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頑固な老人とブラジル娘が手紙で交流深める『ぶあいそうな手紙』が関西の劇場でもいよいよ公開!

2020年7月27日

(C)CASA DE CINEMA DE PORTO ALEGRE 2019

 

視力を失いつつある老人と手紙の代読と代筆を担う娘の交流を描く『ぶあいそうな手紙』が7月31日(金)より関西の劇場でも公開される。

 

映画『ぶあいそうな手紙』は、手紙の代読と代筆を通して交流を深めていく老人と娘の姿を、おかしくも温かく描いたブラジル発のハートウォーミングストーリー。ブラジル南部のポルトアレグレに暮らす78歳のエルネスト。隣国ウルグアイからブラジルにやって来て46年になるエルネストは、頑固で融通がきかず、うんちく好きの独居老人だ。老境を迎え、視力をほとんど失ってしまったため大好きな読書もままならなくなってしまった彼のもとに一通の手紙が届く。手紙の差出人はウルグアイ時代の友人の妻だった。手紙が読めないエルネストは、偶然知り合ったブラジル娘のビアに手紙を読んでくれるように頼む。手紙の代読と手紙の代筆のため、ビアがエルネストの部屋に出入りするようになるが…

 

本作では、主人公エルネスト役をウルグアイ映画『ウィスキー』に主演した名優ホルヘ・ボラーニが演じる。ブラジル・サンパウロ国際映画祭批評家賞、ウルグアイ・プンタデルエステ国際映画祭では観客賞と最優秀男優賞を受賞。

 

(C)CASA DE CINEMA DE PORTO ALEGRE 2019

 

映画『ぶあいそうな手紙』は、関西では7月31日(金)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、京都・烏丸の京都シネマ、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。

 

78歳、一人暮らし、目が衰えてきて日常に支障が出てきた主人公のエルネスト。友人の訃報の知らせで本作は幕を上げる。大切な友人からの手紙が来たが、文字が読めない。さて、どうやって手紙を読もうかとまごついているうちに訳ありの女性ビアと出会う。エルダリー・ミーツ・ガール物語であり、老人と若者の一風変わった交流が描かれる。その風景には新しい風が、老いた体に入り込む心地よさ、知らなかった知識に触れる面白さを垣間見ていく。

 

エルネストは元カメラマンだがもはや面影は全く見受けられない。愛想が無く、友達も僅か。だが、付き合いの長い友人を大切にしている。詩に造詣があり、教養深く、おまけに人の良いところを直ぐに見つけ、実はとても優しい人。紹介文を幾らでも書きたくなるほど、主人公に対する人物描写が豊かな映画に出会えたのは久しぶりだ。対して、エルネストを良い方向へと導くビアは、彼とは対照的な人物として描かれていることにも好印象。だからなのか、テーブルマナーなど互いの比較が顕著に出ているシーンが特に印象的だった。

 

「彼女がお前の面倒を見てくれるっていうのか?」など、ストーリーを観ている側が疑問に感じることをキャラクターがしっかり言ってくれるので、スッキリとする。隣人のハビエルが言う「(ビアに対し)良い女じゃないか!」には、現代にはそぐわない価値観だと感じたが、彼らの世代を上手く一言で体現しているという見方をすると、よく練られたダイアローグだ。

 

”老い”をテーマにしているからこそ、ちょっとした笑いも効いており、ハビエルとのチェスのシーンは笑みが自然とこぼれていく。何度も言われる「気をつけなさい」「あなたは優しすぎる」はエルネストを通して観ている私達に言いたかったように聞こえた。言無愛想だが徹底的に良い人として描かれていたので、こちらが心配してしまうほどの存在だ。不器用だが、彼なりに人の手を借りて努力し、勇気を携えて自身の足で前へ進む。こういう形の友情が描かれる映画があるなら、もっと沢山観たい、と感じさせてくれる素敵な映画だ。“抒情詩テロ”なる集団で交わされる「自然は我々を人間的な多様性と呼ぶ」の一言は現代的であり、しかと胸に留めておきたい。

from君山

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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