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ボスニア紛争の悲劇、スレブレニツァ虐殺の真実を描く『アイダよ、何処へ?』がいよいよ劇場公開!

2021年9月13日

(C)2020 Deblokada / coop99 filmproduktion / Digital Cube / N279 / Razor Film / ExtremeEmotions / Indie Prod / Tordenfilm / TRT / ZDF arte

 

ボスニア紛争最中、国連平和維持軍で通訳として働く女性が、緊張高まる中で家族や同胞を守ろうとする姿を描く『アイダよ、何処へ?』が9月17日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『アイダよ、何処へ?』は、1995年、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の中で起きた大量虐殺事件「スレブレニツァの虐殺」の全貌と、その中で家族を守ろうとした一人の女性の姿を描いたヒューマンドラマ。国連平和維持軍の通訳として働く女性を主人公に、家族を守るため奔走する彼女の姿を通して、事件当時に何が起こっていたのか、虐殺事件の真相を描き出す。1995年、夏。ボスニア・ヘルツェゴビナの町、スレブレニツァがセルビア人勢力によって占拠され、2万5000人に及ぶ町の住人たちが保護を求めて国連基地に集まってくる。一方、国連平和維持軍で通訳として働くアイダは、交渉の中である重要な情報を得る。セルビア人勢力の動きがエスカレートし、基地までも占拠しようとする中、アイダは逃げてきた人々や、その中にいる夫や息子たちを守ろうとするが…

 

本作では、『サラエボの花』『サラエボ、希望の街角』と一貫してボスニアを舞台とした作品を撮り続けるヤスミラ・ジュバニッチが監督を務め、『鉄道運転士の花束』のヤスナ・ジュリチッチがアイダを演じている。第77回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門へ出品され、第93回アカデミー国際長編映画賞ノミネートされた。

 

(C)2020 Deblokada / coop99 filmproduktion / Digital Cube / N279 / Razor Film / ExtremeEmotions / Indie Prod / Tordenfilm / TRT / ZDF arte

 

映画『アイダよ、何処へ?』は、9月17日(金)より全国の劇場で公開。関西では、9月17日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や京都・烏丸の京都シネマ、9月24日(金)より神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。

今作で描かれているボスニア内戦は、今から30年弱前の1992~1995年の出来事。紛争当時、ボスニア・ヘルツェゴビナの住人435万人のうち20万人が殺害されたという事実に戦慄し、愕然とする。およそ20人に1人が命を奪われていた。

 

主人公のアイダはとても聡明で語学力も備え、勇敢で決断力のある人物。政情不安定な地域で国連の職員として通訳を務め、軍人たちにも臆せずに接して、現地住民たちの安全を維持するため奔走する姿が凛々しい。そして、知力と行動力で活躍している姿を前半に見ているだけに、後半のとある件ではなんとも表現し難い、ぞっとした気持ちに襲われた。武装した勢力が自分たちと相容れない人々を残虐に迫害する恐ろしさを描いていると同時に、1人の人間がどうしようもなく追い詰められた状況で、何を選択するか、何を見捨てるかという、誰も責めることができない心苦しい行動への問いと言わざるを得ない。ならば、救いのない一連の顛末を見届けた後に訪れる、静かなエピローグがとても心に響いてしまう。

 

個人的には、本作の鑑賞にボスニア史の予習は必須ではない、と考える。史実を知っていれば、アイダと家族がどうなっていくか、彼らの運命がどこへ行きつくか推測ができるだろう。しかし、よく知らない方はあえてそのまま鑑賞してみてほしい。アイダと家族や、スレブレニツァの住民たちの不安と恐怖と怒り、その後に残るやりきれない感情を共感できるのではないだろうか。劇中で映し出される、セルビア人勢力が国連軍の撤退を急かすように押しかけて住民たちを蹂躙する姿に、つい最近のアフガニスタンから米軍が撤退後におけるタリバン勢力の姿を重ねてみる人は多いだろう。世界のどこかでは、常に同じようなことが起きている、という漠然とした絶望感さえ感じる。

 

ラテン語の原題『QUO VADIS, AIDA ?』は直訳すると「どこへ行く、アイダ?」。邦題と同じ意味だが、さらに ”QUO VADIS” は新約聖書(ヨハネの福音書 13-36)からの引用としても知られる有名なフレーズ。ヤスミラ・ジュバニッチ監督がこのタイトルにこめた思いも興味深い。公式サイトには監督へのインタビューが掲載されているので、鑑賞の前後に目を通してみて頂けたら。

fromNZ2.0@エヌゼット

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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