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川瀬陽太さんは新たな視点を与えてくれる…『おっさんのケーフェイ』谷口恒平監督と空牙さんに聞く!

2019年3月20日

謎のおっさん覆面プロレスラーと、プロレスと出会い、生まれて初めて夢中になれるものをみつけた少年の交流の日々が綴られる『おっさんのケーフェイ』が、関西の劇場でも3月22日(金)より公開される。今回、本作を手掛けた谷口恒平監督と空牙さんにインタビューを行った。

 

映画『おっさんのケーフェイ』は、バイプレイヤーとして数多くの作品に出演する川瀬陽太の主演で、小学生と自称プロレスラーの中年男によるプロレスを通じた交流を軸に、嘘と本当が混ざり合う瞬間を描いたコメディ。将来の夢や夢中になれるものが何もない小学生のヒロトは、放課後を冴えない仲間たちと河川敷で過ごしているが、その対岸には酔っ払いながらプロレスごっこをする坂田という中年男がいた。そんなある日、たまたま観戦した覆面レスラー・ダイナマイトウルフの試合に感銘を受け、今までに感じたことのない興奮を覚えたヒロト。その帰り道、中学生に絡まれているところを、通りかかった坂田にプロレス技で助けられ、坂田の手にマスクが握られていたことから、ヒロトはダイナマイトウルフの正体は坂田ではないかと考えるようになり……

 

学生時代に『あの娘はサブカルチャーが好き』(MOOSIC LAB 2013に参加)を撮り終えた後、助監督やメイキングの仕事に携わっていた。今までは、自身でカメラを持ち、周りに向けることが好きでやっていたが、映画作りの現場を近くで見るようになり「皆で映画を作り上げていくこと、監督のエゴだけではない部分で創り上げていくものに興味が惹かれた」と変化し、一段階上のレベルで創作意欲が湧いていく。谷口監督自身は、リアルとフェイクの間にあるものに惹かれ、ずっと描きたかった。長編デビュー作となった今作は劇映画として作っているが「題材自体はずっと一貫して作っている」と話す。子供達の演技やプロレスシーンのアクションに対し「お客さんのリアクションも含め、実際に目の前で起きているドキュメンタリーと同じ要素が入っている。演じる川瀬さんの思いも入り、自分の中では一貫している」と説く。とはいえ、プロレスへの深い思い入れがなかった谷口監督は、試合を生で見たのは映画撮影直前。10年前にマッスル坂井さんの興行「マッスルハウス」をDVDで観て感銘を受けたことが大きい。「映画やTV等ジャンル拘りなく観てきたので、特殊な演劇チックのプロレスを観て、印象に残っていた」と当時を振り返る。元々、ヤラセの心霊ビデオを作る過程を描いたコメディを企画していたが、行き詰っていた。頭の中で考えた企画はおもしろく感じていたが「映画として物語にしようとすると、目で見える部分で映画としての動きを作りにくかった」と断念。だが、プロレスを題材にすることを思いつき、テーマは一貫したままモチーフとして作品に取り込んでいった。

 

タイトルにある「ケーフェイ」の意味について、映画ではあえて解説されない。意味を断定できない言葉であり、様々なニュアンスが含まれており、使う人によっては批判的にも肯定的にも用いられる。「言葉自体のあやふやさも含めて、映画にしたい気持ちがあった」と明かす。これまで作ってきた心霊ビデオについて、流通している時には「本当にあった~」と謳っているが「僕が脚本を書いて役者さんに演出してつくったものが”本当にあった~”と云っている」と”ケーフェイ”に通ずるものがある。プロレスについても「ロープに振られて返ってきて…ということは、本当に相手を倒そうと思っている2人が今から相手を倒すことだけを考えて向き合った時、六角で組み合うことがまずない。だからといって、真剣勝負でないかといえば、プロレスを通した勝負魂があり、リアルがある」と分析した。心霊ビデオと映画は同じニュアンスがあり「お客さんが観て楽しむことを考えてやっている。その中には、内側の人間でしかわからないライブ感がある」と踏まえ、言葉に出来ないものを象徴する言葉として、ケーフェイというプロレスラーの隠語を使っている。プロレスの試合シーンは作中では多くないが、映画全体を通して、プロレスの世界観を伝えたい映画として作り上げた。

 

プロレスの撮影について、空牙さんは「自分以上にダイナマイトウルフ役の赤城さんの方が大変だったかな。同じ技を何度も取り組んでいたので」と謙遜する。だが、赤城さんは撮影中に骨折しており、2人とも「笑い事ではないですけど…」と冷静に話す。谷口監督は申し訳ない気持ちで「撮影中に折れたのがわかりました。自分も心苦しいですが、最終的には赤城さんが”やる!”と」と明かした。空牙さんの場合は「『場外に飛ぶ技を、もう1回お願いします』と言われたら、またテンション上げるのは大変ですよね」と共感を求める。これを受け、谷口監督は「頭から挑んでいるので、本当に凄いですよね。どうしてもリングの中に入って1つ1つの動きをカットに割って見せたかった。一連の試合の動きをリングの外から撮ることもできたが、そこは主人公が初めて観た時に感じる心の高まりの瞬間を、劇場のお客さんにも同じ気持ちにさせたい」と訴えた。本作をきっかけに道頓堀プロレスを初めて生で観て衝撃を受けており「スクリーンを通した映画にはなるが、プロレス会場に足を踏み入れて目の前でこれが繰り広げられているんだと伝えるために、カメラも近づいて汗が飛んでくるほどの距離から撮りたかった」と並々ならぬ熱意を以て撮影。「細かく何度も同じ動きをやってもらった。場内のお客さんもその都度テンションを挙げて応援してもらう必要があった」と苦労している。空牙さんも道場で流れを作り込んだ上で本番に挑んでおり、レスラーのアクションを目の当たりにしている谷口監督は、試合で観た取り組みの実演を要望。「観たいものが目の前で次々と出来ていく。映画は全て嘘の集積だが、積み重なっていき『用意スタート!』と僕が言ったら始まり、カットをかけるまで皆が続ける。200人の観衆が盛り上がり、目の前で試合が次々に進み、プロレスの試合をやっている中に自分がいきなりリングの上に瞬間移動したような感覚になった」と興奮。撮影を終え「自分が映画で撮りたかった最高の瞬間。撮影最終日、この高揚感を味わいたくて映画と撮り続けているんだな」と気づいた。

 

主演の川瀬陽太さんは、かつて一度だけ谷口監督の作品『オリーブハウスvs世界』(未完成作品)に出演したことがある。「なんで僕の映画に出てくれたんですか」と撮影後に聞くと「スケジュールが空いてたからだよ」と云われた。その瞬間に「信頼出来る人だな」だと実感する。「今までの自主映画では熱意を伝え、共感してくれた人が映画に集まっていた。そういう美しさもあると思うが、川瀬さんの関わり方はそういうことではなく、オファーが来て、スケジュールがOKであれば、対価を頂けたらやります、というプロの姿勢だった」と受けとめた。また、プロ意識を以て役者と向き合わないといけない、と自覚も芽生えていく。現在では「どうしても若手監督達が川瀬さんをキャスティングする時に、その辺りで学ぶことが多いんじゃないかな」と考えている。川瀬さんについて「一緒に映画を作るという感覚でいてくれる人ではある。さらに、プロとしてお互いにものを作るという意識を芽生えさせてくれる。監督のいうことを素直に聞く人ではないので、話していって納得するラインを二人で見つける。現場でおもしろい視点を与えてくれる」と大いに尊敬の念を絶やしていない。

 

映画初出演の空牙さんは、河川敷や道場でのプロレスを監修を手掛けており演技を提案した。川瀬さんがプロレスを愛しており「こっちが逆にのせられるぐらいにプロレスに取り組んでくれた。やっていて、気持ちよく、嬉しかった。中途半端ではない」と太鼓判を押す。撮影前、川瀬さんは、元レスラーという設定に「俺がこの役をやっていいのか」と躊躇していた。真摯な姿勢を見た谷口監督は「オファーが来たら応えてくれる人だが、それでも、躊躇するぐらいプロレスに思い入れがあり、レスラーに対するリスペクトがあるからこそ、簡単にできるものではない」と実感。「感覚が真っ当であり、映画をまつりあげていない。映画で世界が変えられる、映画に出演することが偉い、という意識ではない方。大人の視点が常にある」とも捉えている。自身について「映画を作っている時は、視野が狭くなり子供っぽくなる。映画は監督一人で作るものではない。僕は自分で作った物語に人をはめ込んでしまう。出演者にとっては納得がいかない部分が出てきてしまう」と顧みており「川瀬さんは、自分の自我ではないところで意見を言ったり話せたり出来る人」だと称えた。

 

次回作はピンク映画の監督を予定している。『』を観て、気に入って頂きオファーを受けた。ジャンルの異なった作品にはなるが「自分の中ではテーマとしては近い。セックスの中にも演技の要素があり、役割を演じていり。気持ちいいふりをしたり、強かったり弱かったりするふりをしたりすることがあるけど、細かく言わない」と、惹かれる部分がある。「どれが真実か、と求めるより、自分の中でのリアリティを皆それぞれが持って判断すればいいんじゃないか」と感じ、興味深いテーマになりそうだ。今後も多様なジャンルの作品を期待したい。

映画『おっさんのケーフェイ』は、3月22日(金)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、4月6日(土)より、京都・出町柳の出町座で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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