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自分の無自覚な加害性と真正面から初めて向き合う体験になった…『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』金子由里奈監督と細川岳さんを迎え舞台挨拶開催!

2023年4月22日

大学のとあるサークルを舞台に、男らしさや女らしさというものが苦手な大学生と、彼を取り巻く人々を描く『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』が全国の劇場で公開中。4月22日(土)には、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田に金子由里奈監督と細川岳さんを迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』…

京都にある大学の「ぬいぐるみサークル」。「男らしさ」や「女らしさ」というノリが苦手な大学生の七森は、そこで出会った女子大生の麦戸と心を通わせる。そんな2人と、彼らを取り巻く人びとの姿を通して、新しい時代の優しさの意味を問いただしていく。本作では、「おもろい以外いらんねん」「きみだからさびしい」など繊細な感性で紡がれた作品で知られる大前粟生さんの小説「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」を映画化。『町田くんの世界』以来の映画主演作となる細田佳央太さんが七森を演じ、七森と心を通わせる麦戸役を『いとみち』の駒井蓮さんが務めた。そのほか、新谷ゆづみさん、細川岳さん、真魚さん、上大迫祐希さん、若杉凩さんらが共演。原作者の大前さんにとっては著作の初の映像化作品となり、大前さんとは元々交流のあった『21世紀の女の子』『眠る虫』の新鋭監督である金子由里奈さんが自身の商業デビュー作としてメガホンをとった。

 

上映後、金子由里奈監督と細川岳さんが登壇。作品に対して真正面から真摯に向き合ったことが伝わってくる舞台挨拶が繰り広げられた。

 

全国の劇場での公開を迎え、金子監督は「今の社会へ喫緊に届けるべき物語だと思っていた。映画が出来上がり、届いているという反響を頂き、嬉しいです。映画を作って良かったな」と本心から実感している。細川さんは「公開して舞台挨拶を想定していると、あまり実施しない。こういう形でしゃべる機会があるのは嬉しいです」と多くのお客さんに感激していた。

 

大前粟生さんによる原作小説について、金子監督は大学生時代に出会い「自分の無自覚な加害性と真正面から初めて向き合う体験になった。SNSで言葉による加害が増えている、と同時に、新自由主義化が進んで、強いことが求められる社会になり『よわい』人の居場所が無くなっている中で、この物語は直ぐに届けなければいけない、と思い企画しました」と振り返る。細川さんは出演オファーを頂く前に原作を読んでおり「読んだ後の感想としては、何と言って分からない…読みながら、自分の加害性と向き合っていくようになる。見たくない自分が見えるものだなぁ。それを男性である大前さんが書いたことは凄いことだな。しかも同い年なのか」と驚いた。そこで、オファーを頂き「やるしかないな。鱈山という役が小説でもシナリオでも魅力的だったので、やりたいな」と応じていく。なお、大前さんは、編集者から「女性差別に全身全霊で傷つく男の子の物語の話を書いて下さい」と依頼されたようだ。

 

鱈山役を演じるにあたり、細川さんは「最初は分からなかった」と打ち明け「ぬいぐるみとしゃべることをしてこなかったので、そこからだった。毎日しゃべっていると、自分の言葉を吸収してくれている。跳ね返ってくるような感覚もあった。話しながら癒されているはずなのに傷つく瞬間はあると気づいていく」と実感。金子監督も、映画化にあたり、ぬいぐるみとしゃべってみており「大切にしているパートナーのようなぬいぐるみがいる。話しかけることがあったけど、吐露することはなかった。やってみたら、独り言とも違う。誰かに伝えるとも違う。内向的なはずなのに、開ける瞬間がある」と不思議だった。細川さんは駒井蓮さんがぬいぐるみとしゃべる姿に感心しており「普段から喋っている」と伝え聞いており、金子監督は「カットが掛かっても、ぬいぐるみを大事に抱えていた。普段からやっているんだな」と興味深く感じている。なお、出演者それぞれがぬいぐるみを持ち込んでおり「部屋にいる自分を半分連れてきているような感覚だった」と独特の心地良さがあった。なお、現場では真魚さんがボケ役に徹しており「現場を沢山盛り上げて下さった。しんどい内容だけど、現場はしんどくならない。雰囲気を作って下さった」と感謝している。また、細川さんの演技について「会話のトーンや淀みある会話がぬいサー全体の音叉になっていた。細川さんがしゃべると聞いちゃう。会話に合わせていくので、おもしろかった」と助けられている。なお、鱈山は大学で8回生にまで至っており「大学に行く選択肢がない人も存在している中で、鱈山は8回生になることができ、社会問題を考える猶予があるが距離が取れなくて切迫している。複雑だけど魅力的なキャラクター」と説く。とはいえ、細川さんは「分かる人の方が少ない気もしている。想像できないと鱈山に感情移入できる人はいない」と捉えている。金子監督は「鱈山は創設者であるが、自分が男性ジェンダーであるから、部長をやっていると新入部員が入りづらい雰囲気を作ってしまうんじゃないか、と思い、副部長を担っている。ぬいぐるみも鱈山が集めていった。壮大なことを抱えている人」と感じ取っている。

 

脚本執筆にあたり、ぬいぐるみを洗うシーンを加筆した。金子監督は「人を傷つけてしまうから、ぬいぐるみと話しているけれども、ぬいぐるみの気持ちはどうなんだろう」と考察し、ぬいぐるみをケアするシーンを挿入している。とはいえ「ぬいぐるみにとってケアになっているか分からないけれども、労わる気持ちを表現したかった」と述べた。自身もぬいぐるみを洗ったことがあり「ぬいぐるみは水に浸すと、石みたいに重くなる。ふわふわだったのに、様々な吸収して重くなった。水面に揺れる毛並みの1本1本が針のように見えた。ぬいぐるみをずっと見つめる時間はないので、作りたかった」と話す。また、カメラの胴体がぬいぐるみ、という代物をカメラマンが制作しており「カット割りを考えていく中で、ぬいぐるみの視点を感じた。撮影時、カメラを俳優が抱えると、撮られている要素が強くなる。ぬいぐるみの手触りを実際に感じてもらいながら撮影出来た」と感謝している。

 

最後に、細川さんは「この題材で映画を作るのは難しい。なかなか映画会社も動かない。規模が上がるほど、このような形に落ち着くことが出来ない。今、金子監督が撮った映画が存在することで、誰かにとって必要な場所が存在している。少しでも多くの人に観てもらいたいな」とメッセージを送る。金子監督は「あなたは大丈夫だ、といってくれるコンテンツは溢れている。それは一つの祈りのようなことでもあると思うけど、大丈夫、といわれちゃうことによって零れ落ちてしまう、大丈夫じゃないことを頷きたいと思って作った映画です。大丈夫じゃない、といって良い空気を作りたい、と思っています。この映画が必要なところに届いてほしい」と思いを込め、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』は、関西では、京都・烏丸の京都シネマや九条の京都みなみ会館、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、神戸・元町の元町映画館で公開中。4月29日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場でも公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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