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蒋介石率いる国民党の独裁政権下の台湾を背景としたダークミステリー『返校 言葉が消えた日』がいよいよ劇場公開!

2021年7月26日

(C)1 Production Film Co. ALL RIGHTS RESERVED.

 

政府から禁じられた本を読むことに青春を捧げる高校生たちが、仲間と共に政府の監視下にある学校から脱出を試みる姿を描く『返校 言葉が消えた日』が7月30日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『返校 言葉が消えた日』は、国民党による政治的弾圧が約40年間続いた、“白色テロ時代”を扱ったサスペンスミステリー。1962年、台湾では中国国民党による独裁政権のもと、市民に相互監視と密告が強制されていた。ある日、翠華高校の女子生徒ファンが放課後の教室で眠りから目を覚ますと、周囲から人の気配が消えていた。誰もいない校内をさまよう彼女は、政府によって禁じられた本を読む読書会メンバーで、密かにファンを慕う男子生徒ウェイに遭遇。一緒に学校からの脱出を図るが、どうしても外に出ることができない。やがて2人は、学校で起きた政府による迫害事件と、その原因をつくった密告者の悲しい真相にたどり着く。

 

本作は、2017年に発売された台湾の大ヒットホラーゲーム「返校」を実写映画化。第56回金馬奨で最優秀新人監督賞など5部門を受賞した。14歳で作家デビューを果たした、ワン・ジンが主演を務め、海外映画祭での評価が高い新鋭、ジョン・スーがメガホンを取る。

 

(C)1 Production Film Co. ALL RIGHTS RESERVED.

 

映画『返校 言葉が消えた日』は、7月30日(金)より全国の劇場で公開。関西では、7月23日(金)より大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマや難波のTOHOシネマズなんば、京都・烏丸の京都シネマ、兵庫・西宮のTOHOシネマズ西宮OS等で公開。

本作を初めて観たのは、2019年の夏に台北でのことだった。街中や地下鉄の駅には大型のポスターが貼られ、映画とタイアップされたお化け屋敷もオープンしている等、夏のヒット作としての盛り上がりを見せていた。本作は、ホラー映画として十分に楽しめるエンターテイメントである一方で、台湾の重要な歴史を正面から取り上げており、観た者には当時の印象を想起させる貴重な作品でもある。

 

予告編の映像でも目立っている、夜の校舎で廊下を一人歩く主人公の姿。原作ゲームにおける横スクロール画面の雰囲気を忠実に再現した名シーンである。ゲームは日本語版も販売されており、スマホやPC、Nintendo Switch等の環境において安価でプレイできるが、難易度は高い。ゲーム中に登場するアイテムや仕掛けは映画の中にも登場しているが、劇中では詳しい説明はされていなかった。気になった方はプレイして確かめてみてほしい。

 

今作は、台湾の歴史をまったく知らなくとも楽しめる内容である。だが、キーワードとして知っておくとわかりやすいことを挙げたい。半世紀以上も植民地として日本の統治下にあった台湾は、第二次大戦で敗戦した日本軍の撤退後、蒋介石が率いる中国の国民党政権による圧制を受けていたこと。1947年の「二・二八事件」を幕開けに、逮捕、拷問、虐殺などの「粛清」と呼ばれる行為で数万単位の人命が奪われ、その中には知識人が多く含まれていたこと。戒厳令と監視による弾圧の時代は1960年代になっても続き、台湾に住む人々の間では密告による裏切りの犠牲者も存在したこと等…

 

現在、1960年代を描いた本作以降の時代、1999年のエピソードを描くドラマ版「返校」がネットフリックスで視聴可能だ。1987年に戒厳令が解除され10年以上が過ぎた台湾において、再び物語の舞台となる翠華中学(日本における高校)。かつての事件に関わっていた人物たちも登場する。ゲーム版にはないオリジナルストーリーだが、長く暗い時代の夜明けを予感させるような締めくくりは、本作に対するもう一つのエンディングにふさわしい。但し、ドラマ版の冒頭では映画版の重要なクライマックスも明かされてしまうため、映画を観た後での鑑賞をお勧めしておく。

fromNZ2.0@エヌゼット

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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