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自らの苦しみよりも相手の苦しみを考えて動いた時に自分が強くなっていた…『君がいる、いた、そんな時。』迫田公介監督迎え舞台挨拶開催!

2020年7月24日

出身国の違う両親を持つ小学6年生でハーフの男の子と、同じクラスの浮いている男の子のふたりに対して、唯一優しく接する図書室の新任司書が織り成す物語を描く『君がいる、いた、そんな時。』が7月24日(金)より関西の劇場でも公開。初日には、大阪・梅田のテアトル梅田に迫田公介監督を迎え、舞台挨拶が行われた。

 

映画『君がいる、いた、そんな時。』は、2人の小学生と彼らに慕われる図書室司書の女性が不器用に生きる姿を描いた、広島県呉市でオールロケを敢行したハートウォーミングドラマ。小学6年生の岸本正哉はフィリピン人と日本人の両親のもとに生まれ、クラスのいじめっ子たちから「ガイジン」などとちょっかいを受けている。正哉はその状況をしかたないと諦め、イヤではありながら抵抗することなくやり過ごしていた。そんな正哉のよりどころは、やさしく見守ってくれる新任司書の山崎祥子と過ごす図書室だけだった。同じクラスの放送委員の香山涼太は「DJカヤマ」と名乗り校内放送をしていたが、いつも空回りしてクラスの中でも浮いている存在だった。涼太は自身が企画するある特別放送に2人を巻き込もうとする。正哉は乗り気でなかったが、祥子は涼太の企画を手伝うという。そんな祥子にはある秘密があった。

 

満員御礼状態の中での上映後に迫田監督が登壇。現在の状況を鑑みながら「しんどい状況ですよね。苦しい状況が続いている中、この映画も苦しみやままならないことを作中では3人とも何も解決してなくて。状況は変わっていないんですが、彼等が自分の苦しみよりも相手の苦しみを考えて動いた時に自分が強くなっていた。だけど、罪や不道徳なことや苦しみを抱えながら、それでも生きていく話です」と本作を説明しながら、舞台挨拶が始まった。

 

広島県呉市で撮影された本作。呉市で5月29日に先行公開が始まり、6月13日に東京、そして名古屋へと順次公開しており、今回が初の満席御礼となり、感謝の言葉を伝えていく。「緊急事態宣言が明けた後、テアトル梅田での初めての舞台挨拶であり、スクリーン1で初めての満席。6月19日に名古屋のセンチュリーシネマで公開し劇場での初めての舞台挨拶をさせて頂いた。僕の履歴書にずっと書いていこうかな」と機嫌が良く「舞台挨拶については様々な考え方が地域によって違う。ギリギリの状況での判断があり、劇場様にご協力頂きながら難しい状況が続いました」と振り返る。しかし、映画監督であることを自認しながらも「僕は映画至上主義ではない。映画が優先されるべきとは思っていない。そもそも人が生まれて社会が出来て文化が生まれた中の一つが映画」と冷静であり「今は様々な方が苦しんでいるなかで『良い映画を入れて頂けたらな』と思っている。自分だけが苦しい状況ではない。お互いにどんな立場の人も苦しみながら、なんとか過ごしていく方がポジティブなんじゃないかな」と提案。現在の状況になる前から「だからこそ、こういう映画になったのかな。何かが変わったわけではない」と考えており「映画は、日常と違ったところに思いを馳せられるから良い。全てがポジティブでハッピーな映画ではないですが、自分とは違うところに行くことは気持ち良かったりするんじゃないかな。ご自分の生活を大事にされながら、そういうことに目を向けて頂くと気持ちよく生活できるお手伝いが出来るかな」と気遣っていく。

 

2年前に広島県呉市で撮影した当時、現地は豪雨災害で大きな被害を受けていた。ロケ地は無事だったが、撮影は半月ずらして地元の方々に御協力頂いている。撮影では、1クラス分のクラスメイトを地元の子供達にエキストラとして参加してもらっており「親御さんからスタッフに『豪雨災害の後に遊び回ることが憚られる中で参加出来て嬉しかった』と声をかけて頂いた」と印象に残っており「僕は目の前のお客様に感動して頂きたくて作っています。結局は、そういうことになんだ」と当時を振り返る。また、現在の状況において、STAY HOMEによってDVが増えたり、著名人が亡くなったことにショックを受けたりしていることを鑑み、山口県萩市の萩ツインシネマで、居場所について考える「第1回 ibasho 映画祭 」を開催。本作の上映に加えてシンポジウムも実施した。迫田監督は「僕は社交的でもなく器用でもないです。でも、社会にコミットしていくことになったんだなぁ」と謙遜しながらも「映画は人の役に立って社会にシンクロしていくこともあるんだな」と誇りに感じている。

 

本作について「皆さんの傍に少しでも長い間居てくれたら嬉しいな」と願っており「もしかしたら、こういう器用じゃない方も割といるかもしれない。器用に見える人も実は不器用なところを抱えている。やろうと思っていることが傍から見たら変だけど、その人はそれでも…そういう人にも届けたい」と涙ながらに伝えていく。そして「誰かと出会って何かが起きることを映画では描いています。映画が自分の生活や社会や人にコミットして繋がっていく。疲れが癒えて何かしたい時にこの映画が役に立ってもらえたらな」と思いを込め、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『君がいる、いた、そんな時。』は、大阪・梅田のテアトル梅田で公開中。また、8月14日(金)より京都・九条の京都みなみ会館でも公開予定。

 

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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