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欲望の限りを生きた昭和を描いた本作には現代を強く生きるヒントがある…!『無頼』井筒和幸監督に聞く!

2020年12月16日

第2次大戦後の昭和の高度成長期を背景に、誰にも頼らず闇の世界でのし上がっていった男の孤高の生を描く『無頼』が関西の劇場でも12月18日(金)より公開。今回、井筒和幸監督にインタビューを行った。

 

映画『無頼』は、『パッチギ!』『ガキ帝国』の井筒和幸監督がやくざ者たちの視点から激動の昭和史を描いた群像劇。敗戦後、貧困と無秩序の中から立ち上がった日本人は高度経済成長を経て、バブル崩壊まで欲望のままに生き抜いてきた。昭和という時代とともに、40年以上続いたその勢いは終わりを告げた。そんな時代の片隅で、何者にも頼らず、飢えや汚辱と格闘し、世間に刃向かい続けて生きてきた男がいた。やがて一家を構えた「無頼の徒」は、社会からはじき出された者たちを束ねて、命懸けで裏社会を生き抜いていく。「EXILE」の松本利夫さんが主人公を、妻役を『』『』の柳ゆり菜さんが演じるほか、木下ほうかさん、ラサール石井さん、升毅さん、小木茂光さん、隆大介さん、外波山文明さん、三上寛さん、中村達也さんらが脇を固める。

 

監督デビューから40年を過ぎ「不良者かはみ出し者しか描いていない」と自認する井筒監督。前作『黄金を抱いて翔べ』を経て「行きつく先は銀行強盗で終わったから、初心に帰ろうと思って画策してたんだよね。日本をおさらばする映画で終わったらあかん。もう一回日本に戻らなあかん」と本作を撮るに至った。今回、初めて生粋の”やくざ映画”を手掛けたが、監督自身は『仁義なき戦い』を観てきた世代であり「生の広島やくざ闘争という生々しい映画を観て熱を上げた世代。僕にとっては初めて撮るから、親子の盃はどうするのか研究しました。様々なジャーナリストに聞きまくり、指導してもらい、初めて昭和の任侠道に通じている人達はどんな風にして式典を執り行うのか興味があった」と語る。

 

主人公は、「EXILE」の松本利夫さん。前作が終わって以降、井筒監督は「EXILE」のコンサートに招待されており、マネージャーから役者として映画に出演しているメンバーを教えてもらっていた。ふと思い出し、写真をよく見たら「メンバーの中で一番やくざ顔をしている」と気づく。松本さんの起用について「昭和顔なんですよ。インテリヤクザの設定だから、田舎っぽい顔でやさぐれててインテリっぽいので選んだんだ」と独自の視点を以て話す。ヒロインの柳ゆり菜については「着物を着たら姉さんが出来るわけじゃないからね。いかり肩でも出来ないんだよね。気風がないとね。着物を粋な感じで着こなさないとね。彼女に極道の姉さんを感じたからね」と感性を以て説く。なお、本作ではミュージシャン兼俳優の方々も出演している。三上寛さんについて「僕のデビュー作、自主制作ピンク映画『行く行くマイトガイ 性春の悶々』の主人公だ。同時期に彼は『沖縄やくざ戦争』にも出演している。しばらくは歌いながら役者をやっていた。思い出して久しぶりに出てもらった。坊主みたいな顔しているし、いかにもやくざ坊主だとプロデューサーが思いついた」と述べ、中村達也さんは「ドラマーだと聞いて写真を思い出した。兄弟分が出来るんじゃないか。顔つきもそんな感じがしていた」と起用の意図を明かす。また、本作の主題歌は泉谷しげるさん。1972年は主人公がやくざとしてスタートした頃であり、当時に流行っていたのが泉谷さんの「春夏秋冬」だと思いだす。同時期に井筒さんは、泉谷さんをコンサートを手伝い知り合った仲で「それから事あるごとにTVに一緒に出ながら共通項が沢山あった。さすらっていく一家の物語だから『春夏秋冬』がピッタリだ」と主題歌に起用した。

 

やくざ映画と聞くと暴力描写が多い印象があるが、本作では会話シーンがおもしろく描かれている。監督が実際に取材して教えてもらった台詞が盛り込まれており「アドリブも少しあるけど、我々が作った台詞でありほぼ脚本通りの会話。イデオロギーが出ている。おもしろいよね」と楽しみながら書いたことが伺えた。また、撮影はトラブルも多く発生していたが「楽しんでいるよ。おもしろいじゃないか。大したトラブルじゃないよ」と楽しんでいる。実際は「関東だけだと昭和の風景がないから、名古屋周辺にもいかないといけなかったぐらいですよ。苦難を乗り越えて作ったほどでもないね。坦々とやっていたよ」と冷静に話す。楽しみながら撮影を終えた本作を編集・ダビングしながら、最後のロールで筋が通ったと納得し本作は完成した。

 

今月で68歳を迎えた井筒監督は「もう少ししたら、突然に『映画を何十本も撮ってきたけど、残してきたものって何なのかなぁ』と考える時も来るんですよ、きっと。『ろくなもん残していないなぁ」と思うよ。『社会にどういうコミットをしていたのかな。どういう風に大衆達と会話していたのかな』と思うと『もう辞めた』と思うかも分かんないよ」と冷静に話す。現代社会に対し「打算しかないんだよね。若い子達は欲望がないからね」と冷静に見つめ、本作について「欲望の限りを生きた昭和の話だからね。欲を持ってほしいな。欲望でギラギラしてないんだよね。明日への向上心を持って仕事をする。こういう気持ちが閉鎖社会にはないでしょ、差別ばっかりで。傍を気にして生きるでしょ。昭和に生きるヒントがある」と込めたメッセージを伝える。なお、既に次作について構想しており「筑豊を舞台に1990年代半ばのヤンキーの話をやるんだ。最後の暴走族と云われた連中を取材して、1990年代初頭の青春グラフィティ。暴走族をやめて東京へ夢を持って出ていこうという話です。炭鉱町だから侠客発祥の地でもある」とワクワクしながら話してもらった。

 

映画『無頼』は、関西では12月18日(金)より京都・九条の京都みなみ会館と出町柳の出町座、12月19日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場、2021年1月15日(金)より兵庫・豊岡の豊岡劇場、2021年4月より神戸・新開地の神戸アートビレッジセンターで公開。

本作は、伊藤正治というヤクザに身を捧げた男性の話である。彼の幼少期から60歳になるまでの人生を丁寧に描く。暴力団系の映画に抱くような一般的な印象とは全然違う。主人公がとても優しい。血気盛んでケンカを辺り構わず売るような輩ではない。どちらかといえば気さくで優しく描かれている。生き残るためにのし上がっていく野心さが際立つようなヤクザ映画ではない。主人公の内面を通して、戦後復興の時代がもたらした、社会の外側に追い出された「人生」を俯瞰する。

 

何かある度に捕まり過ぎて警察から「懲役太郎」と呼ばれていることには大いに笑ってしまう。撃ち合いや派手なアクションを期待していると、少し物足りないかもしれないが、任侠映画入門にはうってつけである。主役の正治を演じた松本利夫は劇団EXILEでも座長として活躍しており、パフォーマーなだけあって演技が素晴らしく上手い。ヤクザ感を誇張し過ぎず、素朴で、現実にちゃんと存在しそうな一人の男性を見事に演じ切っている。

from君山

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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