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現代の日本でゴッホが画の才能を持たずに存在していたら、どのように生きていたか…『種をまく人』竹内洋介監督に聞く!

2020年12月4日

寡黙な少女が犯した罪と周囲の大人たちの姿から、個性とは何か、生きるとは何かといった普遍的な問題に迫っていく『種をまく人』が関西の劇場でも12月5日(土)より公開。今回、竹内洋介監督にインタビューを行った。

 

映画『種をまく人』は、10歳の少女が犯した罪とそれを取り巻く大人たちの姿を通し、人間の心に潜む闇を残酷なまでにえぐり出した人間ドラマ。3年ぶりに病院から戻った高梨光雄は、弟・裕太の家を訪れる。姪の知恵やその妹でダウン症の一希に迎えられ、つかの間の幸せを味わう光雄。その夜、光雄は知恵にせがまれ、被災地で見たひまわりの話をする。知恵はその美しい景色を思い浮かべながら、太陽に向かって咲くひまわりと、時折ふと空を見上げる愛しい一希の姿を重ね合わせる。翌日、知恵が光雄と遊園地へ行きたいと言い出し、両親は快く娘たちを光雄に預ける。しかし、遊園地で思わぬ不幸が3人を襲い……。『桜、ふたたびの加奈子』『USB』の岸建太朗さんが光雄を演じ、撮影監督も務めた。監督は本作が初長編となる竹内洋介さん。第57回テッサロニキ国際映画祭で最優秀監督賞、最優秀主演女優賞(竹中涼乃さん)、第33回ロサンゼルス・アジアン・パシフィック映画祭でグランプリ、最優秀脚本賞・最優秀主演男優賞(岸建太朗さん)・ヤングタレント賞(竹中涼乃さん)を受賞。

 

フィンセント・ファン・ゴッホの人生を基にした本作。「彼が現代の日本で生きていたら、絵画という芸術的表現を持っていなかったら、どう生きていたか」想像からストーリーを生み出した竹内監督は「ゴッホの家庭環境や家族構成を忠実に反映しています。弟や弟夫婦との関係性に創作を加えています。ゴッホに関するストーリーを作ろうとしたが、東日本大震災も絡めて作っていきました」と明かしていく。

 

出演者のほとんどはオーディショで決め、知り合いの役者にも声をかけたており、光雄を演じた岸建太朗さんとはシナリオ段階から話し合い、本作を作っている。元々は、撮影監督を依頼していたが「風貌からゴッホに近い雰囲気に出来るんじゃないか」と気づき、撮影と主役の両方への挑戦をオファー。出演している際には演技に集中してもらっており「僕は、優秀なカメラ助手に指示して撮ってもらっている。岸さんは光雄になりきり、カメラを構えた時には、光雄が外からそれぞれの人物を見つめている感覚」と独自の手法を解説していく。知恵役の竹中涼乃さんは映画の主役が初めてで「何も分からない状態で周りの役者さん達に協力してもらいながら、演技を導いてもらった」と振り返る。彼女には本作冒頭からある事故が起こる前までのシナリオを渡しており「台本を見せていないシーンは口頭で状況を説明し、感情を押しつけず、素直に表現してもらった。あとは周りの役者さんが導いてくれる。少女の演技を重視するために順撮りしました。子役に慣れていると作ってきてしまう。ストーリーに入り込まざるを得ない」と説く。

 

本作のラストは向日葵が印象的なシーンがある。被災地で実際にひまわりを育てた上で撮影しているが「至近距離に海があり、砂浜に近い場所。木々や雑草があり『ひまわりを育てるのは無理だ』と地元で様々な場所でひまわりを植えているボランティア団体の方に云われた」と当初は無謀な挑戦だった。「土を丸ごと変えないといけない」と云われ、数人のスタッフで耕して沢山の種を植えたが「現場は宅地開発で盛土や伐採の工事があった。種を植えた時は工事が一度中断していたが、撮影間近に再開し、道自体が無くなることになっていた」と更に苦境に立たされていく。地元の方に協力してもらって工事業者に直談判してもらい、どうにか応じて頂き「おかげでよく日が射しやすくなり、ひまわりが成長してラストシーンの舞台が出来上がった」と納得のいくシーンを撮影できた。撮影後の編集では「事故が起こって以降のシーンを繋げた時に『あ、凄いんじゃないか』と自分で思いましたね」と告白。順撮りを行い、編集して、シナリオ通りに繋げられ「役者達の力に助けられた。様々な話の仕様があったが、メインの2人を中心にして編集してきました」と満足できる仕上がりとなった。

 

既に昨年から各地の劇場で公開されており、お客さんからは「最近は重厚な映画がないので、衝撃的でした」と素直な感想を受け取っているが、障碍者の家族がいる方から「彼女の気持ちが理解できて苦しかった」と云われたり、小さなお子さんがいる親御さん達から「思い当たる節があり考えさせられた」と伝えられたりしており、真摯に作品を観て頂いている。なお、今後も知恵の数年後の話や、定年間際の女性の純愛を描こうと考えており「ドロドロしたものが好きなんですかね。観ていて、ギュッと心臓を掴まれるような映画が好きで、意識して撮りたい。辛いだけでなく、感情をかき乱されるのが好きで撮りたいですね」と未来に目を輝かせていた。

 

映画『種をまく人』は、12月5日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォ、2021年1月9日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。また、京都・九条の京都みなみ会館でも近日公開予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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