『ほどけそうな、息』は、関西では、大阪・十三の第七藝術劇場や京都・出町柳の出町座で公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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