夫に離別され子供も職も失い有り金もすられた女性の姿を描くロードムービー『WANDA/ワンダ』がいよいよ関西の劇場でも公開!
(C)1970 FOUNDATION FOR FILMMAKERS
夫と別れ、子供も職も失った、一文無しの女性が、バーで出会った男と犯罪に手を染め、逃避行を繰り返す姿を描く『WANDA/ワンダ』が7月29日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『WANDA/ワンダ』は、アメリカの底辺社会の片隅に取り残された女性の姿を切実に描いたロードムービー。ペンシルベニア州のある炭鉱で、夫に離別されたワンダは、子どもも職も失い、有り金もすられてしまう。わずかなチャンスをすべて使い果たしてしまったワンダは、薄暗いバーである男と知り合う。ワンダはその傲慢な男と行動をともにし、いつの間にか犯罪の共犯者として逃避行をつづけることとなる。
本作は、1970年ベネチア国際映画祭最優秀外国映画賞を受賞した、バーバラ・ローデン監督・脚本・主演作。公開以降、アメリカではほぼ黙殺された作品だったが、2003年にイザベル・ユペールが本作の配給権を買い取りフランスで上映。2007年にオリジナルのネガフィルムが発見され、2010年にマーティン・スコセッシ監督が設立した映画保存運営組織ザ・フィルム・ファウンデーションとファッションブランドGUCCIの支援を受け、プリントが修復された。日本では、今回が初の劇場公開となる。
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映画『WANDA/ワンダ』は、関西では、7月29日(金)より大阪・梅田のテアトル梅田、8月12日(金)より京都・烏丸御池のアップリンク京都で公開。また、神戸・元町の元町映画館でも近日公開予定。
どこまでもドライで殺伐とした逃避行が淡々と続いていく。目的も生きがいもなく流れに身を任せて逃げていく何もできない女は一体どこへ向かうのか。バーバラ・ローデンが唯一作り上げた長編映画には彼女が抱いていた無力感や諦観が反映され、荒涼とした世界の一面を捉えていく。
ワンダの人生はどん詰まりだ。住む家も仕事もなく、夫からは離婚を突きつけられ、通りすがりの男にも見放され、財布も盗まれてしまう。そしてたまたま知り合ったろくでなしな男についていき、なし崩し的に銀行強盗に加担することになる。彼女は何事にも無気力で、自分で物事を決められない。自己肯定感も相手からの反応に大きく左右され、何をするにも上手くいかない。一体なぜ彼女には何もないのだろうか。
ワンダという女性に秘められた過去や背景はあまり語られない。しかし彼女はふざけた事がまかり通り、目まぐるしく変化する世界に期待するのを諦めているように見える。大小関わらず女性に対する抑圧や機会の剥奪が常識となっている世界で何ができるというのか。かといってウーマン・リブが叫ばれ、女性達が自立していく世界でも上手く立ち回れない。不器用な人間は生きるだけで精一杯で、どちらにしてもヒエラルキーの下に追いやられるのだ。それならば流れに身を任せてさすらった方がいい。ワンダの退廃的な生き様はさながらアウトローのようだ。
閉塞感が漂う現状に生きる女と訳ありな男の場当たり的でお粗末な逃避行といえばケリー・ライカートの『リバー・オブ・グラス』を思い出す。不幸続きで途方に暮れているところは『ウェンディ&ルーシー』にも似ていた。どちらも世界に蔓延る抑圧や閉塞感への苛立ちと無情さを全くドラマチックじゃないロードムービーやクライムムービーとしてまざまざと見せつける。そしてよく見ると今作へコメントを残している面々の中にはケリー・ライカートの名前もあるではないか。点と点が繋がる瞬間だった。
fromマリオン
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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