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不安や不愉快な部分を軽減できるか一緒に考えてもらえれば…『99歳 母と暮らせば』谷光章監督に聞く!

2019年8月9日

71歳の映像作家である谷光章さんが、99歳になる母との生活にカメラを向け、支えつつ支えられつつの家族の風景を映し出す『99歳 母と暮らせば』が関西の劇場でも8月10日(土)より公開される。今回、谷光章監督にインタビューを行った。

 

映画『99歳 母と暮らせば』は、認知症を抱える99歳の母親を、自身も71歳と高齢の映像作家・谷光章監督が介護する日々を、ほのぼのと描いたドキュメンタリー。谷光監督の母親・千江子さんは認知症を患っており、足腰の衰えも進行して一人暮らしが不安なことから、息子である71歳の谷光監督が同居し、介護することになった。老老介護に苦心しながらも、母の人生最後の日々を撮影していく谷光監督。毎日のように起こる失敗や苦難、そして母のチャーミングな一面をカメラは捉え、その日々を通して、介護され、介護する人たちがともに幸せに暮らせる介護とは何か、そしてともに生きることの愛おしさなどを描き出していく。

 

谷光監督は、2017年正月以前から母親を撮り始めた。日々の日常の中で何かが起こりそうな症状が出ている場合に直ぐにカメラを据えて撮れるような体制をとっており「毎日回しているわけではなく、タイミングを合わせていました。何も起こらない時もあります。淡々とした日常がほとんど」だと話す。本作では、その中から印象的な出来事をピックアップして纏められた。

 

母親の介護をしながら、カメラを向けた谷光監督だが「なるべく母が気持ち良く、不安にならず不愉快にならない接し方で生活を送っています。その中でカメラを固定して撮ることが多かったですので、皆さんが思われる程大変ではないです」だと苦労を感じさせない。しかも、99歳の母親は、若く元気であるように見えた。若い時はスポーツに取り組んでおり「今まで大病を患ったこともない。ずっと健康体で保ってきた。楽天的で明るい性格なので、ストレスを溜めない」と、良い方向に作用している。

 

作中では、自宅の壁に貼られた格言が印象的に見えていく。谷光監督は「目についた格言や心得が好きなんですね。本とか新聞で見つけたものを自分で書き留めて貼っている」と解説。スクラップブックも長年制作しており「15歳以降、様々なものに興味を持って多感になっていた少女が好きなものを集めたりする感覚。あの時代に関心を持ったものを新聞や雑誌から切り抜いている」と説明する。察するに、頭の回転が早いと見受けられるが「頓珍漢な会話のやり取りもありますが、こちらの話の内容を理解しているかどうか分からない時があり、徐々に衰えています」と正直に言う。親子の会話については「こちらの問いかけに対し、反応が返ってくる。母との会話はストレスなく楽しんでいます」と述べ「私もストレスを溜めない方法、介護に集中し過ぎないように適度に抜いてコントロールしながらやっていきます」と工夫している。

 

なお、本作の制作にあたり、谷光監督は、最初から映画製作を目的にカメラを回していなかった。日常の記録としてカメラを回している中で「次第に症状が出てくる。不思議だと思ったり経験できない幻視が撮れてきたところで、興味深くなってくる」とドキュメンタリー監督としての視点も外しておらず「ある程度撮れてくると、一般の方が経験できない部分を纏めていけば映画として成立する」と説く。自身の母親に関するドキュメンタリーを制作し、「実際に介護をされて苦労されている方は状況や環境が違い、映画がどれくらい参考になるか分かりません。自分が関わっている中で重なることがあれば、その通りに当てはめるのではなく、本人の不安や不愉快な部分を軽減できるか一緒に考えてもらえれば」と提案する。

 

映画『99歳 母と暮らせば』は、8月10日(土)より、大阪・十三のシアターセブンと京都・烏丸の京都シネマで公開。また、10月12日(土)より、神戸・新開地の神戸アートビレッジセンターでも公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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