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俳優達が見せてくれる演技を感じ取って、90%以上が外国語の作品を作り上げられた…『海辺の彼女たち』藤元明緒監督に聞く!

2021年5月5日

(C)2020 E.x.N K.K. / ever rolling films

 

快適な生活を求めて来日した3人のベトナム人女性が、現地での過酷な労働によって突きつけられる現実と向き合い、葛藤を抱き苦悩する姿を描く『海辺の彼女たち』が5月7日(金)より関西の劇場でも公開。今回、藤元明緒監督にインタビューを行った。

 

映画『海辺の彼女たち』は、日本・ミャンマー合作による初長編作『僕の帰る場所』が第30回東京国際映画祭「アジアの未来」部門グランプリを受賞するなど、国内外で高い評価を受けた藤元明緒監督の長編第2作。日本とミャンマー両国で引き裂かれる在日ミャンマー人家族の実話を映画化した前作に続き、今作でも在日アジア人の実態をテーマに取り上げ、外国人技能実習生として来日した若い女性たちの置かれた現実を描いた。技能実習生として日本へやってきたものの、不当な扱いを受けた職場を逃げ出した3人のベトナム人女性たち。違法な存在となった彼女たちはブローカーを頼りに新たな職を求め、雪の降る北の港町にたどり着くが…
藤元監督がインターネットを通じて知り合った外国人技能実習生の女性が、過酷な労働の日々の末に行方知れずになったことから、彼女と同様の境遇にある女性たちを取材し、オリジナルの脚本を書き上げた。

 

2016年にビザや日本への渡航情報をミャンマー語で発信するFacebookグループをミャンマー人の妻と立ち上げていた藤元監督。Facebookページにて、このコミュニティが盛り上がっている最中に、ミャンマー人技能実習生の女性から、不当な扱いを受けている旨についてSOSメールを受け取った。数度やり取りの後、彼女は職場から出ていき連絡が途絶えてしまう。どうすることも出来ず、行方不明になった彼女の後を追いたい思いが本作を作らせている。実際に取材も行い、現実に起きている出来事を集約し、脚本に盛り込んでいく。来日した主人公達は最終的にどうするか、具体的に決断させているが「この覚悟を観客の皆さんにも受け取ってほしい」という願いを込めている。また、眠りの描写を冒頭から作り込んでおり、覚めた後にある未来を想起させるようにしていった。

 

前作『僕の帰る場所』では、一般の方が主演し周囲に数人の俳優を出演させロケーションを作り込んでいる。今作では、主演の人達を女優や女優志望の3人にしており「周りにいる漁師や仕事場や病院は本物。実際に漁が行われている仕事場の中に入り込ませて撮っている。リアリティーを彼女達の周りに固めていたのは今回のチャレンジ」と説く。ロケとなった外ヶ浜町の協力は必要不可欠であり「通常では、本作のような題材だと、町の方からの協力が断られる。皆さんが物語を理解してくれたので、結果的にリアルな場所をお借りすることが出来ました。協力がなければ本作の企画自体が無くなっていた」と感謝している。

 

今作は90%以上が外国語の作品であり「細やかな演出を通訳者を介して女優達に伝達することはスケジュール的にも難しく、どうしたら伝えられるか上手く誘導していく手法に辿り着くまで苦労しました。外国語で映画を作っていくことは難しい」と改めて実感。表情などの非言語的コミュニケーションを一層に現場で大事にしていき「皆が持つアンテナの感度が高かった。カメラマンは言葉が分からないのに、カメラのタイミングを感覚でやっている。俳優達が見せてくれる演技を感じる力が高まっていた」とスタッフ達の技量に助けられた。とはいえ、撮影がクランクアップした時には「映画になるだろうか」と不安だったが「編集していくうちに彼女達が最後にするアクションやカメラとの距離感によって、映画を終われる瞬間があった」と感慨深い。

 

なお、移民が多い日本の街にも別の仕事で通っていたことがある藤元監督は、本作に登場したようなブローカーという職業やその生態系にも関心があり「日本側でも外国側でもない中立なポジションをどう営んでいるんだろう」と職業像としても興味津々。日本に送り出しているコミュニティの大元であり「日本でも大きく取り上げられることがない存在。送り出す側の思いにも今後は取材していきたい」と多様な視点を以て今後も活動していく姿勢だ。

 

映画『海辺の彼女たち』は、5月7日(金)より京都・烏丸の京都シネマ、5月8日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォと神戸・元町の元町映画館で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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