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1枚皮を捲ったところにある景色を見せたい!『ヴィジランテ』入江悠監督を迎えアフタートークショー開催!

2018年6月10日

地方都市の闇社会で生きる男達の葛藤と衝突を描いた『ビジランテ』が大阪・十三のシアターセブンで上映中。6月10日(日)には本作を手がけた入江悠監督を迎えてトークショーが開催された。

 

映画『ビジランテ』は、入江監督の地元である埼玉県深谷を舞台に地方都市特有の暗部を描いていく。高校時代に行方をくらました長男の一郎、市議会議員を務める次男の二郎、デリヘルの雇われ店長をしている三男の三郎。三兄弟はまったく世界の異なるそれぞれの道を生きてきた。兄弟の父親が亡くなり、失踪していた一郎が30年ぶりに突然帰ってきたことにより、三兄弟の運命が交じり合い、欲望や野心、プライドがぶつかり合う中で、三兄弟を取り巻く事態は凄惨な方向へと動いていく…

 

本編上映後に入江悠監督が登壇。入江監督は『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』を第七藝術劇場で上映して以来6年振りに十三を訪れ、嬉しそうに挨拶する。

 

『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』以来、入江監督はオリジナル作品を撮っておらず、メジャーの映画会社からオファーを頂いて撮ってきた。『22年目の告白 私が殺人犯です』がある事情で撮影が1年延期となり、空白時間が出来て「オリジナル作品の脚本を書かなきゃまずいな」と気づく。本作の脚本を書き終え「こんな題材をどこの映画会社が受け入れてくれるか分からなかった。東映ビデオに持ち込み、興味を持ってもらいOKが出た」と一安心。撮影について、当初は2週間と言われたが、夜のシーンやアクションも多いので、交渉を経て大変ながらも3週間で撮影。キャストやスタッフはほぼ徹夜が続き、朝が近くなるとカーテンで遮光して撮ったことも明かす。

 

主要キャストのうち、大森南朋さんとは時代劇『ふたがしら』で携わり「いつかは映画でご一緒したいですね」と言っていた。本作の脚本に関して全体像が判明していたので「説明がなくとも存在感とオーラが伝わる長男といえば、大森さん」と思い浮かび、オファーしすぐに決まる。次男役の鈴木浩介さんとは初めてだったが「バラエティや舞台への出演が多い方。映画は多く出られていない。とぼけて飄々とした次男に向いているかもしれない」と感じオファー。実際に演じてもらうと「したたかさがあり、勘が良い」と最適だった。桐谷健太さんは一番最初に決まり「三男は正義感を持って自分が正しいと思ったことを突き進んでいく。僕と同い年ぐらいの俳優には滅多にいない」と豪語する。篠田麻里子さんの起用にあたり「これからの女優さんや俳優さんは好き。一度会って話したら女優をやりたい気持ちが伝わってきた。演技の経験値がないことを自覚していたので、クランクインまでにリハーサルを十分に行った」と明かし「保守的な地方都市はレールから外れると、街中では変わり者扱いになる。人間関係が狭く凝縮されている地域に嫁いでしまい、権力ゲームの中で活きるか」と賭けてみた。吉村界人さんについては「オーディションで良かった。部屋に入った時からオーラを持っており、この人しかいない」と別格の存在感に太鼓判を押す。

 

地方都市の政治を扱った本作について、入江監督は「オリジナル脚本を書いていると、自分のルーツである地方都市が原点となり、政治の話が関わってくる。大阪や東京では街の規模が大き過ぎ、政治や社会の話が地区ごとに変わる。地方都市は見えやすく、零れ落ちたら終わってしまう世界」だと捉え、社会の形成について興味がある。なお、本作では、暗く出口の無さで終わりを迎え、最後の突破口は用意されない。アメリカ映画で育った影響を受け「1枚皮を捲ったところにある景色を見せたい。綺麗ごとだけではない」と訴える。また、駄目男の中で、女性が唯一の正しさを持つように描かれているが「男兄弟に加え、男子校で育ったので、女性の方が強い」と女性の描き方を解説。デリヘル嬢を描くにあたり「取材したが、興味深い。お金を含め様々なモチベーションを持っており、そういう仕事をすることが好きな女性もいる。多様性がある」と逞しさを感じた。三郎の手に箸が刺さるシーンは強烈な印象が残るが「最初からやろうとしていた。痛みが伝わってくる映画は減っている。韓国映画や北野武監督はずっとやっているが、そういうのをやりたい」と意欲的。街の人々を表現するにあたり「どのように実在感を持って立ってもらうか考える。オリジナルを書く時、街をひとつの主人公にするぐらい。今回は刺す動きを多くした」と告白。手に箸が刺さるシーンについても「その土地に縛られてしまう意味を載せて刺さってもらい、なかなか抜けない」と意図を解く。

 

映画におけるリアルについて、入江監督は「2つのリアルがある。現実世界のリアル、映画にしかないリアル。僕の映画は、映画のリアル。カンヌ受賞作は、現実にあるリアル」だと述べる。『グーニーズ』等で育った監督は「自分が昔観て感動した映画の記憶を裏切れない。現実ではそんなリアクションはしなくとも、映画のリアルがあればいい。やり過ぎだと思いつつ、リアリズムの演出の方を行い、どれだけ出来るか」と挑んできた。作品が公開して時間を経過して映画になったと感じており「脚本段階では設計図なので、俳優次第で変化する。脚本はプロセスの中では大事で比重が大きいが、未知数。撮影しながら、俳優の演技が変化していったので要らない台詞は削った」と独自の作品観を語る。今後は、女性映画的なアプローチから、等身大の女性が主人公の映画も撮りたいと意気込む。

 

映画『ビジランテ』は、6月15日(金)まで大阪・十三のシアターセブンで上映中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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