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軸をぶらさず徹底的に容赦なく作り上げた…!『ダウンレンジ』関西公開、北村龍平監督に聞く!

2018年9月22日

広大な山道で「何か」により銃撃の標的にされた大学生6人の恐怖を描くソリッドシチュエーションスリラー『ダウンレンジ』が、9月22日(土)より、大阪・十三の第七藝術劇場で公開中。今回、本作を手掛けた北村龍平監督にインタビューを行った。

 

映画『ダウンレンジ』は、北村龍平監督が、広野に取り残された車の中で、見えない相手に追い詰められていく人間たちの恐怖を描いたシチュエーションスリラー。6人の大学生が相乗りした車が広大な山道を横断中、タイヤがパンクしてしまう。タイヤ交換のため車を降りた男子学生は、パンクがアクシデントではなく、銃撃を受けたせいであることに気づく。しかし、すでにその時、6人は「何か」の標的になっており……。

 

北村龍平監督は、インディペンデント映画出身、『VERSUS』が世界に認められ『あずみ』、『ゴジラ FINAL WARS』から、ハリウッドへとキャリアを歩んできた。大作映画の監督として知られているが「やっていることの本質は変わらない。映画監督の仕事は、コンパスの中心となる針のようなもの」だと述べる。最初の作品では3人、『DOWN TO HELL』では6人で作り、『VERSUS』では100人が関わった。だが、あくまで中心点であり「円が次第に大きくなっても、やっていることは変わらない」意識で作品を作っている。

 

2年以上全力投球した前作『ルパン三世』のようなメジャーのフランチャイズ作品になると、原作やスターの存在など、自分以外の要素も多い。その中でどれだけ自分の個性を発揮できるのか?それはそれでチャレンジのしがいがあるのだが、アメリカに帰った時、次に何をやろうか、というタイミングで「原点に戻ることをやろう」と決断。つまり「自分自身以外の要素があまりないものを作りたい」と意を決した。自主映画では何の看板も背負わず、純粋に自身と仲間しかいない。それでも「勝てる自信がある。なぜなら『VERSUS』がそうだった。原点に戻ってやりたい放題やってやろう」と意気込み、『ダウンレンジ』に取り組んだ。

 

そこで、本作の出演者は、全てオーディションで選考。北村監督は「その人物が、15年しか生きてなかろうが、4,50年生きていようが、関係ない。どういう生き様を背負ってきたのか、滲み出るような俳優が好きなんですよね」と語る。プロでも学生でも、演技の勉強をしていれば技術的に相応のことは出来るなかで「優劣をつけるより、会った瞬間、人間性にビビッときた人を昔からキャスティングしている」と明かす。結果的に、1万人以上からメインの6人を選んだ。

 

ソリッドシチュエーションスリラーとして作られた本作は、極限の緊張感が続き、観客にも容赦しない。制作にあたり、北村監督は「低予算でインディペンデントでやるならば、徹底的に突き抜けた一点突破の作品にしたほうが勝ち目がある」と考えている。それが『VERSUS』だった。脚本執筆中は、誰も相手にしてくれなかったが、徹底的にやりきった結果、「好き嫌いはあるだろうが、好きな人の方が上回ったから、20年近く経ても未だに世界中で愛されている」と証明してきた。万人受けしようと角を取り続け、平均値で大多数を狙う作り方はあるが「原点回帰し、インディペンデント体制で作る時は、一点突破でやる方がきっと勝てる」と考え「最初から妥協せず徹底的に容赦なく作る」と決断。そこで「作りの意図や話の骨格は極めてシンプルでミニマルにして、極限のテンションをどこまで描けるか」に賭けた。

 

なお、本作は極力CGに頼らずアナログで撮影されている。北村監督はCGについて「この2,30年で相当良くなっているが、まだまだ過渡期。今最先端だと思っても、2,3年したら古臭く見えてしまうし、安易にCGに頼ってもチープに見えるだけ」と受け止め、タイムレスなものにしたかった。特殊メイクで描かれている1970,80年代のホラー映画は「今観ても凄さがあり、アナログで肉体的な感じがする気がする」と説く。今回は敢えてCGを多用せず「極力昔ながらのやり方で作る。好きな人にとっては、10年後に観てもそんなに古臭く感じない映画になった」と自信がある。

 

エンターテインメント作品である本作は、大学生達が得体の知れないスナイパーに狙われていく。北村監督と脚本家は死そのものを象徴しているキャラクターとして描いた。北村監督は「人間誰しもいつ死ぬかなんて分からない。死に方だって選べない。突然の事故で死ぬかもしれないし、癌になるかもしれないし、地震で死ぬかもしれない。死に対する恐怖感はいつもある」と述べる。映画というエンターテインメントに置き換え、何が怖いかと考えた時に「戦いようもどうしようもなく、見えないところから撃たれたり、見えたとしても遠過ぎたりして、隠れるか逃げるしか出来なかった時、それでもどうやって足掻こうとするのか」が興味深く、それら含めて全て集約され、スナイパーが出来上がった。

 

ここで、昨今のアクション映画について北村監督に聞いてみると「僕は未だに韓国映画『アジョシ』」だと挙げる。公開当時、過去20年の映画でこの作品が一番好きだ、と言っており「意外と今も変わらない。本当に素晴らしい映画」だと絶賛。その理由について「アクションシーンも素晴らしいし、立ち回りのデザインも素晴らしければ、撮り方も素晴らしい。何より映画として素晴らしい」と挙げ「戦わざるを得ない状況に向かわせるキャラクターのエモーションや人間関係の描き方、それらが爆発する瞬間も含め、見事に表現している映画は滅多にない」と語る。

 

『ダウンレンジ』と2018年制作のオムニバス映画『ナイトメアシネマ』で、北村監督は血みどろ作品はやりきったと感じ「次は、自分の一番得意なリングに戻りたい。それはアクション」だと告白。自身の作品を振り返り「本当のアクション映画らしい作品は随分と作っていない。毎回何かしらのアクションシーンはあっても、『VERSUS』『あずみ』『荒神』のような全力でのアクション映画は15年程度やっていない」ことについて、おかしいと思うようになった。現在動いている企画の多くはアクションであり「ハリウッドやアジアで制作する作品もあり、どれもぶっちぎった内容にしようと思います」と目を輝かせている。

 

映画『ダウンレンジ』は、は、9月22日(土)より、大阪・十三の第七藝術劇場で公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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