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子ども達が見せる素直過ぎる表情や意図していないのに大人を震撼させる言葉が魅力的だった…『グッドバイ』宮崎彩監督に聞く!

2021年4月17日

母親とふたりで暮らす少女がとあるきっかけで父親の記憶を思い出し、心情の変化や葛藤を抱いていく様を描く『グッドバイ』が4月16日(金)より関西の劇場でも公開中。今回、宮崎彩監督にインタビューを行った。

 

映画『グッドバイ』は、是枝裕和監督のもとで映像制作を学んだ宮崎彩さんの初長編監督作品。郊外の住宅地で母と2人で暮らすさくら。仕事を辞め、一時的に保育園で働くことになったさくらは、園児の保護者である新藤と出会う。やがて、さくらは新藤に幼い頃から離れて暮らす父の姿を重ねるようになる。ある晩、新藤家で夕飯を作ることになったさくらは、父親に関するある記憶を思い出す。一方、さくらの母は古くなった家を手離すことを決めるが…
主人公さくら役を『蒲田前奏曲』やNHK連続テレビ小説『スカーレット』の福田麻由子さんが演じる。

 

大学3年生の時、通年での制作実習のなかで、自身の企画が通り監督を経験した宮崎さん。だが、授業が終了し、撮るきっかけが無くなってしまった。授業の前に通っていたワークショップで制作した7分程度の短編が上映された際、次回作を聞かれ、予定もない中で思いつくままに「おじさんが好きなので、4,50代のおじさんを撮りたいです」と言っていた。そこで、主体性がないおじさんの周囲に何故か女性が群がるオムニバス作品を企画する。内容を是枝監督に見せた時に「様々な女性が出てくるけど、この中で宮崎さんがやりたいのは、娘と父のパートだよね。そこを掘り下げたほうがよりクリアになると思う」と云われ「自分の中でもそれが膨らんでいるのは意識していた。視点を切り替えて娘を主人公にして、企画を変えて脚本に移った」と本作が動き始めた。当初のストーリーは、掴みどころがないおじさんに惹かれてしまう構成だったため「娘はなぜ父親に惹かれるか。娘のパーソナリティについて、器用だけど熱がなく何かを好きになることがない子が父親と物理的に離れていて、父親というものを分からないからこそ欲しくて追いかけてしまい徐々に熱を帯びていく」とを決め、細かく作り込んでいく。なお、主人公のさくらと新藤との関係性を示す意外なシーンが作中にあるが「新藤はどこか父親を感じさせる人間として存在していた。結局、そういう対象もある意味では性の対象になり得ることをやりたかった」と説き「新藤は、打算的でもなく何を考えているか分からない。実際は何も考えていない。感情で動くというより、脊髄で反射している。目の前で起こったことに反応している。性的な要素が臭うけど、現象でしかない。でも、緊張感あるシーンは欲しかった」と述べた。

 

作中では、食べ物や食事のシーンが印象的に取り入れられており、宮崎監督は「食べ物は拘って様々なことを考えて作っていきました。家庭の味を表している。食べる行為自体が人の癖も露呈する。会話を必要としないけど対峙する時間。セクシュアルになり得る時間だと思って、食べ物や食事という行為は入れたかった」と解説。「鮭の皮を残すのは、父と娘が似た食べ方をしていて、この人達は同じ食べ方をしている親子の関係。嗜好が似ていて、鮭の皮を残したり、サラダに醤油をかけたり、甘い卵焼きが好きだったり」と挙げ「母親が父の嗜好に寄せて作っている。上埜家の味や食べ方になっています」と表現する。また、子どもが多く登場する本作。是枝監督から学んだことが伺えるが「是枝さんから子供への演出をダイレクトに教わった訳ではないけれど」と話す。「子役の子供達は台詞を頑張って覚えてくると、言っている雰囲気が出るので回避したい」と考え「あいちゃんを演じたのは子役事務所に入っている子ですが、現場で堅くならないように福田さんの力添えもあり、素のままで演じてもらえた」と感謝している。

 

2018年3月に保育園パートを撮り、その後は群馬で上埜家の撮影。ラストショットは朝のシーンとなったが「これ以上のものは撮れないな」と放心状態に。「全てが終わってしまった」と感じるほどに緊張感あるショットとなり「幸福感にも包まれたシーンが撮れたな」と納得した。「素材がハマり繋いで揺るぎない作品になった」と自信があったが「淡々と進んでいくところもあり、時間をかけてきたので、客観視がしづらく、自分の中で何が良いのか分からず悩んでいた時期があった」と告白。「外からの視点を入れ、自分が見えていない展開があるといいな」と気づき、音楽を杉本佳一さんにオファー。「つけて下さった楽曲が良く、鍵盤楽器だけでなく打楽器やノイズもあった。子供に寄り添った音だけでなく、エレクトリカルな音もあるが、主張の強い音楽ではない」と直感し「静かな作品に寄り添っているけど、新しい展開に引っ張ってくれる音楽をつけて下さった。これは良い作品になる」と転機になった。

 

今までは、上の年代の人と接することが多く、下の世代と接する機会が極めて少なかった宮崎監督。子供への苦手意識が強かったが、今作を撮り「カロリーを使い上手くいかないことはあったけど、おもしろい。彼らが見せる素直過ぎる表情や意図していないのに大人を震撼させる言葉が魅力的だった。この子達をまた撮りたいな」と感じており「子供時代は誰もが抱えたもの。見ていて思い出すことがある。映画に残すなら、次も子供をメインに撮ってみたい」と次作に向けて意欲的だ。

 

映画『グッドバイ』は、関西では、大阪・九条のシネ・ヌーヴォと京都・出町柳の出町座で公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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