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地元でも語られてこなかった新花巻駅が出来た背景を初めて知ってもらった…『ネクタイを締めた百姓一揆』河野ジベ太監督に聞く!

2021年4月30日

(C)「ネクタイを締めた百姓一揆」映画製作実行委員会

 

鉄による東北新幹線の基本工事計画から当初は外れながらも、請願駅として設置が実現した新花巻駅にまつわる実話を映画化した『ネクタイを締めた百姓一揆』が5月1日(土)より関西の劇場でも公開。今回、河野ジベ太監督にインタビューを行った。

 

映画『ネクタイを締めた百姓一揆』は、地方自治体や地元住民、周辺企業等の要望により開設された鉄道駅=「請願駅」として実在する、岩手県の新幹線駅「新花巻駅」の設置を巡る14年間を映画化。東北新幹線の基本工事計画には設置予定として名前のなかった新花巻駅が、市民運動の末に開業に至るまでの物語を、労働組合の隆盛や国鉄分割民営化といった時代背景とともに描いた群像劇。東海道新幹線の成功により新幹線に日本中から期待が寄せられていた1971年(昭和46年)10月、日本国有鉄道(国鉄)は、東北新幹線基本工事計画を発表する。停車駅設置が有力視されていた岩手県花巻市の市民の期待はしていたが、市の誘致運動もむなしく、発表された設置予定停車駅に花巻の名はなく、線路が通る場所も市の中心部を大きく外れていた。この事態に一部の市民が立ち上がり、「東北新幹線問題対策花巻市民会議」を発足。駅設置運動を始める。一方、国鉄は膨大な赤字を解消できる算段もなく、大きな方向転換を迫られていた。

 

新花巻駅設置を巡る14年間について、駅を作るにあたっての中心人物となった方々を主役に据えて描かれた伝記小説「新花巻駅物語り」があり、映像化したい旨を受け、河野監督は話し合いを重ねていく。当初は60分程度の映像作品にする方針もあったが、当時の詳細な資料を沢山集めていき最終的には国鉄の歴史も調べ、駅が出来る物語の見え方が変化し様々な視点も必要となり「伝えないといけないことが多い。映画にしましょう」と本作の制作が始まった。あくまで地元の自主制作映画であり「ある意味では、やりたい放題。出演頂いた方々も映画については分からなくとも一生懸命に演じて頂いたので、要望を皆で実現してくれた」と感慨深い。

 

出演者の大半は、花巻市を中心に盛岡市や北上市といった岩手県内周辺市町村から集まった人達。最初に役を決めるためのオーディションを開催したが、数名のみ参加した程度。「自分達で映画制作を手掛けること自体が無謀だ」とも周囲から云われ、自ら率先して目立つことをする人もおらず。「お仕事に勤しんでいる世代の方が主人公になるので、皆やりたがらない」と実感しながらも、少人数だが協力してもらえるスタッフ兼キャストの方々を中心にして、それぞれが周囲に声を掛けながら出演者を集め、来てくれた方々全員に出演して頂いた。クランクイン時点では、重要人物の1/3しか集められていなかったが、撮影出来るシーンから取り掛かり、撮りながら次のシーンに向けてキャストを探していくことに。また、撮影の前半には大きなキャストの交代があり撮り直すことにもなった。

 

だが、出演者の皆さんは最初から役柄を掴む感覚を持っていないので、最初の撮影では演技がぎごちない。リハーサルや撮影を重ねていくうちに変化が見られ「出演者は、素な状態から演じる役に近づいていく。途中からは皆さんもノリノリで演じていた」と一安心。細かい指示も行ったが、理解して演技として表現するのが早くなっていき「撮影開始3ヶ月後には、撮影時間の見極めが出来ました。役を掴なんでもらうまでは時間を要しましたが、一度出来れば順調にいきました」と信頼を寄せていった。物語自体は14年間もあり、脚本で描かれる四季をしっかりと描くなら撮影は自ずと丸一年以上はかかってしまう。結果的に2年以上かけて撮っていったが「田舎なので週末を利用して撮影するので都市部より撮りやすい」とメリットもあった。ロケ撮影について地元の方々は好意的で、様々な場所で撮らせてもらい「小道具も地元の方から貸して頂いた。低予算のわりには昭和を再現できている」と自信がある。

 

編集作業については大変だと感じておらず「シナリオ通りに撮った素材をそのまま使用して出来たので、悩むことではなかった」と明かす。3時間程度になる脚本だったが「可能なら120分程度にしたい。皆が早く喋れば120分程度になるんじゃないかな」とチャレンジしてみたが出来ずとも、結果的に147分になった。劇伴の音楽にはモダンジャズを取り入れており「岩手県は伝統的にジャズ系の音楽に長けているんです。有名なジャズ喫茶が幾つもあり、音楽活動は盛んに行われている。以前から気になっているミュージシャンのSaturday Player Meetingにお願いしました」と話す。細かい話し合いはせず、荒めの編集版を渡して数曲を作ってもらい作品に合わせてみると「映画の意図を十分に汲んで頂いた。良い雰囲気の音楽が添えられているんじゃないかな」と満足している。

 

綱渡りな撮影の後に完成した本作。当時は「やり遂げてやる」と心意気があったが「出来るかどうか分からないまま撮影していた。予定通りに撮れるか分からない。場合によっては規模を縮小して撮らないといけないかもしれない」と心配していた。だが「皆が頑張ってくれて、ほほやりたいように撮れた。大きなキャストが1人交代して新しいキャストとの撮影をしていく中で、制作部の方々は撮影が繋がったことについて感動している」と良い現場の雰囲気を掴み「この映画は最後まで撮れるんだ」と確信する。完成した映画を地元の市民ホールで初めて上映した時には「駅が出来た背景について初めて分かった」という声を多く聞き「映画化にあたり、初めて国鉄民営化に関する裏側が明らかになった。今まで地元でも語られてこなかった。新花巻駅だけでなく、他の地域で同じようなことが起きていた。まさに様々な人に観てもらう映画なんだろうな」と手応えが得られた。

 

映画『ネクタイを締めた百姓一揆』は、5月1日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォ、5月22日(土)より神戸・新開地の神戸アートビレッジセンターで公開。なお、京都・烏丸御池のアップリンク京都でも公開予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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