写真集「MINAMATA」で水俣病を世界に知らしめた写真家ユージン・スミスの姿を描いた『MINAMATAーミナマター』がいよいよ劇場公開！
（C） 2020 MINAMATA FILM, LLC （C） Larry Horricks
伝説の写真家ユージン・スミスの遺作となった写真集を基に映画化した『MINAMATAーミナマター』が９月２３日（木）より全国の劇場で公開される。
映画『MINAMATAーミナマター』は、水俣病の存在を世界に知らしめた写真家ユージン・スミスとアイリーン・美緒子・スミスの写真集「MINAMATA」を題材に描いた伝記ドラマ。１９７１年、ニューヨーク。かつてアメリカを代表する写真家と称えられたユージン・スミスは、現在は酒に溺れる日々を送っていた。そんなある日、アイリーンと名乗る女性から、熊本県水俣市のチッソ工場が海に流す有害物質によって苦しんでいる人々を撮影してほしいと頼まれる。そこで彼が見たのは、水銀に冒され歩くことも話すこともできない子どもたちの姿や、激化する抗議運動、そしてそれを力で押さえ込もうとする工場側という信じられない光景だった。衝撃を受けながらも冷静にカメラを向け続けるユージンだったが、やがて自らも危険にさらされてしまう。追い詰められた彼は水俣病と共に生きる人々に、あることを提案。ユージンが撮影した写真は、彼自身の人生と世界を変えることになる。
本作は、ジョニー・デップが製作・主演を務め、『ラブ・アクチュアリー』のビル・ナイが共演。日本からは真田広之さん、國村隼さん、美波さんらが参加し、坂本龍一さんが音楽を手がけている。アンドリュー・レヴィタスが監督を務め、デヴィッド・ケスラーが脚本を執筆した。
（C） 2020 MINAMATA FILM, LLC （C） Larry Horricks
映画『MINAMATAーミナマター』は、９月２３日（木）より全国の劇場で公開。
社会科の教科書か資料集で見た覚えがある水俣病に関する印象的な写真。あれはユージン・スミスによる写真だったのか、改めて思い出した。その後も様々な近・現代史の出来事を捉えた彼の写真を拝見してきただろう。ユージン・スミスとして最後の代表的な仕事である『MINAMATA』。１９４５年の沖縄戦で、顔面の口蓋が砕けてしまうという大変な重傷を負いながらも、最終的に日本を愛した彼がどのような歩みを経たのか心して観てほしい。
本作で描かれていることは、多少なりとも事実と異なる箇所はあるが、水俣市での出来事はほぼ実際の出来事を映像化している。実在の人物を基にしたキャラクターが描かれ、ユージン・スミスが出くわした出来事も再現していた。彼を演じたジョニー・デップは今年で５８歳を迎えたが、５１歳以降のユージン・スミスを見事に成り切っている。これまで演じてきたキャラクターの成り切りぶりも凄かったが、本作には製作としても関わっており、ユージン・スミスが成し得た偉大な仕事を伝えたかったか、身に沁みて感じてしまわざるを得ない。個人的には、水俣病により視野狭窄を患ったキヨシを演じた加瀬亮さんを最初に観た時には、役者の凄みを途轍もなく感じてしまった。
当時、水俣の人々はチッソのおかげで生活できることもあったため、家族が水俣病を患ってもチッソ或いはチッソに関わる仕事に携わざるを得ない状況であったことを本作を通じて知ることになる。されど、正に命を賭けて労働組合は損害賠償を経営陣に求めていく。どんな抵抗や報復を受けたとしても戦った彼等と、カメラをレンズを通して捉え続けたユージン・スミス。まさにフォト・ジャーナリズムの象徴となった彼の偉業を最後までしっかりと観届けてほしい。
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- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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