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誰もが様々なものを抱えて生きている、疎遠になっている人を思い出す瞬間があってもいい…『いつくしみふかき』テアトル梅田で舞台挨拶開催!

2020年7月26日

問題ばかり起こす父と父を知らずに育った息子が、ひょんなことから再会するも互いに実の親子だと知らぬまま共同生活を始める様を描く『いつくしみふかき』が関西の劇場でも公開中。7月26日(日)には、大阪・梅田のテアトル梅田に大山晃一郎監督と渡辺いっけいさんと遠山雄さんと榎本桜さんと林寛則さんを迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『いつくしみふかき』は、ベテラン俳優の渡辺いっけいさんが映画初主演を務め、引きこもりの青年と父親の関係を描いた人間ドラマ。「劇団チキンハート」主宰の俳優・遠山雄が、自身の知人をモデルに、実話をもとに生み出した物語で、遠山自身がモデルとなった知人にあたる引きこもりの青年・進一役で出演。渡辺はその父親である広志を演じる。30年前、進一の父・広志は妻の加代子が出産中に、加代子の実家に盗みに入り、進一の叔父にあたる牧師の源一郎にとがめられ、悪魔として村を追い出された。そして30年が過ぎた現在、母に甘やかされて育った進一は、どんな仕事も長続きせず、ひとりでは何もできない男になっていた。そんなある日、村で連続空き巣事件が起こり、村の人々から悪魔の子である進一が犯人だと決めつけられてしまうが…

 

上映後に大山晃一郎監督、渡辺いっけいさん、遠山雄さん、榎本桜さん、林寛則さんが登壇。各々が思い思いに感謝の気持ちを伝えながら、舞台挨拶が繰り広げられた。

 

大阪で生まれ育った大山監督は、中学生の時から「映画監督になりたい」と周りに話しており、テアトル梅田に登壇でき万感の思いがある。本作について「父親と息子の話ですが、いっけいさん演じる広志が、最初は獣みたいな自分さえ助かればいいと思って村人に羽交い絞めにされて吠えており、一匹の獣が一人の人間になろうとします。息子の進一も様々な環境によって変わってしまった。その二人が親子になっていく」と解説。観る人によって様々な捉え方があることを理解しながら「丁度ひと月前に自分の父親が孤独死し、この映画にリンクしていることがありました」と打ち明け「実在する親子を基にしていますが、僕や遠山の親子関係が交ざり映画が出来ました」と振り返る。「白黒ハッキリしなければならない世の中ですが、僕自身が父親に複雑な気持ちを抱えている」と告げ「複雑なことをハッキリさせる必要はなく、複雑なまま進一は歩き出した。皆さんも様々な環境にいると思いますが、ハッキリさせなくてもいいんじゃないか。様々なものを抱えて生きている。疎遠になっている人を思い出す瞬間があってもいい」と寛容な思いを語っていく。

 

TVドラマの助監督時代をしていた大山監督を知っている渡辺さんは「『長編映画を撮るので、出てくれませんか?』と口説かれたのが、4年前」と振り返り「素性が分からない男を演じる遠山君を取り調べるシーンで、非常にとぼけた演技をしており、おもしろい役者がいるもんだな」と感心ことを明かす。「僕は知らなかった。あぁいう役者がいるんだね」と大山監督に伝え、ニコニコしながら「僕の劇団の役者です」と云われ、劇団の芝居も見に行くようになった。親交を深めていく中で本作に誘われ「大山君は能力があるのは分かっていたし、遠山君が主演なら、出演しよう」と思い、台本が全くない状態で引き受ける。初めてのインディーズ映画に出演、3年前に撮影し公開迄の様々な苦労を経ており「まだこの映画と付き合っている。この映画に自分が助けられていることもあり、現在の状況下で役者としてどうしたらいいんだろう、という時に、この映画に支えられている」と実感。「不思議な映画で観る度に印象が変わる。一言で説明しづらい映画だと思いますが、何か心にひっかかるモノがあれば、友人等に伝えて頂ければ嬉しいかな」と素直な気持ちを伝えた。

 

主演の親子には実際のモデルが存在し、榎本さんは「お互いが親子であることを知らずに教会で出会い、その後に父親が亡くなり、様々なエピソードがありました」と説く。「全体的なモデルがあるとはいえ、犯罪行為はフィクションで作らせてもらっています」と踏まえながら「実際の親子は仲が良かったんだよね。監督が経験したエピソードも盛り込んでいます。実話がモチーフになりながら、ジャンルが分からない映画。シリアスなシーンがあったりコメディがあったり。ノンフィクション映画に近い」と本作の印象を語っていく。

 

映画が好きで俳優を志した遠山さんは、藻掻きながらも本作を企画した。構想から6年以上の時間がかかっており「テアトル梅田で舞台挨拶をさせて頂けることは貴重な機会。僕はこの映画に懸けているので、日本全国の映画館を回りながら地道に宣伝しています」とまだまだ苦労の日々を歩んでいる。本作のエンドロールには、長野県飯田市やクラウドファンディングで投資頂いた人たちの名前も含めて掲載されており「最後に”伊藤茂雄さん、こいけけいこさんと共に”という言葉を添えています。6年という時間がかかり、この映画で重要な人達がいなくなってしまうことがありました。特に二人は僕の映画の恩人です」と紹介。伊藤茂雄さんについて「いなくてはならないひと。この人がいなかったら映画が撮れなかった。完成した日に亡くなってしまった。伊藤さんの思いを載せたかった」と話し、こいけけいこさんについて「僕の彼女役で出演して頂いた。飯田市出身の女優。彼女の友人が訪ねてきて、彼女の故郷で撮る映画だと聞き女優として生きた証を残してほしい、とお願いされて、友人の積極的な姿に心を打たれて映画にとって重要な役への起用を監督に相談しました。映画が公開される前に亡くなってしまった」と明かした。「僕といっけいさんによる親子という役は、後悔が残る描き方をしています。監督自身も最後のシーンには自らのエピソードを基にしています。でも、お世話になった人に観てもらうことが出来なくて、自分の力がなく時間がかかってしまった」と後悔しており「僕自身はもう後悔はしたくないです」と吐露していく。

 

最後に、渡辺さんは「大変な状況の中、この映画をチョイスして下さったことを感謝しております。これからも僕らは役者や監督を続けていきます。この映画が糧になることを祈っております。本当にありがとうございました」と感謝の言葉を伝え、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『いつくしみふかき』は、関西では、大阪・梅田のテアトル梅田と泉南のイオンシネマりんくう泉南で公開中。また、8月8日(土)より神戸・新開地の神戸アートビレッジセンター、8月21日(金)より京都・九条の京都みなみ会館で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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