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準備8割現場2割、そしてリハーサルによって現場が動いていく…!『天外者』田中光敏監督と中村健人さんによるトークショー開催!

2020年11月27日

明治時代の実業家五代友厚の生涯を描く歴史青春群像劇『天外者』が12月11日(金)より公開。11月27日(金)には、大阪芸術大学にて試写会を実施し、映像学科教授でもある田中光敏監督とアクションコーディネーターを務めた中村健人さんを迎えトークショーが開催された。

 

映画『天外者』は、三浦春馬さんが主演を務め、近代日本経済の基礎を構築し希代の“天外者(てんがらもん)=すさまじい才能の持ち主”と称された偉人である五代友厚の人生を描いた歴史群像劇。『利休にたずねよ』『海難 1890』の脚本である小松江里子さんと田中光敏監督がタッグを組み、オリジナルストーリーで描き出す。江戸末期、ペリー来航に衝撃を受ける日本。新たな時代の到来を察知した青年武士・五代才助(後の友厚)は、攘夷か開国かの内輪揉めには目もくれず、世界に目を向けていた。そんな中、遊女はるとの出会いから「自由な夢を見たい」との思いに駆られた彼は、誰もが夢見ることのできる国をつくるため、坂本龍馬、岩崎弥太郎、伊藤博文らと志を共にする。五代の盟友・坂本龍馬を三浦翔平さん、後に三菱財閥を築く岩崎弥太郎を西川貴教さん、初代内閣総理大臣となる伊藤博文の若かりし頃を森永悠希さん、遊女はるを森川葵さんがそれぞれ演じる。

 

田中監督と中村さんは、監督のデビュー作『化粧師 KEWAISHI』以来の仲であり、和やかな雰囲気の中で、映画を作る時に重要なことを大いに語るトークショーとなった。

 

主演の三浦春馬さんとは、撮影に入る1年2ヶ月前から役の話をしていた田中監督。日本映画界において、本作は、漫画原作でもなくベストセラー原作でもないオリジナル作品であるため、キャラクターの作り方から一緒に話していた。時代劇でありながら、人を斬っておらずタブーにも挑んでおり、入念な準備がなされている。一から様々なことを共に考えており「殺陣では、通常は健人さんに提案してもらいながら役者に演じてもらうが、今回は、春馬君にも参加してもらった」と明かしていくと、中村さんが「最初に監督と打ち合わせし、コンテを作り、ビデオコンテを撮り、春馬君に見てもらい、3人でも一度話して、作り上げていった」と工程を解説した。田中監督は「今の世の中は自らの欲だけを考える人が沢山いる。未来を考えて、お金ではない別の価値観を持って、利他の心を以て支援できる人達と一緒に日本を変えようとした男の話をやりたい」と話し、三浦さんも共感し「形にしたい」と熱望し、儒学や着物の所作を学び、さらに殺陣も身につけていく。「凛とした侍を演じなければ、世の中の人達に物語を通しても伝わらないんじゃないか」という思いを受け「初めての時代劇での主演を、あれだけ沢山の役者達がいる中で座長が務められるんだろうか、と皆が心配していたが、見事にやってのけた」と田中監督は感心し「”こんな役者なんだからさらに主演できるね”と皆が楽しみにしていた」と打ち明けた。

 

映画を作る仕事について、田中監督は「一番苦労するのは、クランクインまでの準備が大変。準備をしっかりしないと映画は完成しない」だと力説する。「監督だけなくスタッフとキャストの皆さんも準備が大変。準備8割現場2割。”用意スタート”と云っている時間は2割の努力。残り8割の努力は、準備が大半を占めている」と述べ「どこまで頑張って準備できるか、によって映画の良し悪しが決まります」と説く。本作の場合、時代劇であるため殺陣に関しても十分な準備が行われている。示現流と呼ばれる剣術を取り入れており「非常に激しい剣術で、一撃必殺で二発目は要らない」と中村さんは説明。三浦さんは「僕は示現流で演じるんですよね。台本を読んでいると、周りを取り囲まれる殺陣がある。一撃必殺なら、あっという間に終わるから、ドラマとして成立するんでしょうか」と提案しており、田中監督は「ドラマを作っていく上で、リアルな殺陣とエンターテインメントの中で演じるための殺陣の両面から作り込んでいかないといけない。そこで中村さんが必要。僕等も鹿児島に伺って示現流を見て理解し嘘はつけない」と認識。「自分が演じる上で、どのような物語を進めていくか。三者による話になる。基本的にはエンターテインメントであるが、全く違う示現流にしない。どうやったら観ている人も示現流を知っている人も納得した上でエンターテインメントとして成立する殺陣がないか」と話し合い作られていった。

 

そこで、中村さんは「一撃で切ってしまうと人物像がかけ離れてしまう」と挙げ、刀の説明をしながら、示現流と本作でのアクションを披露。見事な刀裁きを受け、田中監督は「僕等が作ったのは、カッコいいアクションで殺陣をやったことではない。どうやったら五代友厚の生き様、武士の命である刀を大切にする思いを出来るだけ表現出来るか」と語っていく。一般のお客さんと専門家の視点は違っていることを認識し、全ての動きをチェックしながら約45日もかけて1分半の動きを決めており「動きの中に主人公の思いや生き様にどのように踏み込んで表現出来るか」と本作の重要なテーマを解説。中村さんも「役柄としての人物像、自分を切り殺そうしている相手がいる中で自分の信念を貫いていくか生き様を描いていく」と述べ、三浦翔平さんが演じる坂本龍馬の刀を抜かない剣術について五代さんの剣術と被らないようにしたことを説明。企業CMの制作現場から映画界に飛び込んだ田中監督は「遠回りして映画の世界に入りましたが、映画で学んだことがあります。映画界では必ず最初に動いてみるルールがあります。必ずリハーサルがあります」と挙げ「”まず動いてみようか”と監督が云えば、役者もスタッフも集まってくる。皆が集まって、動くという行為を行う。スタッフはどこで自らの仕事をするか、役者は自身がどのように動いたらシーンで表現したいことを伝えられるか。皆がまず動いてみて検証する」と説いていく。「しっかりリハーサルしてお互いに確認をとり合ってから物事が始まっていく。映画で僕が教えて頂いた最大の利点、現場の醍醐味」と実感しており「単純なことなんだけど、まず動くことの凄さは勉強になった。今でも、まず動きながらお互いに検証してキャラクターが成立するか」と動くという行為の重要性を伝えていった。

 

さらに、殺陣について、中村さんは「様々な要素を取り入れることが主流になっています。中国武術やワイヤーワーク、関節技等の格闘術を使いながらエンターテインメントとして作られている」と現在のトレンドを踏まえた上で「殺陣の本質である命を懸けた演技を忘れがちになる。台詞と同時に相手が斬りかかってくるので、恐怖心等の感情があります。基本的な動きに感情がある延長線上に殺陣が作られていた。今は技術や見栄えの派手さが取り上げられやすい」と鑑みている。京都で伝統的な殺陣を教わっており「感情をベースに考えており、後世に残していきたい」と願っており「映画やドラマは総合芸術なので、スタッフの仕事と共に殺陣は絡み手が必要。殺陣のプロフェッショナルが京都には沢山おり、中心となる人物の呼吸や動きをリハーサルで見極めて、動きを自分達で作り上げていく」と田中監督とも考え方は同じだ。そこで、田中監督は「日本映画界には京都にしかないものがある。それは大部屋なんです」と挙げる。「かつては必ずあったんです。今や時代劇を熟知している大部屋の役者達は京都に200人ぐらいがいらっしゃる。芸歴60年の方もいらっしゃる。京都には大部屋のシステムがあり、彼等に出演して頂くと、完璧な時代劇の動きになる」と信頼しており「東京で撮ろうとするとしっかりと動けない人がいる。京都の映画文化は凄い。映画やドラマを支えている」と太鼓判を押す。中村さんも「彼らは出しゃばらない。主役やメインの役者さん達を引き立てるように演じて下さる。通常の役者は1年から準備していくが、彼らは何十年も同じことをしているので何も云わなくても画になる」と絶賛していく。なお、共演の三浦翔平さんや西川貴教さんは時代劇が初めてであったため、衣装・かつら合わせの時、かつらを前後逆に被ってしまうこともあり、田中監督は「そういう人達に今回参加してもらいました。現場の助監督含め各スタッフが心配していた」と明かす。撮影初日に撮ったシーンはオープニングロールまでの皆が走るシーンであったため「皆で勢いにのってほしかった。スタッフ皆で盛り上げて彼らが委縮せず伸び伸びと演じてもらうために出来るだけ爽快に走りながら大胆に演じてもらいたかった」と願い「共演相手と打ち解けるタイミングを現場は真剣に考えてくれている」と現場の雰囲気を汲み取っている。中村さんも当時を振り返り「活き活きと演じられていた。キャスト同士が仲が良く、監督やスタッフ皆で盛り上げて下さるのが十分に分かり、雰囲気の良い撮影スタートでしたね」と思い返した。

 

最後に、中村さんは「京都で撮影される作品は少なくなっておりますが、京都にも素敵な人材やスタッフがおりますので、ぜひ京都でも撮影する機会を楽しみにしております」とメッセージを送る。田中監督も「皆で一生懸命に語り合いながら作り上げた映画です」と伝えた上で「これから皆さんは様々な仕事に携わっていきますが、結果的に好きと思える仕事、どうしてもやりたいことにはどんなアプローチや回り道でも構わない。最終的には自分が好きだと思う仕事に是非とも就いて頂きたい」と学生達に願いを込め、トークショーを締め括った。

 

映画『天外者』は、2020年12月11日(金)より、TOHOシネマズ梅田をはじめ全国の劇場でロードショー。

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映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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