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映画を観たことが、終わりではなく始まりにしてほしい…!『主戦場』ミキ・デザキ監督を迎えトークショー開催!

2019年4月27日

慰安婦問題を巡る論争をあらゆる角度から検証、分析したドキュメンタリー『主戦場』が関西の劇場でも4月27日(土)より公開。初日は、日系アメリカ人の映像作家でYouTuberのミキ・デザキ監督を迎え、トークショーが開催された。

 

映画『主戦場』は、慰安婦問題をめぐる論争を様々な角度から検証・分析したドキュメンタリー。慰安婦問題について、デザキ監督の胸をよぎるさまざまな疑問があった。慰安婦たちは性奴隷だったのか、本当に強制連行はあったのか、元慰安婦たちの証言はなぜブレるのか、日本政府の謝罪と法的責任とは…この問題を検証すべく、日本・アメリカ・韓国で、肯定派と否定派それぞれの立場で論争の中心にいる人びとに取材を敢行。さらに膨大な量のニュース映像や記事の検証を交え、慰安婦問題を検証していく。

 

名古屋・京都・大阪の公開劇場は満員御礼状態で初日を迎えた。今回、大阪・十三の第七藝術劇場でのトークショーをレポートする。上映後のトークショーはお客さんとの質疑応答を中心に盛り上がり、デザキ監督は「ポジティブなリアクションを頂き、希望が持てる」と喜んだ。

 

本作を制作した動機について、上智大学大学院の修士課程を修了しているデザキ監督は「入学前は、フィンランドで平和学のコースに行くことを考えていました。その背景があり、上智大学では国同士を近寄らせていくことをしたいな、と考えていました」と明かす。そこで、韓国と日本の関係を考えるにあたり、慰安婦問題という大きな問題があると認識し「韓国と日本で持っている情報の間に大きなギャップがあることではないか」と気づいていく。まずは「慰安婦問題に対する文脈を整理し誤解を解けば、韓国と日本の距離を近づける手伝いが出来るのでないか」と考えていった。

 

各方面の著名人に取材するにあたり、デザキ監督は上智大学博士課程の学生としてアプローチしていく。同時に、インタビュー素材が将来的にドキュメンタリー映画になることを理解してもらい、契約書にサインして頂いている。だが、取材時には、配給会社が付くのか、ネット配信になるのか、どのような形で世に出るのかは不透明だった。勿論、謝礼は一切渡していない。ドキュメンタリー映画制作に対し「謝礼を渡さないのが根本ルールであると認識しています。謝礼を渡した場合は、お礼していますと提示しておかなければなりません。それが映画の神聖さに関わってきます」と真摯に説明した。

 

著名人同士が直接対峙してはいないが、ディベート形式で本作は進んでいく。取材時は、時々、それまでのインタビューの情報を伝えることがあり「『先日、左派の方からこんなことを聞きましたが、どうお応えますか』という質問を投げました」と解説。映画制作着手時から、ディベート形式の映画にしたい、と方針を決めていたが「運よく議論に出来る言葉を撮れた瞬間もありました。しかし、右派側のインタビューは似たような結果が出ることが多かった」と苦労した。だが、驚かされた経験も多くあり、学びへと繋がっていく。それぞれのインタビューで十分な時間を確保でき、使用できる素材が多くあり、本作の完成に至った。

 

既に東京の劇場で公開され多くのお客様が劇場で鑑賞しているが、現代の日本で、慰安婦問題について発言しづらい雰囲気がないわけではない。そんな状況に対し、デザキ監督も危惧しており「映画を観てくれたら、考える人も現れるんじゃないか」と提案する。「日本では慰安婦問題自体がタブーになってしまっている」と、危惧すると同時に「主流メディアが右傾化している」と指摘した。上智大学で試写会を開催した際には、ある学生から「右派の主張はよく耳にしていたが、左派の意見は初めて聞いた」と伝えられたことがあり「朝日新聞の植村記者に関する件があったので、左派側に近い見解を出すことが難しくなっているんじゃないか」と心配ぎみ。だが「今後、この映画が”悪名高くなり”、沢山の方が観に来て下さるようになったら、主流メディアも右派左派両方の議論を紹介してくれるのではないか」と期待している。あるトピックがタブー扱いになると、それはメディアで全く語られなくなり、沈黙させられてしまうことを問題視しており「その時、その裏で現実に苦しんでいる人が存在する。また、そのような沈黙が起こった時に、そのタブーになった問題を全く知らない世代が出てきてしまい、その世代は、対抗する意見を何も知らない状態に置かれてしまう」と懸念した。本作を観て頂いた方に対し「この問題について話してほしい。そして、この映画を観たことが、終わりではなく始まりにしてほしい」と望んでいる。

 

日本の右傾化は日本だけではなく、世界的な現象になっており、デザキ監督は「アメリカも右傾化しているが、抵抗勢力も大きい。日本も含めた他国では、歴史上で自国は常に完璧なんだ、と語り続け、その通りに思って疑わない若者を育てたら、ファシズムに突き進んでいく可能性は高くなる」と説く。その上で「健全な愛国心とは、今まで自分達がやってきた酷いことを顧み、より良くなろうとすること。アメリカ人も日本人もそのように考えるようになってほしい」と願って止まない。

 

なお、韓国では、日本人が本作に関心を持って観に行っていることに関心が高まっている。本作によって「実は日本人がこの問題について気にして考えている、と韓国にメッセージを発することになるんじゃないか」と期待を寄せた。既に釜山国際映画祭や大学での試写会で一部の方にお見せしており「良いリアクションを頂いています。今までは、慰安婦問題は国レベルの問題だと認識する方が多かった。だが、映画を観た後、慰安婦問題に対して考え直し、穏やかな姿勢で臨めるようになったという方がいらっしゃいました」と報告。今後のデザキ監督の活躍を大いに期待したい。

 

映画『主戦場』は、大阪・十三の第七藝術劇場と京都・烏丸の京都シネマで公開中。また、神戸・元町の元町映画館でも近日公開予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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