自宅で最期を迎えることを希望する父親と、看取ることを決意した母親の姿を追った『あなたのおみとり』がいよいよ関西の劇場でも公開!
©EIGA no MURA
末期がんで入退院を繰り返す父親の“うちに帰りたい”という言葉によって、自宅で看取ることを決意した母親がヘルパー、訪問看護師と共に、丁寧に父親の看病を行う日々を、40日間あまりに渡って記録し続けた『あなたのおみとり』が9月27日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『あなたのおみとり』は、『東京干潟』『蟹の惑星』で新藤兼人賞金賞、文化庁優秀記録映画賞を受賞するなど高い評価を受けたドキュメンタリー映画監督の村上浩康さんが、自宅での最期を希望した父と看取りを決意した母の日々を見つめたドキュメンタリー。末期ガンで入退院を繰り返していた91歳の父である村上壮さんの「家に帰りたい」という言葉を受け、86歳の母である幸子さんは自宅での看取りを決意した。介護ベッドを置き、ヘルパーや訪問看護師が出入りする生活が始まるなか、ベッドから動けない父は何かと世話を焼く母に「ありがとう」と言うようになり、母はできる限り父の近くで時間を過ごすように。徐々に食事を摂れなくなり目をつむる時間も増えていく父と、持病の悪化により自身の健康にも不安を抱える母。介護生活を続ける両親と積極的に関わりたいとの思いからカメラを回し始めた村上監督が、老老介護やオレオレ詐欺といった高齢者を取り巻く社会問題や、花や虫など様々な命の姿を盛り込みながら、40日あまりにわたる両親の最後の日々を映し出す。
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映画『あなたのおみとり』は、関西では、9月27日(金)より京都・烏丸の京都シネマ、9月28日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場、10月5日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。
『東京干潟』『蟹の惑星』が話題になった村上浩康監督が、自身の両親に関する老老介護からお看取りまでをドキュメンタリー作品にする…それは、どうしても気になってしまう。介護に関する作品は、これまでにもいくつか製作されているが、自身の両親を撮ることにより、淡々としながらも丁寧に作り上げたことで、人間の尊さが伝わってくる作品はそうそうない。末期がんの夫を改めて自宅に迎え入れ、ケアマネージャー、訪問診察医、訪問看護師、訪問介護士、薬剤師、訪問入浴介護サービスといった様々な方々のお世話になっていく。介護サービスについて様々な話を見聞きするが、改めて多くの方々が関わっていくことを認識させられた。だが、自宅に戻れば、日常にある社会と接することとなり、特殊詐欺の電話がかかってくることまで伝えられるとは…本作に時折挟み込まれる社会問題にはドキッとさせられるばかりだ。とはいえ、あくまで本題は父親を介護し、最後まで看取ることが本題である。避けられない現実と真摯に向き合っている姿を見ながら、自身の祖父母の最期を思い返していた。人それぞれに最期があり、お世話についても様々であることを改めて考えさせられる良作である。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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