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2人の灯台守が狂気にとらわれる『ライトハウス』がいよいよ劇場公開!

2021年7月5日

(C)2019 A24 Films LLC. All Rights Reserved.

 

絶海の孤島にやって来たふたりの灯台守が嵐により極限状況に追い込まれていく姿をモノクロで描く『ライトハウス』が7月9日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『ライトハウス』は、外界と遮断された灯台を舞台に、登場人物はほぼ2人の灯台守だけで、彼らが徐々に狂気と幻想に侵されていく様を美しいモノクロームの映像で描いたスリラー。1890年代、ニューイングランドの孤島。4週間にわたり灯台と島の管理をおこなうため、2人の灯台守が島にやってきた。ベテランのトーマス・ウェイクと未経験の若者イーフレイム・ウィンズローは、初日からそりが合わずに衝突を繰り返す。険悪な雰囲気の中、島を襲った嵐により、2人は島に閉じ込められてしまう。

 

本作では、『ウィッチ』のロバート・エガース監督が、『TENET テネット』のロバート・パティンソンと名優ウィレム・デフォーを主演に迎え、実話をベースに制作された。

 

(C)2019 A24 Films LLC. All Rights Reserved.

 

映画『ライトハウス』は、7月2日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマや難波のTOHOシネマズなんば、京都・烏丸の京都シネマ、兵庫・西宮のTOHOシネマズ西宮OS等で公開。

海に生きる男達と云えば、たくましくて男らしいイメージを抱く人が多い。長い時間を船上で過ごす体力と精神力は並々ならぬものがあるし、いつも死へのプレッシャーと戦う必要がある。男らしい男達の精神が絶海の孤島で狂っていく様をロバート・エガース監督は美しくも不気味に描く。前作『ウィッチ』が女性らしさにまつわるホラーなら、今作は男らしさにまつわるホラーだ。

 

かつて船乗りだったベテラン灯台守と木こりだった過去を持つ新人灯台守が1ヶ月間孤島の灯台に泊まり込む。しかし、1人の関係性は孤島にそびえ立つ灯台のように荒み切っている。灯台の灯りを独り占めにするベテランは新人を徹底的にコキ使い、新人は鬱憤を貯め続けていく。1ヶ月だけだったはずの共同生活は嵐によって終わりが見えず、ストレスは更に加速する。根底にあるのは男らしさやプライドの高さに起因するマウントの取り合いだ。海は男達のちっぽけなプライドを嘲笑い、隠された秘密や恥部を曝け出す。男達は灯台の灯りや海が幻視させる光景から逃げられない。狂っていく男達を演じるウィレム・デフォーとロバート・パティンソンの演技も恐ろしくて凄まじい。

 

また、様々な芸術や文学のエッセンスを封じ込めたロバート・エガースの知的さやビジュアルセンスも見事だ。閉塞感漂うアスペクト比とエッジの効いたモノクロームで描かれる孤島の灯台は絵画のように美しく、海に取り憑かれた男達が幻視する悪夢的なビジュアルはクトゥルフ神話に登場するような神話生物のようでもある。そしてマーク・コーヴェンによる不穏な劇伴も忘れられない。この独特な世界観と狂気、悪夢は映画館という閉鎖空間でこそ生きる。

fromマリオン

 

カフカ的な悪夢。本作を観た時に最初に浮かんだ印象だ。 閉鎖された空間、強いられる単純作業と繰り返しの生活、権威主義と小物な上司、意味深で不穏な隠喩をこめられていそうな生物達。不条理きわまりない世界観のなかで、いつしかこの環境こそが主人公にとっての日常となっていく。

 

劇中の英語セリフには、文学的だったりダブルミーニングだったりと面白いものがいくつもある。特にウィレム・デフォーによる聞き取りにくい訛りのある演技は強烈で不気味さも含めた演出だ。本当に何を言っているのかわからない場面もしばしばあるが、比較的聞き取りやすいものを以下に挙げてみた。(字幕からの引用ではなく拙訳)
Why did you spill your beans?(なぜ秘密を明かした?)
Bad luck to kill a sea bird.(カモメを殺すとは縁起の悪い)
Boredom makes men to villains.(退屈さが悪漢を生む)

 

画面通りの物語としても、怖いやら、怖さを通り越して滑稽やらでずっと画面にくぎ付けになる。数々の深読みをすれば、いくらでも解釈ができそうだ。灯台のふもとでひたすら燃料をくべる姿を見て、炎を運ぶプロメテウスを想起した。 トーマスの言葉を思い返してみると、例のあのカモメはやっぱり…なのだろうな。

fromNZ2.0@エヌゼット

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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