料金を滞納する家庭を訪ねていく水道局員と二人きりで家に取り残された幼い姉妹の姿を描く『渇水』がいよいよ劇場公開!
©2022『渇水』製作委員会
停水執行を行う私生活で心が乾いた水道局員と、彼が業務中に発見した育児放棄された姉妹を描く『渇水』が6月2日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『渇水』は、心の渇きにもがく水道局職員の男が幼い姉妹との交流を通して生きる希望を取り戻していく姿を描く。市の水道局に勤める岩切俊作は、水道料金を滞納している家庭や店舗を回り、料金徴収および水道を停止する「停水執行」の業務に就いていた。日照り続きの夏、市内に給水制限が発令される中、貧しい家庭を訪問しては忌み嫌われる日々を送る俊作。妻子との別居生活も長く続き、心の渇きは強くなるばかりだった。そんな折、業務中に育児放棄を受けている幼い姉妹と出会った彼は、その姉妹を自分の子どもと重ね合わせ、救いの手を差し伸べる。
本作では、『凶悪』『孤狼の血』等を送り出してきた白石和彌監督が初プロデュースを手がけ、作家の河林満さんによる短編「渇水」を原作に、生田斗真さんを主演に迎え、監督は、岩井俊二監督作や宮藤官九郎監督作で助監督を務めてきた髙橋正弥さんが務めた。
©2022『渇水』製作委員会
映画『渇水』は、6月2日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田や難波のTOHOシネマズなんば、京都・二条のTOHOシネマズ二条や九条のT・ジョイ京都、神戸・岩屋の109シネマズHAT神戸等で公開。
かつて東京都立川市職員だった作家の河林満さんによる短編「渇水」を原作に、時代を現代に変え、脚色を加えて映画化した本作。自治体の水道局職員の中には、料金徴収および水道を停止する、いわゆる停水執行の業務を担っている方がいるんだよな、と改めて気づかされた。公共料金の中で、電気・ガスよりもまだ猶予期間がある水道であるが、水道を止められることは、冷静に考えると余程の状況である。なぜ水道料金を払わない状況になってしまうのか。うっかり忘れてしまっていた、だけには収まらない事態に至ってしまう要因はいくらである、と本作を観て気づかされた。本作で中心に描かれていくのは、ネグレクトに至ったシングルマザーに捨てられた姉妹。結局、停水執行に至ってしまうが、せめてもの情けを以て行動する主人公の姿が切ない。表情の変化を分かりやすく見せずとも彼が抱く葛藤が十分に伝わってくる。彼が最終的に執った行動の是非について、今作を観る者からの賛否は分かれるだろう。短編作品から、僅かでも希望を感じられる作品となるように脚色が加えられ、現代に一石を投じる作品になったのではなかろうか。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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