現代社会に潜む甘い罠と不安の渦に巻き込まれる女性を描く『STRANGERS』がいよいよ劇場公開!
©impasse
婚約者の浮気を知った女性が、導かれるままにマッチングアプリで出会った男性から金を受け取り、自分を見失っていく様を描く『STRANGERS』が11月2日(土)より劇場公開される。
映画『STRANGERS』は、様々な甘い罠や不安が取り巻く現代社会の中で、自分を見失っていく1人の女性を描いた心理サスペンススリラー。婚約者の浮気を知った直子は、不思議な魅力をもった同僚の山口紗季に導かれてマッチングアプリを始める。アプリを通じてさまざまな男と出会い、お金を受け取りながら、かりそめのデートを繰り返す直子は、日に日に派手になっていく。 自分自身の姿形が次第に山口に似てきていることに気づき動揺するも、やめることができない直子。そうすることで不安も取り除かれていると錯覚する彼女は、次第に自分を見失っていき、さらなる不安の渦に沈んでいく。
本作は、『夜明けまでバス停で』『鯨の骨』等の大西礼芳さんが主人公の直子を演じ、『スパイの妻』『偶然と想像』等で活躍する玄理さんが直子を魅了する女性である山口を演じた。監督は、短編『午後3時の悪魔』が札幌国際短編映画祭など国内外の映画祭で上映されて注目され、これが長編デビュー作となる池田健太さん。
©impasse
映画『STRANGERS』は、11月2日(土)より東京・渋谷のシアター・イメージフォーラム、11月22日(金)より東京・菊川のStrangerで公開。
「今の自分とは違う何者かになりたい」という願望は、30歳になっても案外消えない。今でも、どこか自分の人生を他人事のように感じる瞬間がある。しかし、地道な努力を重ねる時間も余裕もないため、誰かが人生を変えてくれるのではないかと期待しつつ、XやInstagram、YouTubeのタイムラインをスワイプして虚無な休日を過ごしている。
こうした時間の使い方をする現代人は少なくないと思うが、本作の主人公である直子もまたその一人だ。帰ってこない婚約者を待ち飽き、淡々と仕事をこなしながら虚無を生きる日々の中、どこかでこの退屈から救ってくれる存在を待ち望んでいる。本作で退屈と虚無を抱えるのは直子だけではなく、山口に扮した直子に近づく男性たちも現状を否定し、自分を変えてくれる何かを求め続けている存在として描かれていた。彼らも、直子と人生を共にすることで自分がやり直せると信じているのだろう。
異世界転生やタイムリープものが一つのジャンルとして流行している背景には、誰もが心のどこかで現状を打破してやり直したいという願望をもっていることの表れであろう。しかし、「やり直すきっかけ」はただ待っているだけで本当に来るのだろうか?直子のように、他人の真似をして、周囲の反応が変わることをただ待つだけで良いのだろうか?劇中で、直子が地道に裁縫教室に通い続けたように、結局のところ、変化は地道な積み重ねの上でしか起こらないのではないだろうか。本作を鑑賞して、私は自分の時間をどうやって過ごしていくべきか改めて考えてみようと思った。この映画が、私にとって人生を変えてくれる小さなきっかけになるかもしれない。
fromオーイシ。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
- 最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!