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生きづらさを感じている人のために、心を動かし勇気をもらえる映画を撮りたい…!『mama』はるな愛監督に聞く!

2020年12月5日

撮影当時89歳の吉野ママこと、伝説のゲイボーイ・吉野寿雄さんから戦前、戦後のゲイの歴史を聞く『mama』が大阪・九条のシネ・ヌーヴォで12月6日(日)限定公開。また、2021年1月16日(土)より関西の劇場で公開。今回、はるな愛監督にインタビューを行った。

 

映画『mama』は、伝説のゲイボーイとして知られる吉野ママを描いた、タレントのはるな愛の初監督作。吉野ママこと伝説のゲイボーイ・吉野寿雄。89歳でも現役の吉野ママは、各界の著名人も数多く訪れた東京・六本木のゲイバー「吉野」を2000年に閉め、現在は中川運河沿いにあるバーをまかされている。ママを慕ってバーにやってきた、トランスジェンダーの亜美とゆしん、俳優の田中俊介が、ママが駆け抜けた戦前と戦後の貴重なエピソードから、日本におけるゲイの歴史を引き出していく。本作の撮影2日間を記録した「メイキング オブ 『mama』」(44分)が同時上映。

 

幼い頃から自身の性に悩んで、誰にも打ち解けられなかったはるな愛さん。当時は、沢山の映画を観て、女性の生き方に自身を照らし合わせてみたり、行ってみたい国訪れた時を想像をしてみたりしながら、生きる勇気を含め様々なものをもらっていた。「男はつらいよ」シリーズや「トラック野郎」シリーズから、毎回切なく終わる物語が心に残っている。「上手くいかない人生って何だろう。上手くいかない中で、こんな幸せがある」と受けとめ「どうして男に生まれたんだろう、女に生まれていたら楽だったのに。どうなっていくんだろう」と子供ながらに早くから人生について考え、ほとんど勉強は手つかず状態だった。どんな作品も自分の人生に照らし合わせて観ながら「映画は人の心を動かす。私は人の心を動かせるものに勇気をもらっていた」と気づき、TV番組には「何か人に受け取ってもらいたい」という思いで出演している。今回、「映画を撮らないか」と誘われた時は、少しの迷いがあったが、直ぐに「やりたいです」と応えており「人生は一度きりだし、こんなチャンスは二度とない。私が小さい頃に見たような人の心に残る映画を撮りたい」と心に決めた。

 

そして、吉野ママと出会ったのは、はるなさんが18歳の頃。当時、『上岡龍太郎がズバリ!』という番組のMr.レディー特集で、吉野ママと挨拶させて頂いた。以降、ニューハーフの枠を超えて様々な番組に出演していたが、とある苦しい状況に陥った時に吉野ママから「あんたの生き方なんだから、自分の生き方でいいのよ。人に言われたからって、人に足並み揃えるんじゃなくて、自分の生き方をすればいいのよ」と言ってもらう。この言葉が大きく残り「自分でいいんだ」と気づかされた。そして、ある日、”エアあやや”でTVに出演させて頂く日がやってくる。今となっては「吉野ママの言葉に本当に励まされたので、大きい存在ですね」と感慨深い。「知らない間にお店に連れ込まれて、気がついたら、ママの昔話を聞かされている」というコンセプトが本作のねらい。吉野ママは、既に自らのお店を閉じており「ママの話を聞きたかった。お店に戻ってきてほしい」という思いを以て一夜限りの「クラブ吉野」をオープンさせた。「真昼間の社会によくある日常から細い路地に引き込まれていったら、一人のママがいた」という世界を作り上げている。「ママが戦前・戦時中・戦後の厳しい時代をどう生き抜いたのか。当時は、カミングアウトすると歪な目で見られる時代に仲間が寄り添って生きていた。現代の各地にあるゲイカルチャーの原点なので、語り継いでいってほしい。戦時中の出来事を今は聞けなくなってきているので、残さないといけない」と認識しており「人との距離感や、人の懐に入られる愛らしいキャラクターを皆に感じてもらいたい。壮絶な修羅場をくぐり抜けてきたので、私達には見せない強さや懐の深さがある」と吉野ママの魅力を前面に引き出していった。

 

また、同時上映される「メイキング オブ 『mama』」では、はるなさんが素の状態となった吉野ママの魅力を引き出そうとしている姿が垣間見れる。お店の中で撮影は2時間と決め、自然な状態で撮り終わろうとしていた。「レンズを通すとママも構えてしまい演じてしまう。いつものママのトーンでいてほしい」と考え、吉野ママを十分に見て、監督としてママの魅力を引き出していく。なお、お客さんの目線であるモニターを通して、ママのお店に来たような画のサイズを意識してカウンターに立ってもらった。かつて春菜愛名義で『ニューハーフ物語 わたしが女にもどるまで』というVシネマに出演し、監督の振る舞いを通して映画の作り方を学んでおり「私ならこんな風に撮りたい等と思ったことが今回出来たかな」と納得している。とはいえ「もっとママの話を聞きたい」という気持ちがあったが「私も水商売を経験しているので、無理くりに話を聞き出すと無理やりな言葉になってしまう。結局、その場で出てきた言葉が自然で、観ている方に届くと思ったので、なるべく出ないでおこう」と十分に配慮し撮影た終えた。

 

出来上がった作品は数回の試写を行ったが、観る度に何度も編集を行っており「完成形がない。拘り始めたらキリがない。お客さんの心に届いた時が完成なので、怖かったです」と告白。しかし「色眼鏡があったけど、ママの言葉が入ってきて人の思いやりを感じて、はるな愛のイメージが変わりました」といった感想を受け取り、前向きな言葉に安堵している。今後も「かつての”大西賢示”君が映画で生きるパワーやヒントをもらったように、生きづらさを感じている人のために、肩の荷が下りるような映画をこれから撮っていきたい」と更なる映画監督への挑戦に目を輝かせていた。

 

映画『mama』は、12月6日(日)大阪・九条のシネ・ヌーヴォで特別先行上映。そして、2021年1月16日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォ、1月22日(金)より京都・九条の京都みなみ会館で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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