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自分を投影した主人公を通して、佐々木を見ていた…『佐々木、イン、マイマイン』細川岳さんに聞く!

2020年11月26日

青春時代のヒーローだった友人の思い出を振り返りながら、仕事も私生活も行き詰っている青年が一歩を踏み出す姿を映し出す『佐々木、イン、マイマイン』が11月27日(金)より全国の劇場で公開される。今回、細川岳さんにインタビューを行った。

 

映画『佐々木、イン、マイマイン』は、初監督作品『ヴァニタス』がPFFアワード2016観客賞を受賞し、人気バンド「King Gnu」や平井堅のMVなどを手がける内山拓也監督の青春映画。俳優になるために上京したものの鳴かず飛ばずで、同棲中のユキとの生活もうまくいかない日々を送って悠二は、高校の同級生の多田と再会をする。悠二は多田との再会で、在学当時にヒーロー的存在だった佐々木との日々を思い起こす。悠二はある舞台出演のため稽古に参加するが、稽古が進むにつれ、舞台の内容が過去と現在にリンクし、悠二の日常が加速していく。そんな矢先、悠二の電話に佐々木から数年ぶりの電話がかかってくる。主人公・悠二役を「his」の藤原季節さんが演じるほか、細川岳さん、萩原みのりさん、遊屋慎太郎さん、森優作さん、小西桜子さん、河合優実さん、「King Gnu」の井口理さん、鈴木卓爾さん、村上虹郎さんらが脇を固める。

 

高校時代の友人を元にして本作の脚本を執筆した細川さん。印象的な出来事があり「どうしても映画にしたい」と書き始めた。高校時代の全てをそのまま書いているわけではないが「一番の肝になる、皆の関係がおかしくなっていくきっかけとなる出来事は事実」だと話す。モデルとなった友人について「人前に立って盛り上げようとするより、人前に立たなくても、端の方で勝手におもろいことをやる。おもしろいことが一番の正義であり、執着していたような印象がある」と振り返る。この友人には事前に会っており「勝手にしたらえぇやん」と云われ、真正面から向き合っていった。

 

今までに自主制作映画の脚本執筆や監督の経験があった細川さん。自らの手腕で映画化しようとしていたが「自分で監督して撮れる自信がない。そのうえ予算もない」と一旦は諦め、小説として書き始めていく。同時に、今後も俳優を続けていくか悩んでいた。そんな状況で、内山監督に脚本をついて相談したが、大いにおもしろがってもらう。以降、3,4年もかかりながら今作を書き上げていく。なお、出演にあたり「悠二を演じるか、自分がやりたかった佐々木を演じるか」と最後まで自身がどの役を担うか大いに迷っていた。内山監督から「何故この映画を作りたかったか」と聞かれ「僕が佐々木を演じたいから作った」と改めて認識し「佐々木を演じる」と決意する。そして、藤原季節さんに直接「悠二を演じてほしい」と脚本を渡した上でオファーし、承諾してもらう。本作における悠二の位置づけを大事にしており「あくまで主人公は悠二。悠二を通して佐々木を見る瞬間が多いから『佐々木、イン、マイマイン』。悠二には僕自身が投影されている。売れていない27歳の俳優としての様々な出来事が反映されている」と思い入れが強い。主要な登場人物のキャスティングはオーディションからの起用や直接オファーした方もおり「萩原みのりさんと森優作さん、そして藤原季節さんは早い段階からオファーしていました」と挙げ「どの役も『この人や!』と迷いはなかった。『脚本がおもしろい』と皆に思ってもらえたから、出演に至ったかな」と納得している。

 

とはいえ、佐々木を演じることについて「凄いキャラクターなので、自分が演じられるかなぁ」と不安があった。数回のリハーサルを経て「もっと突き抜けたい」と必死になったが「モデルの人物が強過ぎ、全然近づかなかった」と痛感。佐々木の同級生を演じた藤原季節さん、遊屋慎太郎さん、森優作さんらと何度も会っていく中で「僕を佐々木として見てくれていた。『お前は佐々木だ』という雰囲気が出来上がっていた。僕も勝手に佐々木になっていった」と気づき「このメンバーでいる時は佐々木でいられる」と安心できた。実際に遭遇した出来事が作品に反映されているため「佐々木の言葉だな」と次第に実感していき「言っていることは理解できるが、想像したものが遠過ぎて、哀しみが近づかなかった。でもこの哀しみは大きかった」と感慨深い。佐々木を演じたことで、心の余裕ができ「同い年の俳優への嫉妬やイラつきがあったとしても『佐々木、イン、マイマイン』というおもしろい映画を作った」という自信につながった。

 

なお、劇中では、悠二がテネシー・ウィリアムズによる戯曲『ロング・グッド・バイ』に挑んでいる。脚本を書いている細川さんが役者の友達から舞台出演を誘われた作品であり「執筆が順調ではなかった時期に戯曲を読み、まさしく書いている物語にリンクしている」と気づき、本作に落とし込んだ。また、往年の名曲達が所々に盛り込まれており「西岡恭蔵さんの『プカプカ』は、むっちゃ好きです」と打ち明けていく。H Jungle with tの『WOW WOW TONIGHT」や中島みゆきさんの『化粧』等、リアルタイムで細川さんが聞いていなくとも気に入っている楽曲が存分に添えられており「1995年あたりの音楽が好きですね。佐々木が立ち止まってしまう楽曲はなんだろう。結局、自分が好きなことが反映されていますね」。さらに、作中で印象的に挿入されている音楽は、内山監督の『青い、森』でも手掛けている小野川浩幸さんによる楽曲で「カッコいいですよね」とお気に入り。「既存の青春映画にあるような楽曲ではなく、佐々木の生き方がロックだから、ロックに傾倒した音楽を作りたい」と内山監督から聞いている。

 

今後は「どのような役でも演じてみたい」と意気込んでおり「佐々木を演じたので、真逆のキャラクターも演じてみたい」と俳優としても意欲は尽きない。内山監督とは「また一緒やりたい」と話しており「映像化は別として、僕は脚本を書くのが好きなので、書きたいものを書き続けていきたい」と創作意欲は大いにある。あくまで俳優業がメインであり「脚本がおもしろかったら作りたい。映画が好きで俳優をやっていきたい」と考えおり「別の関わり方として、自分がおもしろいと思う映画は今後も作り続けたい。脚本として関わる等の様々な形がある。おもしろい作品が作れるなら何でもやる」と未来に目を輝かせていた。

 

映画『佐々木、イン、マイマイン』は、11月27日(金)より、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマ、難波のTOHOシネマズなんば、京都・三条のMOVIX京都、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸をはじめ全国の劇場で公開。11月29日(日)には、大阪ステーションシティシネマに、細川岳さん、森優作さん、萩原みのりさん、内山拓也監督を迎え舞台挨拶を開催予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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