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毒性の雲によって家から出られなくなった人々の姿を描く『ピンク・クラウド』がいよいよ劇場公開!

2023年1月25日

(C)2019 Luminary Productions, LLC.

 

触れると10秒で死亡する雲の発生で一変した世界に生きる人々を描く『ピンク・クラウド』が1月27日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『ピンク・クラウド』は、突如として発生した毒性の雲により部屋の中に閉じ込められてしまった人々を描いたブラジル発のSFスリラー。高層アパートの一室で一夜を共にした男女ヤーゴとジョヴァナを、けたたましい警報が襲う。強い毒性を持つピンク色の雲が街を覆い、その雲に触れるとわずか10秒で死に至るのだという。2人は窓を閉め切って部屋に引きこもり、そのままロックダウン生活を強いられることに。事態は一向に好転せず、この生活が終わらないことを誰もが悟り始める。月日が流れ、父親になることを望むヤーゴにジョヴァナは反対するが、やがて2人の間に男の子・リノが誕生。リノは家の中という狭い世界で成長し、ヤーゴは新しい生活になじんでいく。しかし、ジョヴァナの中で生じた歪みは次第に大きくなり…

 

本作は、これまで6本の短編作品を手がけた新鋭イウリ・ジェルバーゼが長編初メガホンをとった。ヘナタ・ジ・レリス、エドゥアルド・メンドンサ、カヤ・ホドリゲス、ジルレイ・ブラジウ・パエスらが出演。2021年のサンダンス映画祭ワールド・シネマ・ドラマ部門に出品された他、各国の映画祭で受賞やノミネートを果たした。

 

(C)2019 Luminary Productions, LLC.

 

映画『ピンク・クラウド』は、1月27日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、京都・烏丸御池のアップリンク京都、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸等で公開。

学生時代の友人に、東北地方の奥地でとても寒い地域出身の男がいた。一緒に呑みに行った時、彼が話す地元の同級生たちは20歳そこそこで結婚して子供がいる者が多い、と聞く。早婚な地域なのかな、と特に興味も湧かずに適当な相槌を打っていると「いや、とにかく寒いんだ。田舎だから遊びに行く施設も無いし。一年の大半は家の中で過ごしがちなんだよ。そうすると、カップルが部屋にこもってやることなんて決まってるだろ? だからすぐ子供が出来て結婚するやつが多いんだ」と言われてしまった。”う、ううん?それは人によるんじゃないかなぁ。あと、同じことを地元の政治家がテレビで言ったりしたら問題になりそうな気がする”とは思ったものの、それは言わずに飲み込みつつ。とはいえ、確かに、室内にずっと籠りがちなライフスタイルで暮らしていると、ヒトの欲望は活発になるものなのかもしれない。心のどこかで妙に納得もしていた。

 

今作の冒頭、「(本作は)2017年に脚本が書かれ、2019年に撮影された。現実との類似は偶然である。」というコメントが表示される。コロナ禍でこそ生まれたアイディアかと思える内容だが、実はそれ以前に構想されていたというのが驚きだ。的中してほしくはなかった形で、現実がフィクションと呼応してしまったのが悲しい。おそらくコンパクトな予算規模の作品だと思われる本作。超有名キャストは不在で舞台も限定された、一種のソリッド・シチュエーションスリラーである。きっと大混乱になっているはずの市街や諸外国の様子にはほとんど触れず、屋内にロックダウンされた人々が疲弊して少しずつ壊れていく様子が淡々と描かれていく。食糧の供給不足、外出できないストレス、限定された環境での人間関係への疲れ。正直想像していた展開ではある。この3年間で我々が現実で体験してきた事態なのだから。しかし、それ以外の描写として、性の乱れが何度も取り上げられるところが興味深かった。同居するパートナーとの増えるセックス回数と、その後に訪れる険悪な倦怠。平常時なら決してやらないであろう、窓から見える隣人へのハレンチな行動や、成人の同居人と関係を持って妊娠する10代の少女など。なんだか人間の本質に対して、どうせ下半身で生きているんだろう?とでも言いたげな悪意さえも感じるが、その一方で「あるかもなぁ」という説得力もあった。

 

10秒で人間の命を奪う殺人雲の色はコケティッシュなピンク。カラーリングのセンスにもシニカルな悪意を感じる。悪意というよりは、世の中の何をも信じていないような諦観だろうか。世界中で人が死んでいく。解決策は何もないまま、世界はその状態を受け入れつつ回り始めている。こんな内容、withコロナの時代を生きる我々が他人事と思えるはずもない。決して明るい物語ではないが、ある意味、今観なくていつ観るのだという作品として楽しめた。

fromNZ2.0@エヌゼット

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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