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アヴァンギャルドなドキュメンタリーを世に放つ…!『i-新聞記者ドキュメント-』森達也監督に聞く!

2019年11月20日

納得できる答えを得るまで同じ質問を重ね、官邸側にしばし疎まれる東京新聞社会部記者の望月衣塑子さんの姿や周囲の対応を通して、ジャーナリズムとメディアの意味を問う『i-新聞記者ドキュメント-』が全国の劇場で上映中。いよいよ公開を迎えた今回、森達也監督にインタビューを行った。

 

映画『i-新聞記者ドキュメント-』は、映画「新聞記者」の原案者としても話題を集めた望月衣塑子さんを追った社会派ドキュメンタリー。森達也監督が、新聞記者としての取材活動を展開する望月さんの姿を通して、日本の報道の問題点、日本の社会全体が抱えている同調圧力や忖度の実態に肉迫していく。

 

本作では、森監督からのメッセージが具体的に提示されている。その表現方法は、近年のマイケル・ムーア監督作品とも近しい。森監督自身は、マイケル・ムーア監督作品を大体観ており「特に『ロジャー&ミー』は評価します。資本主義経済へのメタファー(暗喩)もしっかりと機能している。でもその後の作品は、ちょっとストレートになり過ぎていることが不満です」と話す。

 

撮影は200時間に及び、その膨大な映像を二時間弱の作品に編集している。今回、これまでの作品における編集とは少しだけ違っており「今までの作品は淡々とした展開で、テロップや音楽は最小限にしている。今回は、作品に対して効果的で意味があるなら、音楽を使用し、テロップも出し惜しみする必要はない。だが、テレビのように、必要のない箇所に付ける必要はない」と考え、臨機応変に、そして何よりもエンタメ性を意識しながら編集した。音楽は、『新聞記者』の主題歌を担当したOAUのMARTINさんが手掛けている。ストックしている楽曲を全部聴かしてもらい、イメージが合った作品に対しアレンジの要望を出して観客の感情を揺さぶる仕上りとなった。結果的にかつてないアヴァンギャルドな森監督作品として出来上がっている。

 

望月さんと菅官房長官の対峙が大きく取り上げられている本作だが、森監督は、人間の多面性と向き合っていく。自身についても「ある視点から見れば嫌な人間でしょう。だけど、違う視点を以て見れば善人に見えるかもしれない」と考えており「菅さんだって、記者会見では”クソジジイ”に見えるけど、家に帰ると、孫にとっては良いおじいちゃん。誰だってそうですよ」と捉えていた。今作では、菅官房長官の定例記者会見での撮影を試みようと果敢に挑んでいるが、そのプロセスは大変だ。もし監督のカメラが入ることが出来たら「望月さんが質問している時、他の記者達がどのような顔をしていたか撮りたかった」と話す。記者会見の外で記者達を撮影する方法も考えられるが「外で撮っても意味がない。たとえ撮影したとしても、どんな受け答えをするのか想像がつく」と述べていく。

 

森監督の代表的な作品として、オウム真理教に迫った『A』『A2』がある。さらなる続編にも期待したいが「今の姿を撮った作品の在り方が難しい」と話す。現在のアレフも含め「今撮ってもメタファーにならない。『A』『A2』の頃は、オウム真理教の存在が日本社会の合わせ鏡になったけど、今、彼らを撮ってもメタファーの機能を果たせない」と鑑みていた。また、今度、ドキュメンタリーではなく「ドラマを撮りたい」と検討している。2017年には、テレビ東京でホラードラマ『デッドストック~未知への挑戦~』の最終話を監督し出演しており「実験的なホラードラマを撮りたい」とチャレンジ精神は尽きない。

 

映画『i-新聞記者ドキュメント-』は、大阪・十三の第七藝術劇場シアターセブン、京都・烏丸の京都シネマをはじめ、全国の劇場で上映中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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