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経済とミニシアターは意外と密接な関係、コロナ禍に追い込まれていない、どうにかなる…!『シネマスコーレを解剖する。~コロナなんかぶっ飛ばせ~』木全純治さんとプロデューサーの村瀬史憲さんに聞く!

2022年7月15日

名古屋にあるミニシアター、シネマスコーレの支配人である木全純治さんを追ったドキュメンタリー『シネマスコーレを解剖する。~コロナなんかぶっ飛ばせ~』が7月15日(金)より関西の劇場でも公開される。今回、木全純治さんとプロデューサーの村瀬史憲さんにインタビューを行った。

 

映画『シネマスコーレを解剖する。~コロナなんかぶっ飛ばせ~』は、愛知県名古屋市のミニシアター「シネマスコーレ」の木全純治支配人を追ったドキュメンタリー。2021年3月に放送された名古屋テレビ制作のドキュメンタリー番組「メ~テレ ドキュメント 復館 シネマとコロナ」に未公開シーンや継続取材の映像を加え、劇場公開用に再編集した。1983年に映画監督の若松孝二さんが創立して以来、インディーズ映画やアジア映画の名作を休まず上映し続けてきたシネマスコーレ。近年は坪井篤史副支配人が企画する独創的なイベントで全国的に注目を集めるようになっていた。映画作品と観客の近さが魅力のひとつである同館だったが、コロナ禍で「密」の回避が叫ばれる事態となり、初めての休館を余儀なくされるなど様々な困難に見舞われる。2年間にわたって取材を敢行し、映画文化の多様性を守るために奮闘を続ける木全支配人の姿を映し出す。韓英恵さんが語りを担当した。

 

シネマスコーレの支配人である木全さんは、カメラに撮られることに対して「ミニシアターは、”撮って頂いてなんぼ”の世界。お願いして来て頂けるものでもない。来てくれた時は大歓迎。やりたい放題してください。勝手にしてください」と自らのスタンスを話す。プロデューサーの村瀬さんとしては「撮らせてもらえるなら喜んで」と足繫く通った。シネマスコーレに対し「こんな映画館は他にない。色濃く個性的なところがあることは、名古屋にとっても良いこと」と評し「シネマスコーレは若松孝二監督が作ったのが大きな特徴。ユニークな映画館がコロナ禍で無くなったら困るよね。応援しようよ」と昂らせていく。コロナ禍により「木全さんはもっと焦っているかな」と思っていたら、意外と平然としていた。「この余裕は何なんだろう」と不思議で「(副支配人の)坪井さんは焦り、お客さんが0だし、強がってどうするんですか?」と疑問しかない。話を一つずつ聞いていくと「映画館は密ではない、実験をしてみたらその通り。こちらが思っていたものは先入観でしかなかったんだ」と分かり、勇気づけられていく。「コロナ禍で世の中を染め上げていきがちだけど、木全さんより認識が甘かった。学びの場にもなった」と感謝しており「こんな木全さんの姿を見ていなかった。坪井さんの印象が強かったですが、この支配人がいるから坪井さんがやりたいことを出来ているんだな」と認識。「勇気づけてもらえるために映画にしよう」と本作の方向性が定まる。

 

京都の同志社大学に通い、名画座の京一会館で4年間通った木全さんは、大学卒業後は映画の道に進むことを決めていた。「1971年に大映が倒産し、日活ロマンポルノが始まり、一般の製作会社が採用活動をしなかった。監督達はロマンポルノや成人映画に活路を見出した」と説き「たまたま文芸坐に行ったら、営業社員募集を見つけ応募したら『直ぐに来い』と云われ、映画館の仕事を始めた」と振り返る。その後、若松孝二監督が文芸座に「自分の映画館を起ち上げるにはどうしたらいいか」と相談に向かい「名古屋で映画館を起ち上げるなら木全しかいない」と聞き、電話が鳴ることに。2回目に会った段階で「名画座をやります」と伝え、支配人の仕事を引き受けた。

 

支配人の仕事は、番組を編成するだけではない。「当時から35mmフィルムで上映していたが、毎日上映することは大変な所業。技師の仕事も全て担った。残りのメンバーはアルバイト、演劇や映画に携わる学生を集めた」を思い返しながら「映写機を導入してくれた方に5日程度教えて頂いたが、その後はいない。残りは全て担い、学生に教えた。大変でしたね」と飄々と話す。シネマスコーレが1983年に開館し、最初の3年が激動の時代だったが、1986年からは中国映画と自主映画が台頭。次にインド映画、韓国映画、香港映画…とアジアの映画が台頭した1980年後半から1990年代があり「おもしろい時代。その時までは、営業していく中でお金が循環していく。経営に関して考えたことは2008年まではありません」と危機感を感じずに運営してきた。

 

2005~6年は、映画界にも物凄い韓流ブームを迎える。だが、2007年には韓流ブームが終わり、2008年のリーマンショックによって、一気に落ち込んだ。日々の営業を続けていくと、お金が回っていたが「リーマンショックによって、35%減となった。(コロナ禍は25%減、30%減)」と明かす。「愛知県はトヨタ自動車に支えられている。トヨタの一次下請け・二次下請け企業に勤めている人は刈谷と豊田にいるから名古屋まで来ない。三次下請け、四次下請け、五次下請け企業の名古屋市内の部品工場に勤めている人が来ていた。トヨタ自動車が初の赤字となり、ウチも一気に下がった」と説き「ずっと低空飛行で映画界は存在していたが、まさか更に落ちるような出来事が起こるとは想定してなかった。経済とミニシアターは意外と密接な関係があるな」と悟っていった。

 

とはいえ「一番大変だったのは、若松監督の社長から交代。僕にとっては、コロナ禍に関して、追い込まれた感覚はない。どうにかなる」と力説。緊急事態宣言により1ヶ月上映できなかったが「命令なら、対価が必要ですよね。国は覚悟を持たないといけない」と指摘。「2020年は補助金やミニシアターエイド基金を以て±0に出来た。何も出なかったら反乱が起こっていますよ。補助金が1年目も2年目も出た。今年の3年目が勝負、どう乗り切るか」と認識しており「高齢者のお客様がガクッと減ったんですよ。今は6割程度が来て頂いている。残り4割が無くなったので、他の層で補わないといけない。これをどうするか、が今の問題」と説明。また「コロナ禍より配信の方が強敵」だと述べ「コロナ禍は2年で終わると思っていたが3年目まで続いちゃている。配信はミニシアターに対して大きな影響を及ぼしている。配信にどのように対処していくか。コロナ禍以上の大きな課題」と危機感を感じている。

 

そこで、今年の1月1日から、シネマスコーレの2階を「スコーレインディースペース」に改築。舞台挨拶だけで終わわらず、トークショーも始めた。また、2021年4月から「スコーレ映画塾」を開始しており、インディースペースを用いて実施している。トークショーは有料制で、折半してゲストの交通費等に使ってもらうようにして頂いた。舞台挨拶の重要性は近年で感じており「さらに監督や俳優と密な交流が出来る場所をお金を頂きながら運営していく。新たなミニシアターの展開をしていきたい」と意気込んでいる。

 

編集にあたり、監督の菅原さんは、コロナ禍における木全さんの姿を伝えようしたが、プロデューサーの村瀬さんは若松孝二監督の映画館を強調したい意向があり、お互いにシンクロしてこなかった。当初は「木全さんと若松孝二監督は別物だ」と村瀬さんは思っていた。だが、菅原さんが撮ってきた映像を見ていくと「木全さんのスタイルやアティチュード、世の中に対する姿勢は若松さんと近いんじゃないか」と気づく。最終的に、木全さんが「コロナ禍なんか大したことない。リーマンショックを乗り切ったから、今はまだマシだ」「若松孝二監督が社長を降りてもらった時の経験に比べれば大したことない」と話している姿を見ながら、糸口を見つけていっており「木全さんと一緒に作った作品だ」と自負する。

 

今回、各メディアからの取材を受けながら「皆さんノリが凄く良い。木全さんってこんなに人気があるんだ。ネームバリューは凄く大きい」と改めて確認させられた村瀬さん。木全さんに惚れ直す機会が多く「映画関係者としては前に出て来ない方だが、木全さんが仰っていることや活動内容は、現在の映画界の中で大事なことであり、他のミニシアターが参考にしてほしい」と願っている。

 

映画『シネマスコーレを解剖する。~コロナなんかぶっ飛ばせ~』は、関西では、7月15日(金)より京都・九条の京都みなみ会館、7月16日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォや神戸・元町の元町映画館で公開。

映画好きには、言わずと知れた名古屋にあるインディーズ映画のメッカ、「シネマスコーレ」。今作では、木全支配人に焦点を合わせつつ、劇場の歴史、今も尚、猛威を振るうコロナウイルスとの闘い、そして、劇場の在り方を映し出していく。

 

映画ファンは勿論、製作陣、役者含め全国の映画人から熱烈なラブコールを受ける劇場の映画愛を垣間見ることができ、普段は通うことが難しい遠方の映画ファンも、シネマスコーレの魅力を知ることができる。しかし、時勢柄、一番関心を持ったのは、コロナとの闘いについて。激動の2020〜2022年のミニシアターの裏側を、ここまで赤裸々に見ることができ、コレだけでも十分に価値のあるドキュメンタリー作品。

 

シネマスコーレだけに限らず、全国のミニシアターが、それぞれの形で闘いを続けている昨今。支援や、クラウドファウンディングも方法の一つだが、”映画ファンの一人”として、自分の推し劇場に通うことが、一番の力になるのではないだろうか。そのためには、劇場側にも持てる限りのポテンシャルを発揮して、今より一層に映画館の魅力を発信してほしい。そして、私達も全力で応えて行きたい。ふと、本作を観て拳に力が入ってしまった。

 

さて、今週は劇場で何を観ようか。

from関西キネマ倶楽部

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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