Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

  • facebook

一致団結した時、一枚岩となる…『OLD DAYS』末松暢茂監督に聞く!

2022年10月11日

同じ暴走族のメンバーだった3人が、友人の命日に再会し青春時代に思いを馳せる『OLD DAYS』が関西の劇場でも公開中。今回、末松暢茂監督にインタビューを行った。

 

映画『OLD DAYS』は、埼玉県幸手市を舞台に、久々に再会した暴走族仲間たちの友情を描いた青春映画。俳優として活動しながら監督作も発表している末松暢茂さんが監督・脚本・主演を務め、実在する暴走族「幸手櫻會」に入念な取材を重ねて完成させた。東京のクラブハウスで働くカズヤ、漁師のソウジ、埼玉の地元でキャバクラのボーイをしているトモキ。かつて幸手櫻會のメンバーだった3人は、現在はそれぞれの日常を送っていた。そんなある日、仕事中に客同士の揉め事に巻き込まれたカズヤが突然地元に帰り、3人は久しぶりに再会する。その日は偶然にも、事故で他界した友人マコトの命日だった。共演は『ケンとカズ』の高野春樹さん、『なりゆきな魂、』の小田哲也さん。第41回ぴあフィルムフェスティバル「PFFアワード2019」で観客賞を受賞した。

 

実在する暴走族「幸手櫻會」は、埼玉県幸手市ではかなり有名で、暴走族の中では知る人ぞ知る存在。13代目特攻隊長である佐藤理人さんが、本作のアソシエイト・プロデューサーとなり、地元の絆によって仲介して頂いた。末松監督が「暴走族は、日本特有のカルチャーであり、リアリティある作品を外国で公開したら興味深いことになるんじゃないか」と思い立つと同時に「日本独自のカルチャーとして凝縮されたもの」と受けとめ、映画表現を追求していく。

 

映画制作のため取材を行っており、夜な夜な何度も通った末松監督。頭を下げながら「暴走族の中にある友情などを表現したい」と自身の意図や意向を伝え、共感してもらい賛同頂き「一緒にチャレンジしましょう」と関わって頂いた。佐藤さんには、撮影のためにバイクを集めて下さり、幸手櫻會の方々が実際に使っていた場所をロケーションに使わせて頂いたりしている。取材では、しきたり等も教えて頂き、脚本へと落とし込んでいった。佐藤さんをモデルにしたカズヤというキャラクターを末松監督自身が演じ、13代目総長を高野春樹さんがソウジとして演じた。小田哲也さんが演じたトモキは、実際のOBであり事故で足を引き摺られている方がベースとなっている。役者の特性を活かしつつ、幸手櫻會の方々の生い立ち等を取材し俳優達に共有してキャラクターを作っており、出来上がった脚本について、人前に立つことに慣れている理人さんに説明し御理解頂いた。

 

撮影にあたり、バイク走行シーンでは、多くの台数が集まった時こそ大掛かりとなり「スタッフが少ない中で連携しながら、指示しながら動きながらの撮影は大変でしたね」と回想。特攻服を着てバイクで走るシーンは「真冬の撮影で寒さと時間がせめぎ合う中での撮影だった」と思い返し「深夜に撮影させて頂いた。撮影できるロケーションを考えながら気合いで撮りました」と振り返る。エンドロールには、映画ではなく実際の集団走行が映し出されるが「実際に集まり、警察に許可を得て走っている。県を跨ぐ各々の管轄の方に来て頂いて誘導して移動している」と明かした。まさにツーリングの雰囲気があり「私がバイクに乗って後ろにカメラマンを乗せて撮影している」と明かし、撮影した2018年当時だからこそ実現できた映像である。

 

当初、長編作品として製作する予定だったが、予算と現実に折り合いを付けながら、監督自身が今表現できる時間を考え導き出した。「30分以内の短編を作ろう」とも画策したが、表現しきれない部分もあり「1時間を超えなくとも、可能な限り作ろう」と少しずつ変化しながら完成に至っている。冒頭から最後のエンドロールまで観た時に「お客さんに観て頂ける作品だ」と実感できた。なお、本作のポスターは、櫻會の方々が実際に利用している床屋さんでのシーンの1コマが用いられており「かつての立場や現在の職業に関係なく、様々な方達が通う特別な場所に見えた。古き良き時代を感じさせる空間が映画のイメージと一致していた」と説く。

 

既に各地の劇場で公開されており、様々な方々に観に来て頂き「暴走族ではない方が観ても、友達などに置き換えられる。暴走族が嫌いない人でも観られる映画」といった反応が得られている。末松監督自身が昔の友達に対して思いがあり「映画を上映することによって昔の友人に観に来てもらって再会した」と感慨深い出来事もあり「映画を通して、かつての友人と再会する。前を向いて今を見るためにも、大事なことなんじゃないか」と受けとめていた。「当時の彼等に伝えたかったけど伝えられなかったことがある。会えないけど、この作品が届いたらいいな」と願い「背中を押して前向きになれるような作品になれたら」と期待している。

 

4年前の撮影を振り返り、改めて「幸手櫻會」について「僕らに対しては真摯な方々」と振り返り「昔はワルかったけど、大人になり、結婚して家族になり優しいおじさんになる方も沢山いらっしゃいます。皆様にとっても、櫻會への強い思いがある。だからこそ、取材しないといけなかった」と思い返す。取材を重ねていく中で食事を共にし、嘗ての出来事を話して頂く中で「少年の顔をしながら、人間性をうかがえた時、仲間を大切にしていらっしゃる皆さんなんだな」と伝わってきた。「暴走族は一枚岩なんです」と表現して頂き「1人1人が全く違う生い立ちがあり、性格が違う。様々な人達が一つの方向に向かった時、地元を思う中で一枚岩になれる。1人では何も出来なくとも、一致団結した時に一枚岩となって僕達はお互いを信じて絆が生まれ、絶対に砕けない」と聞き、映画制作との共通点も気づかされていく。「良い作品を作る為に、1人1人が集まって、ビジネスや忖度ではなく、自分の身を削らないと作れない。誰か1人でも欠けていたら違った作品になっていたかもしれない。一緒にやれるかどうかの分かれ道となる」と認識し「少人数だったが、皆と一緒に1つの作品が出来た。この人達と映画を作り、僕等も一枚岩になれたら」と願っている。

 

映画『OLD DAYS』は、関西では、10月8日(土)より、大阪・九条のシネ・ヌーヴォで公開中。10月14日(金)より京都・九条の京都みなみ会館、10月15日(土)より神戸・元町の元町映画館でも公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

Popular Posts