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社会にある課題に正面から切り込んでいく姿勢を作品として表現したい…『ある殺人、落葉のころに』三澤拓哉監督に聞く!

2021年4月20日

(C)Takuya Misawa & Wong Fei Pang

 

神奈川県の大磯を舞台に、恩師の死により青年たちの日常が崩れていく様を描く『ある殺人、落葉のころに』が4月23日(金)より関西の劇場でも公開される。今回、三澤拓哉監督にインタビューを行った。

 

映画『ある殺人、落葉のころに』は、初監督作『3泊4日、5時の鐘』がロッテルダム国際映画祭に招待されるなど好評を博した三澤拓哉監督が、神奈川県大磯を舞台に、恩師の死をきっかけに露呈する若者たちの姿を描いた長編第2作。土建屋で働く幼なじみの俊、知樹、和也、英太。彼ら4人の恩師が亡くなり、俊が恩師の未亡人である千里に惹かれていく一方、知樹は俊に密かな思いを寄せていたことに気がつく。和也は家族のために金を工面する必要から不法投棄を請け負い、英太は親友によって恋人が身の危険にさらされる。恩師の死をきっかけに崩れていく友情関係。これまで築いてきた親密な関係がしがらみへと反転し、気がついた時には彼らの自由が失われていた。「HiGH&LOW THE MOVIE」シリーズの守屋光治さん、『ワンダーウォール 劇場版』の中崎敏さん、『佐々木、イン、マイマイン』の森優作さん、菅田将暉さんに楽曲提供をするなどミュージシャンとしても活躍する永嶋柊吾さんと、若手俳優陣が顔をそろえる。

 

初監督作『3泊4日、5時の鐘』を三澤拓哉監督の地元であり生活圏である茅ヶ崎市や周辺のエリアで撮影し「地域の方々から意図せず好意的な目で見られ始め、地元思いで地元を愛する映画青年に見られてしまった」と驚いた。しかし、監督自身としては「前作は一見ライトなモチーフだけど、所々に毒っ気を含ませたつもり。その毒が効かなかった」と嘆いてしまう。だが、各国の映画祭を回りながら現地で同世代の映画人達と出会い「社会等にある課題に正面から切り込んでいく姿を見て、自分にもそういう姿勢を作品として表現したい」の自作のテイストを大きく方向転換していく。本作では、まず、大島渚監督の『日本春歌考』やデイヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』、或いは、その関連作品から「超現実的でリアルさから離れて描かれる作品の中で、個人や社会的な課題を描ききれたら」と構想。狭い地域でのしがらみを重点に置き「ボス的な人物が地下道でカツアゲするシーンと直後のシーン。いじめっ子といじめられっ子が地下道で会ったら金が渡される。言葉を必要とせずに役割だけが回ってしまっているような関係性がり、阿吽の呼吸で金を渡す」という関係性を軸に描いていく。

 

キャスティングにあたり、前作にも出演している中崎敏さんと堀夏子さんと小篠恵奈さんは予め指名。森優作さんは、前作で大阪アジアン映画祭に訪れた際に挨拶した程度だったが、出演作を追うようになり、出演を快諾して頂く前からあて書きを始めていた。永嶋柊吾さんは日本映画大学での同期で同じクラスであり子役時代からの経験もあり、一緒に仕事したいとあて書きしていく。守屋光治さんは知り合いを通じてオーディションに参加してもらった。さらに東京と大磯でオーディションを実施し、地元である大磯の方にも出演して頂いている。前作は夏に撮影したが、今作は冬に行われた。「こんなに撮影時間が短くなってしまうのか。日照時間が4時間程度無くなるので、寒くなるのも早い」と大変だったが「大磯と茅ヶ崎では仲間意識があまりなく、茅ヶ崎より協力が難しい時もありましたが、協力して頂いた」と感謝している。作中で印象的に残る倉庫は、三澤監督が初めて大磯にシナリオハンティングのために行った時に見つけた場所であり「見た時から惚れ込んだ。大磯は潮風で様々なものが錆びている、倉庫は真っ赤に錆びており、土建屋の設定にする前からのイメージと一致した」と気に入り、観光協会や商工会の方と話していくうちに持ち主が分かり、貸して頂いた。大磯は都会的な風景があまりなく「駅前は高いビルがなく、20時頃に殆どのお店が閉まっている。山がある地形が作品の雰囲気に寄与している」と土地柄を活かした撮影に満足している。

 

昨年10月には、地元の茅ヶ崎で先行上映を実施した。特に連絡を取っていない方からも問い合わせがあり、知らないところで映画の噂話がされていると直感。茅ヶ崎市内の飲食店や図書館で小規模なトークイベントを行い「リピーターもけっこういた。それぞれの解釈を披露しながら、新たな視点を獲得していく風景を見て、作品が形になった」と良い感触があり「自分自身が映画の作り手を目指す時から、映画を観て友達と作品の見方を話していたことを、自分の作品でして頂いている」と感激すると共に、作品が独り立ちしていることを実感していく。お客さんからは「モヤモヤして面倒くさい」と「語りたくなってしまう」と賛否両論があることを認識しており「前作は表向きは恋愛群像劇で爽やかな印象を持ってもらえる。本作は訳が分からずムカつく方もいらっしゃる。訳の分からなさが楽しいと感じる方もいる」という反応を好意的に受けとめていた。また、余白がある作品だと自認しており「余白を想像力等で埋めていくことで、映画が生まれ変わり出来上がる」と一段違った本作の捉え方を提案する。本作では、自分の内面や経験を掘り下げて作った三澤監督。次の作品は、森優作さんと長村航希さんが企画しているプロジェクトに監督として参画しており「作品の核となる思いを2人が持っている。自分がどういう風に受けとめながら、深い作品に出来るか」と果敢に挑んでいる。

 

映画『ある殺人、落葉のころに』は、関西では、4月23日(金)より京都・九条の京都みなみ会館、4月24日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォで公開。また神戸・元町の元町映画館でも近日公開予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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