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自然栽培による家族農業が世界を変える…!『お百姓さんになりたい』原村政樹監督を迎えトークショー開催!

2019年9月28日

自然栽培に取り組む埼玉県の農園に密着し、自然と共にある農の営みを丹念に見つめる『お百姓さんになりたい』が9月28日(土)より関西の劇場でも公開中。初日には大阪・十三の第七藝術劇場に原村政樹監督を迎えトークショーが開催された。

 

映画『お百姓さんになりたい』は、『いのち耕す人々』『天に栄える村』など、農業をテーマにした作品をライフワークとして手がけている原村政樹監督が、前作『武蔵野 江戸の循環農業が息づく』に続き、武蔵野地域の農園の営みを丁寧に追ったドキュメンタリー。2.8ヘクタールの畑で60種類もの野菜を育てる明石農園の明石誠一さんは28歳の時に東京から埼玉県三芳町に移り住み、新規就農した。有機農法からスタートし、現在では肥料さえも使わない自然栽培に取り組んでいる。研修生として明石農園にやってくるパティシエやカメラマンといったさまざまな経歴の人たち、農業福祉連携で働く障がいを持つ人たち、農業体験イベントに参加する子どもたちと、農作業で土に触れることから心豊かに暮らすためのヒントが提示される。

 

上映後、原村政樹監督が登壇。明石農園から感じ取った思いを熱く訴えるトークショーとなった。

 

農業をライフワークにしてドキュメンタリーを撮っている原村監督は、土に注目していた。「野菜が土から養分を吸い上げるので、土は痩せていく。肥料を補いながら続けてきたことが農業の醍醐味」と語るが、肥料をやる必要がない自然農法のメカニズムを知りたかった。10年前頃には土中の根周りに関する研究が進み「科学的に理にかなったメカニズム」だと判明してきている。

 

昨今のメディアでは、優秀な農家が毎週伝えられるようになった。だが、良い結果は伝えられるが「種をまいて育てるプロセスがほとんど伝わっていない」と原村監督は感じている。「プロセスを追うと大変な仕事になるので仕方がない。だが、野菜は生き物なので『農家は毎年1年生だ』とベテラン農家でさえ話す」と述べ「いつでも新しい出来事に直面する」と表す。そこで「様々な経験をしながら丁寧に育て、技術や知識を習得していくことが伝えきれていない」と危惧する。明石さんは、60種類の野菜を育てているが、全ての育て方をマスターしているわけではないので「彼はいつも条件をかけて比較する実験をしている。試行錯誤しながら生き物を育てる難しさをみてきた」と感じ取った。

 

明石さんには様々な魅力的な方が集まっており、一つの農家だけでも十分な人間関係を備えている。自然栽培では雑草を徹底に取り除いており「効率重視ではないが農家として生きていくためには重要。優れている農家曰く『草を見ずして草を取る』。一般農家の方には除草剤を使っている方もおり、周りの人達の営農を細かく見ている」と捉えていく。結果的に「周囲の人達は彼等を高く評価している。農業は、1人の農家だけで独立して出来る仕事ではない。周りの農家との協力関係で発展していく。地域社会と溶け込んでいる」と関心を寄せていった。

 

本作の制作にあたり、1年半の撮影では「良い光景を沢山見てきた」と実感している。様々な課題が起きていても「彼は、しなやかに発想する。出来るか出来ないか、ではなく、やるかやらないか。やると決めたらどうすればいいか常に考えている」と捉えた。同時に「農業経営者として卓越した人。これだけの人の一緒に働きながら、家族を養い、人も雇っている。これから増員も考えている」と、並大抵ではないことに取り組んでいる、と感じている。明石さんの農業経営に対し「彼は緻密に年間、月間、週間、日々の計画、畑の区画、出荷計画を考え、経営者としての才覚を持ち実践している」と称えた。

 

また、明石農園が営む農業は「世界的な大問題と繋がっている」と示唆する。2014年に国連が国際家族農業年を設定した。大規模化し効率的で均一化し農法に向かう傾向が行き過ぎた結果、世界中で土地が劣化しており、2050年頃には大飢餓が起こると予想されているからだ。2015年には国際土壌年も設定されている。今年からは、「家族農業の10年」として家族農業を普及していく。「明石さんのように丹念に土作りをするような家族農業の価値を見直している。世界が今までやっていた工業的な農業ではなく、本来ある家族農業で土を大切にしながら作物に労わりながら育てていく永続的な農業に再び立ち返ろう」と世界の潮流と受けとめ「この映画は世界が考え直さなければならない大きなテーマの見本である」と訴えた。

 

現在の原村監督は「素晴らしい農家の方達に出会うことが楽しく喜びでもあり生き甲斐でもある」と実感しており、自身の活力になっている。同時に「人間にとって大切なのは水と空気と食べ物ですから、食べ物を大切にしないことは国として間違っている」と話し「将来、どんな食糧危機が起きても皆が自給できるような国づくりをすることが政治家であり政府である」と定義した。現在、自給率を下げる傾向には憤りを感じており「子供達が健やかに育つように良いものを食べてもらう。そういう農家を応援するべきである」と強く主張する。「食べ物は大事にしよう。そのために良いものを食べよう。一生懸命に作っている農家の人達を応援しよう」と訴え「彼らと友達になっていく市民が増えていくと随分変わっていきます。子供達にとっても親達の精神衛生においてもどれだけ良いことか見てきました。人生観が変わっていきます」と自らを省み、熱い思いでトークショーを締め括った。

 

映画『お百姓さんになりたい』は、大阪・十三の第七藝術劇場と京都・烏丸の京都シネマで公開中。10月26日(土)からは、神戸・元町の元町映画館で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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