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どんないのちも大切にされるべきだし、そこに存在することが重要なんだ…『帆花』國友勇吾監督に聞く!

2022年2月26日

生後すぐ、“脳死に近い”と診断された少女と、彼女を常に見守る両親の姿を写し出したドキュメンタリー『帆花』が関西の劇場でも2月25日(金)から公開。今回、國友勇吾監督にインタビューを行った。

 

映画『帆花』は、生後すぐに「脳死に近い状態」と宣告された帆花ちゃんと両親の姿を見つめたドキュメンタリー。帆花ちゃんの母である西村理佐さんの書籍「ほのさんのいのちを知って」との出会いをきっかけに制作を決意した國友勇吾監督が、当時3歳だった帆花ちゃんが小学校に入学するまでの3年間にわたり、家族に寄り添いながらその日常を記録。親子で様々な場所に出かけ、家では絵本を読み聞かせ、お風呂に入れ、吸引をする。そんな家族のかけがえのない日々の中に、生きる喜びと生命の営みを見いだしていく。
『春を告げる町』の島田隆一さん、『東京クルド』の秦岳志さんら、ドキュメンタリーの精鋭陣がスタッフとして参加している。

 

作品の制作にあたり、家族は自宅での撮影を初めから受け入れてくれている印象だったようで「撮影当時は臓器移植法が改正されたばかりで、帆花ちゃんのような状態の子もドナー候補にされてしまうんじゃないか、という心配から、母親の理佐さんがメディアや講演会などで積極的に発言されていました。発信していくことや撮ること自体にプレッシャーはあったようですが、自分が何かを見つけられるかもしれない…と撮影にも向き合ってくれました」と話す國友監督。家族としても、様々なことにチャレンジしようとしている時期であり、撮影にも協力的だった。2011年4月から2014年4月までの3年間を撮影し、最初の1年2ヶ月は國友監督自身がカメラを回しており「1人で伺った時、家族や友人に近い存在として居心地良く接して頂いた」と感謝している。定期的に撮影に伺い関係を築いたそうで「帆花ちゃんの誕生日や結婚記念日などの節目となる日を迎えた時、理佐さんがブログで、帆花ちゃんが生まれてからこれまでの生活を振り返っていたので、ご両親の心情や節目の日を迎えた思いを映像に定着できたらと考えたんです」と振り返る。とはいえ、1年に1回は帆花ちゃんが体調を崩す時があり「僕自身が立ち会う場面がきたらきちんと向き合わないといけない」と心を引き締め「いつ何が起こったとしても、その時のご家族の気持ちや、帆花ちゃんが存在していることの大切さを描けるように」と真摯にカメラを向けていった。

 

撮影を進めていく中で、監督自身は「家族の思いを狙って聞いていくというより、ありのままの日常生活をそのまま伝えたい」と考えていたが「何が撮りたいか、どういう場面が必要かイメージしていなかったわけではないが、それよりも日常の中で起こることのなかから探して撮っていこうとしていた」と当時の心境を告白。監督のはっきりとしない意向に対し家族から意図も問われることもあったという。「ご家族は大変な生活をされている中で、撮影にも真摯に協力してくれました。僕が意図を明確に伝えられないことで、ご家族が次第に不安を募らせる募らせる結果となってしまった」と明かし「明確に応えることが出来なくとも、僕自身の思いを伝えるなどの必要なコミュニケーションを重ねればよかったのだが、それも怠ってしまい、家族にとっては不安が解消されるどころか、かえって増してしまったのではないか。結果として、6歳になった帆花ちゃんが福祉特別支援学校に入学というタイミングで撮影を終えることになり、少し悔いも残っている」と吐露した。とはいえ、帆花ちゃんのおじいちゃんとおばあちゃんが正月に来られたシーンは印象に残っており「帆花ちゃんに会えて嬉しそうなお二人から家族のあたたかみが伝わってきた。おばあちゃんが長田弘さんの『最初の質問』という詩を帆花ちゃんに読み聞かせるのを聞いた時、帆花ちゃんに対する僕の向き合い方が定まった。帆花ちゃんの意思を分かり切れない中で、それでも問い続けることが映画にとっての指針になるんじゃないか」と感じ「この場面を撮れたことで、映画が完成を迎えられる」と感じた。

 

編集にあたり、まずは、プロデューサーの島田さんと共に行い「日常生活の中に理佐さんのブログの文章を入れ込んでいった。帆花ちゃんが生まれた時の心境、その後どういう風に気持ちが変化していったか、理佐さんのこれまでを追体験してもらうようにした。日常生活を観てもらうことで、家族の日々の暮らしを重層的に共感をもって観てもらえるんじゃないか」と考え、構成していった。だが、ご家族に見せてみると「私達、こんなに暗くはないよ」と言われてしまい「帆花ちゃんと家族のあたたかい生活を伝えたいと思って撮り始めたので、このままでは僕自身が納得して公開できない」と判断。そこで、島田さんが監督した『春を告げる町』の編集も手掛ける秦岳志さんに依頼することに。秦さんは、重症心身障害児(者)施設の姿を伝えるドキュメンタリー『わたしの季節』の編集を手掛けており「社会に対する捉え方がしっかりされている方なので、今回の作品を一緒に作っていくうえで、新しいアイデアが見つかるんじゃないか」と信頼を寄せていく。また、劇伴の音楽について検討していく中で、haruka nakamuraさんの音楽に出会う。「ご家族から感じたあたたかい雰囲気やいのちに対する祈りのようなものを音楽で取り入れたいと考えていた。harukaさんの楽曲を聞き、この人ならピッタリの音楽を作ってくれるんじゃないか。harukaさんが大切にしているものは映画にも通ずる」と確信し依頼した。

 

完成した作品について、改めてご両親に観てもらい「父親の秀勝さんは、帆花ちゃんの可愛い様子が写っていることを喜んでいた」ので監督は一安心。理佐さんは「私達の生活がそのまま映っているから、客観的には観られない。私たちの家族のことをどういう風に受け取られるのか」と気にしていた。既に東京などの劇場で公開されているが「帆花ちゃんが可愛い」「あったかい生活をしているよね」「大変な生活だと思うが、幸せを感じる」といった感想や「命に対する家族の向き合い方は自分達も学ばなきゃいけない部分が沢山ある」という意見を受け「帆花ちゃんを育んでいるご家族の姿勢から、どんないのちであっても大切にされるべきだし、そこに存在することが重要なんだと感じ取ってもらえた」と前向きに捉えている。また、同時に「帆花ちゃんのいのちをどういう風に受け止めればいいのか答えが出ない方や、言葉に出来ず心を揺さぶられる方もいました」という反応があったことも正直に話す。

 

なお、現在の帆花ちゃんは、学校には訪問席として週に3回ほど学校の先生が自宅に来られて授業を受ける形式になっており、バランスボールに乗って体操したり、動画を観たりしている。「環境問題に関する動画を授業で見ているときは、サチュレーション(動脈血酸素飽和度)モニターのアラームを鳴らすことがあり、帆花ちゃんが興味を示していることが分かるそうです。また学校行事があると、ご家族で参加し、友達と交流している」と言い「小学校に通ったばかりの帆花ちゃんは理佐さんの影に隠れていたようだが、今はたくましくなり、自分から交流を深めているのだそう」と彼女の成長をご両親も感じ取っているようだ。もし、現在の帆花ちゃんにカメラを向けるなら「友達との交流の中に帆花ちゃんも普通にいる。そんなあたたかいシーンを撮りたいですね」と目を輝かせていた。

 

映画『帆花』は、関西では、2月25日(金)より京都・九条の京都みなみ会館、2月26日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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